ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

コロナ禍 2年半を振り返って

中国の武漢市を発生源とする新型コロナウイルス感染症が世界や日本を襲って、早二年半が経ちました。しかし中国政府の情報隠蔽や解明妨害などがありいまだに起源と責任の所在が明らかになっていません。

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今でこそこの新型コロナウイルス感染症に関する様々な経験と多くの研究が積み重なって、様々な対応策が講じられるようになっていますが、当初はこのウイルスに対する知見が乏しく全くの手探り状態で対応せざるを得ず、未曽有の感染症への恐怖が先行していたように記憶しています。(我々は最低限の防護具もないまま、発熱者を診療せざるを得ませんでした。)

例えば感染様式に関しても当初接触・飛沫感染が主であるといわれ、徹底した手指消毒、マスクの励行、三密回避などが推奨されました。

しかしその後ウイルス自体の変異に伴うものか、感染力の変化とともに空気感染との認識が一般的となり、閉鎖空間の換気が最重要とされてきています。

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(残念ながら厚労省・保健所とともにコロナ対策を主導してきた国立感染症研究所が「エアロゾル感染」を正式に認めたのは、なんと2022年3月28日でした。)

海外では早期から無症状者のスクリーニング検査を強化していましたが、日本はクラスター対策を重視した結果、いまだに症状スクリーニング検査に依存しています。日本では当初実際の感染者数が多くない時期はクラスター対策が奏功していた印象がありましたが、感染者数の増加や無症候性感染の実態が明らかになるにつれ、保健所業務の破綻とともに一気に感染者も増えていきました。(事前確率の低い集団に対するスクリーニング検査は、偽陽性者を増やすだけという言説に筆者も惑わされました。)

現在では、複数回の抗原検査とPCR検査を組み合わせて感染コントロールが可能という研究が多く出されていて、実際街中でも無料のPCR検査場をよく見かけるようになりました。

一方ワクチンに関してはどうでしょう。

いまだに国産のワクチンは日の目を見ない中、ワクチン製造先進国のアメリカ製ワクチンが世界を救っています。

思い出されるのは、昨年7月第5波により7月12日東京に4回目の緊急事態宣言が出されたにも関わらず、7月23日東京オリンピックが世論を無視するかのように開幕されたことです。

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しかし東京都内の感染者数の急増に反して、五輪選手村では頻回の検査とワクチン接種により、感染をほぼ抑え込むことができました。

ワクチン接種に関して、国内では他の先進諸国に大きく後れを取っていたのを、菅元総理が政治主導で積極的に接種を推し進め、2021年11月末にはG7で最も高い接種率になりました。

しかしワクチンの抗体価は3か月を過ぎると低下してくることがわかり、海外では3回目ブースター接種を4か月で行う国もある中、日本では厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において「学術的には半年がいいかもしれないが、実際には8か月でも市町村は(対応するのが)厳しい」との意見などがあり、岸田首相は「前回接種から8か月以上」と決定してしまいました。

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この時はまだオミクロン株の前のデルタ株に対しての想定ですが、おりしもオミクロン株の発生によって、より3回目接種の重要性が結果的に増しており、6か月で接種していれば第6波での死者数をかなり抑えられた可能性があります。

3回目接種のタイミング決定の経緯は、科学に基つ”く国民の安全確保よりも、「横並び」を重視した厚労省官僚の護送船団方式の結果であり、まさに行政の不作為といえるでしょう。

 

今まで日本では感染症法によって、行政検査・積極的疫学調査は保健所・感染研を中心とした公衆衛生の枠組みの中で行われており、実際に感染者が入院するかしないかはすべて保健所の判断で決まっていました。つまり感染者が急増して保健所業務が破綻したら、感染者の治療或いは自宅療養者の急変対応が停止してしまいます。

この公衆衛生と我々の臨床医療の上下関係ないし縦割りの弊害が実際に起こっていたのを我々は見逃がしてはいけないでしょう。

またコロナ病床に関して、国立病院機構や地域医療推進機構(JCHO)の設置根拠法には「公衆衛生上重大な危害が生じたときに、厚労相が必要な業務実施を求めることができる」という条文があり、感染症法の改正が行われなくても病床を確保することは可能であったといいます。

筆者のところは診療所ですが発熱者に対しては、駐車場の車の中に居てもらって診療していました。医師会レベルでは、週に何回か決まった場所で疑いのある患者さんに来てもらって、PCR検査を医師会のメンバーが交代で実施したりしていました。

民間の病院はどうでしょうか。

アクセスが非常に良いのが日本の民間病院の最大のメリットですが、長く続く診療報酬抑制策の下で病院経営に余裕がないところが多く、一般的にコロナ患者の受け入れは困難な病院がほとんどです。

政治のバックアップの下、地域単位で選択と集中を行い発熱患者・コロナ患者がすぐ受診・入院できる体制を整えることと、その他の病院は救急患者を制限することなく、非コロナ患者を従来と同様診療していく必要があると思われます。

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第6波、第7波を通して血清有病率も上昇していくでしょうし、変異株の毒性が悪化しなければ、よりウィズコロナ社会に近づいていくでしょう。

これからは人流抑制策に固執することなく、検査体制を拡大し、定期的な疫学調査などのサーベイランスや下水調査などを組み合わせて、新型コロナウイルスの動向をデータに基づいて分析し、急激な増加や変異株の出現に備えるべきでしょう。

官民協力して、あらゆる面で科学的・論理的・合理的な対策を進めていく必要があると強く思います。