以前のブログで書かせていただいたSDH、健康に及ぼす影響の40%は社会経済的要因で別の言葉でいえば、貧困と孤立であるとお話しいたしました。この中の孤立についての研究です。
新型コロナウイルス感染症パンデミック中の自殺念慮に対する孤独の影響:日本における横断的オンライン調査の結果
BMJ Open. 2023 May 15;13(5):e063363. doi: 10.1136/bmjopen-2022-063363.参加者: 大規模なウェブベース調査の第 2 弾である「日本の新型コロナウイルス感染症と社会インターネット調査」は 2021 年 2 月に実施され、20 ~ 59 歳の男性 6,436 人、女性 5,380 人のデータを分析しました。
結果: 全体として、男性参加者の15.1%、女性参加者の16.3%が、新型コロナウイルス感染症のパンデミック中に自殺願望を抱いていたことが判明した。このうち、男性参加者の23%、女性参加者の20%が初めて自殺念慮を経験した。ポアソン回帰の結果は、孤独を感じている人は自殺念慮の PR が高いことを示唆しました (男性では 4.83 (95% CI、3.87 ~ 6.16)、女性では 6.19 (95% CI、4.77 ~ 8.45))。PR の減少はあったものの、孤独と自殺念慮の関係はうつ病を調整した後でも依然として強かった。さらに、その結果、孤独を感じていた人、そしてパンデミック中に孤独を感じ続けた人は、自殺念慮の自己PRが最も高かったことが示されました。
結論: 孤独は、うつ病を介した自殺念慮に直接的および間接的な影響を及ぼした。パンデミック中に孤独を感じた人は、自殺念慮のリスクが最も高かった。孤独を感じている人が自ら命を絶つことを防ぐためには、心のケアに重点を置いた国の対策が必要である。
コロナ禍で人のつながりがさらに疎になって孤独を感じるものと思われます。
これに対してやっと政府も対策に腰を上げ始めたようです。
孤独・孤立対策に本腰 政府調査、4割「感じる」―法成立〔時事メディカル〕
Medical Tribune 2023年06月01日 10:25社会で孤独を抱える人や孤立する人を支援する対策推進法が31日、成立した。対策の指針となる国の重点計画を法定化することなどが柱。政府は今後本腰を入れ、自治体と連携して施策を展開。政府が掲げる「悩む人を誰ひとり取り残さない社会」の実現を目指す。
孤独・孤立問題は、独り暮らし世帯の増加や新型コロナウイルスの流行に伴い、他者との交流や支援の機会が減ったことで顕在化。自殺者増加の要因とも考えられ、新法では「人生のあらゆる段階において何人にも生じ得る」とした。
政府が2022年に、全国の16歳以上の男女2万人を対象に行った調査(回答率56.1%)によると、頻度にかかわらず孤独感が「ある」と答えた人は全体の40.3%。前年から3.9ポイント伸び、「決してない」の割合は5ポイント超縮小した。
孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人を見ると20~30歳代に多く、全体の約6割が「5年以上」孤独感が継続していると回答。早期のサポートや声を上げやすい環境整備の必要性がうかがえる。
自殺者数は平成22年以降減少傾向でしたが最近はまた増加傾向です。
自殺対策としてのみではなく、われわれ人間は社会的動物ですので、ほかの人々と触れ合うことで、健康的な生活を維持できるものと思います。