この5月記録的な暑さが続き、まだ暑さになれていない我々は、その対応に苦労しました。
熱による健康への影響はわかっていますが、その研究の多くは一日の最高気温や平均気温をもとになされています。
一日の最低気温つまり夜の気温をもとに健康への影響を調べた研究はほとんどなかったようです。
最近日本の研究者が日本の気候データと死亡統計から熱帯夜の死亡リスクを調べました。
Environmental Health Perspectives
Vol. 131、第5号リサーチ
熱帯夜の死亡リスク:日本における全国人口ベースの後ろ向き研究
公開日: 2023 年 5 月 12 日CID: 057005https://doi.org/10.1289/EHP11444
目的・方法
日本の 47 都道府県における統一分析枠組みを使用して、43 年間(1973 年から 2015 年)にわたる全国的な評価において、原因別および地域別の死亡率に対する熱帯夜の影響を推定しました。
熱帯夜発生時期(4月~11月)に熱帯夜と死亡率の制御との関連性を推定しました。議論
この40年にわたる全国規模の人口ベースの疫学研究は、日本人の熱帯夜と死亡率との関連を包括的に調査した初めての研究です。日本では熱帯夜が全死因および11の死因別死亡リスクの増加と強く関連していることを観察し、この関連性はかなり即時的であり、数週間持続することが判明しました。
熱波による死亡率への影響は、ほとんどの国で即座に現れ、3~4日間続いたと報告している多国間研究の期間よりも長いです。時間変化による予測では、早期の曝露の影響がより大きいことが示唆されました。
国際疾病分類に準拠(ICD) コードでは、死亡は 11 の特定の原因によって分類されました: 心血管疾患 (CVD)、虚血性心疾患 (IHD)、脳血管疾患 (CBVD)、脳出血 (CH)、脳梗塞 (CIN)、呼吸器疾患 (RD)、肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、腎臓病、高齢に分類されていますが、このすべてで死亡率は上昇しています。特に高齢者が熱関連死亡の影響を受けやすいことが指摘されています。高齢者の死亡結果は、熱帯夜が高齢者の死亡リスクを高める可能性があることを示唆しており、熱帯夜と前述のリスクとの関連性は強く、即時的であり、2 週間持続しました。
絶対気温で定義される熱帯夜に関連する死亡リスクは、熱帯夜が稀である北日本で高く、熱帯夜がより一般的である南日本ではリスクが低かった。
さらに、東京 や大阪 などの人口密度の高い都道府県では、周辺地域に比べて熱帯夜が多く、リスクがそれぞれ高いことが注目に値します。米国、ヨーロッパ、中国での研究結果は、都市部の死亡率は郊外や農村部の死亡率よりも暑さに敏感であることを示唆しています熱帯夜に関連する死亡リスクの季節内変動に関して、夏の初めに比べて夏の終わりには集団の感受性が低下することを示しました。
熱くなった時、特に高齢者はかなりの注意が必要で、2週間は注意が必要であるようです。
気象庁では、熱帯夜を『夕方から翌朝までの最低気温が25℃以上の夜』と定義しています。夕方から翌朝というのは、18時から翌朝の6時ごろまでを指すのが一般的です。
熱帯夜同様に、夏場に頻繁に耳にする言葉が『真夏日』と『猛暑日』でしょう。気象庁では、『最高気温が30℃以上の日』を真夏日、『最高気温が35℃以上の日』を猛暑日と定義しています。なお、『最高気温が25℃以上の日』は、夏日となります。
気象庁のデータによると、熱帯夜は年々増加傾向にあります。特に東京・大阪・名古屋・広島・福岡・鹿児島・札幌・仙台・新潟の全国の主要都市では、札幌を除く全ての都市で増加しています。
主要都市の中で2014年までの過去10年間の間の熱帯夜の増加率が最も大きいのが福岡で、4.8日です。東京が3.9日、名古屋3.7日、京都が3.6日と続きます。
また、主要都市では過去100年間の平均気温も増加傾向にあり、東京で3.2℃、福岡で3.1℃、名古屋では2.8℃、大阪は2.7℃上昇しています。
日本気象協会は、40℃以上の日を「酷暑日(こくしょび)」、夜間の最低気温が30℃以上の夜を「超熱帯夜(ちょうねったいや)」と呼ぶことに決めたとのこと。年々高くなる気温に対して、新しく言葉を増やすことが必要になったのでしょう。
年々上昇する気温に対して、我々は昼間の最高気温と同様に夜間の最低気温にも十分注意が必要であるというお話でした。