ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

熱曝露と健康

おはようございます。

毎日暑い日が続いていますが皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

この暑さの原因は地球温暖化の結果であると思われます。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書によると、気温が132年間に0.85℃上昇していることがが確認されています。
2000年〜2012年には気温上昇の停滞が見られましたが、2014年以降は上昇を続け、2016年は観測史上最も暑い年となりました。
日本においては、気温上昇が続いており年平均気温は長期的に100年あたり約1.19℃の割合で上昇しています。
これは世界の平均気温が132年で0.85℃上昇しているというIPCC第5次評価報告書で示された観測結果と比較して高い上昇率となっています。

気象庁 日本の年平均気温 
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn.html#:~:text=2021%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE,%E3%81%A7%E4%B8%8A%E6%98%87%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 

さらに、IPCC第5次評価報告書によれば、2081年から2100年の世界の平均地上気温は、1986年から2005年の平均よりも最小で0.3℃、最大で4.8℃上昇すると予測されています。

実際今年東京都心でも、記録的な猛暑日が6月25日から9日間連続しました。

とにかく今年も非常に暑い夏となっています。

今回は、この暑さと人間の健康との関連を調べてみました。

暑熱への曝露は、心血管疾患(CVD)やCVDによる死亡の危険因子の1つであることが以前より示唆されています。そのため、地球温暖化とともに人口の高齢化が進めば、世界のCVDによる負担は増大すると予測されます。こうした中、オーストラリア・University of AdelaideのJingwen Liu氏らは、暑熱曝露とCVDアウトカムの関連について検討するため、世界のさまざまな気候帯の地域で実施された観察研究266件のメタ解析を実施。気温が1℃上昇するごとにCVD関連死リスクは2.1%上昇し、CVD罹患リスクは0.5%上昇することが示されたとの解析結果をLancet Planet Healthに報告しました。

The Lancet Planetary Health
2022年6月1日
熱曝露と心血管の健康の結果:系統的レビューとメタ分析
公開日:2022年6月DOI:https ://doi.org/10.1016/S2542-5196(22)00117-6
https://www.thelancet.com/journals/lanplh/article/PIIS2542-5196(22)00117-6/fulltext


メソッド
この系統的レビューとメタアナリシスでは、PubMed、Embase、およびScopusで、1990年1月1日から2022年3月10日までに発行された文献を検索し、曝露指標が高温または熱波である独立した研究集団に関する独自の研究、および異なる曝露または期間にわたるリスクを比較する生態学的時系列、ケースクロスオーバー、またはケースシリーズ研究デザインを使用した観察研究を含めました。

調査結果
システマティックレビューに282件の記事を含めた検索から、合計7360件の結果が返され、そのうち266件がメタアナリシスの対象となりました。
結果は、温度の1°Cの上昇が、考慮されたすべての診断にわたって心血管疾患関連の死亡率と正に関連していることを示しました。心血管疾患に関連する死亡の全体的なリスクは2・1%増加し(RR1・021 [95%CI 1・020–1・023])、最も高い特定の疾患リスクは脳卒中と冠状動脈性心臓病です。1°Cの温度上昇は、不整脈、心停止、冠状動脈性心臓病による罹患率の有意な増加とも関連していました。私たちの調査結果は、熱曝露が女性、65歳以上の人々、熱帯気候に住む個人、および低中所得国の人々の罹患率と死亡率のリスクの上昇につながることを示唆しています。

 

解析の結果、気温が1℃上昇するごとにCVD関連死リスクは2.1%上昇し、CVD罹患リスクは0.5%上昇することが示されました。
CVD関連死を原因別に見ると、気温の上昇に伴うリスクが最も高いのは脳卒中による死亡で、次いで冠動脈疾患による死亡心不全による死亡が続きました。
CVD罹患リスクに関しては、気温の上昇に伴うリスクが最も高いのは院外心停止リスクで、次いで不整脈および心停止が続きました。
また、熱波はCVD関連死リスクの11.7%の有意な上昇に関連し、熱波の程度が高まるほどリスクが上昇しました。

65歳以上の人々に対する熱の影響の重大で高い死亡リスクは、65歳未満の人々よりも明らかです。

以上から、Liu氏らは「暑熱曝露は、さまざまな気候帯においてCVDリスクを高めることを裏付けるエビデンスが強化された」と結論。その上で、「温暖化が進み、高齢者人口の割合が増加すれば、気候上昇に関連したCVDアウトカム悪化例が増加する可能性がある。暑熱期の心血管イベント増大を抑制し、世界の暑熱に関連したCVD関連障害による疾病負担を軽減するためのエビデンスに基づいた予防策が必要だ」と主張しています。

 

Medical Tribune

気温1℃上昇でCVD関連死リスク2.1%上昇
観察研究266件のメタ解析
https://medical-tribune.co.jp/news/2022/0707546345/

 

今後さらに高齢化が進む日本において、さらに気温が高くなっていってそれだけ多くの死者が出るということが示された研究でした。

地球温暖化防止のために、一人一人ができる小さな行動から始めることが大切であると強く思いました。