ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

wJDI9と認知症

 

皆さんお久しぶりです。忙しさにかまけてブログ更新をさぼっておりました。

かっこよく言いますと、日々専門である整形外科学の勉強に時間を取られていたということです。

今日は久しぶりに認知症の記事を上げさせていただきます。

認知症は時代を問わず人類を悩ませてきた病気だと思われがちですが、実際には現代に登場した病気であるようです。米南カリフォルニア大学レオナード・デイビス校(老年学)のCaleb Finch氏と米カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校歴史学分野のBurstein Stanley氏らが古代ギリシャとローマの医学書を分析した結果、アリストテレスや大プリニウスなどが活躍した今から2000〜2500年前には、認知症に罹患する人は極めてまれだったことが示唆されました。研究グループは、「現代の環境やライフスタイルがアルツハイマー病などの認知症の発症を促しているとする考え方を補強する結果だ」と述べています。この研究の詳細は、「Journal of Alzheimer’s Disease」に1月25日掲載されました。

また日本食は、認知症発症の予防効果を有すると推測されていますが、この課題を検討した報告はまだありません。東北大学の遠又 靖丈氏らは、前向きコホート研究により、日本人高齢者を対象に、食事パターンと認知症発症との関連を検討しました。The journals of gerontology誌オンライン版2016年6月29日号の報告しております。

 

日本人の食生活と認知症発症との関連性に関する20年間の前向きコホート研究:NILS-LSAプロジェクト
Eur J Nutr. 2023年; 62(4): 1719 ~ 1729 年。
2023 年 2 月 17 日にオンラインで公開 。doi:  10.1007/s00394-023-03107-x

メソッド
日本の愛知県に住む認知症のない地域在住日本人高齢者(65~82歳)1,504人を対象とした20年間の追跡コホート研究。
3 日間の食事記録データを使用して 9 要素加重日本食指数 (wJDI9) スコア (範囲 - 1 ~ 12) が計算され、日本食への遵守の指標として使用されました。
wJDI9 は次の 9 成分によって特定されました。「米」、「魚介類」、「緑黄色野菜」、「海藻」、「緑茶」、「果物」、「 「大豆及び大豆食品」、「きのこ類」、「牛肉及び豚肉(内臓を除く)」。

議論
この20年間にわたる集団ベースのコホート研究では、wJDI9スコアによって定義される日本人の食事パターンは、認知症発症リスクの低下と認知症のない追跡期間の延長と関連していた。
これは wJDI9 スコアと認知症発症との関連を調査した最初の長期コホート研究です。
日本人の塩分濃度の高い食生活は、今日に至るまで批判され続けています。私たちは、wJDI9 によって定義された日本食を遵守すると、塩分摂取量も増加することに気づきました。
塩分摂取と関連するwJDI9の遵守食品トップ3は、魚介類、海藻、大豆および大豆食品であった(データは示さず)。これらの食品は認知症予防にも有益な効果があるため、塩分摂取による悪影響を相殺できる可能性があります。

 

筆者は、以前にも認知症や健康的な食事に関しての多くの記事を書かせていただいております。

drhirochinn.work

drhirochinn.work

drhirochinn.work

drhirochinn.work

drhirochinn.work

drhirochinn.work

drhirochinn.work

drhirochinn.work

 

最近も以下の論文が出ております。


日本の地域在住成人における食事パターンと縦断的脳容積変化の関連:国立長寿科学研究所の老化に関する縦断的研究の結果
Nutr J. 2024; 23:34。
2024 年 3 月 12 日にオンラインで公開 。doi:  10.1186/s12937-024-00935-3

メソッド
国立長寿科学研究センター「老化長期研究」プロジェクトの第6波(2008年7月~2010年7月;ベースライン)から第7波(2010年7月~2012年7月;フォローアップ)までの2年間の追跡データ分析されました。食事摂取量は 3 日間の食事記録を使用して評価され、総灰白質 (TGM)、総白質、前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉、および島葉の縦方向の体積変化 (%) が 3 次元画像を使用して評価されました。

結論
全粒穀物、魚介類、野菜、果物、キノコ、大豆製品、緑茶をより多く摂取する健康的な食事パターンの遵守は、中高年日本人女性の脳萎縮に対する予防効果をもたらす可能性がありますが、男性ではそうではありません。

 

大脳を輪切りにした標本を見てみると、脳のいちばん表面にあるのが大脳皮質で、灰色に見える部分が灰白質で神経細胞のあつまりです。その内側に白く見える部分(白質)があり、神経細胞同士をつなぐ神経繊維の束が走っている場所です。
脳の変化を詳しくグラフに描いてみてみると、灰白質と白質の割合が年齢とともに減少するようすから、萎縮は主に灰白質で起きており、白質は萎縮していないことが分かります。つまり、年齢とともに灰白質の神経細胞の数は減少するけれど、白質の神経細胞を結ぶネットワークは減少していないのです。

 

つまり我々は、少しでも認知症にならないように、食事や健康的な生活に留意すべきということのようです。