ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

PPI



筆者は仕事柄薬剤を多く使いますので、一般的にその利益と弊害に関しては日常的に実感するところです。

以前薬に関しての記事をいくつか書かせていただいていますが、今回も医療記事の中にこの薬に関しての注意事項が散見されますので皆さんにお伝えしておこうと思います。

 

drhirochinn.work

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今回取り上げるのは、PPIです。

プロトンポンプ阻害薬(PPI)
PPIは「Proton Pump Inhibitor(プロトンポンプ阻害薬)」の略称。
① 薬の効果と作用機序
胃内において胃酸分泌を抑え、胃潰瘍などを治療し逆流性食道炎に伴う痛みや胸やけなどを和らげる薬
胃酸が過多に放出されると胃粘膜や食道の粘膜を壊し、胃潰瘍や逆流性食道炎などがおこりやすくなる
胃内において胃酸分泌の最終段階にプロトンポンプというものがある
本剤は胃内のプロトンポンプを阻害することで胃酸を抑える作用をあらわす
ヘリコバクター・ピロリの除菌治療にも使用される場合がある
本剤とH2受容体拮抗薬(胃酸分泌抑制薬のひとつ)の胃酸分泌抑制作用の比較
通常、本剤の方がH2受容体拮抗薬より胃酸分泌抑制作用は強い

② 一般的な商品
オメプラール、オメプラゾン、タケプロン、パリエット、ネキシウム、タケキャブ

 

以上は、「薬と腎障害」の記事の中でもお書きしたものです。


 Meta-Analysis J Gastroenterol Hepatol. 2017 Aug;32(8):1426-1435. doi: 10.1111/jgh.13750.
認知症、認知障害およびプロトンポンプ阻害剤療法:系統的レビュー
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28128476/

結果: 系統的検索戦略とスクリーニングプロセスにより、系統的レビューに含めるための11の研究が得られました。4つの研究がPPIの使用と認知症を調査し、7つの研究がPPIの使用と急性認知障害を調査しました。認知症を調査した4つの研究のうち3つは、PPIの使用との正の関連を特定しました。急性認知障害を調査した研究の大部分でも、正の関連が観察されました。

一方、そうではないという研究もあります。

Clinical Pharmacology & Therapeutics
論文
プロトンポンプ阻害剤の長期使用は認知症のリスクを高めますか?あまり!グループベースの軌道解析の結果
初版:2019年3月12日 https://doi.org/10.1002/cpt.1430引用:9

しかし、

Research
すべての推定値は、米国の退役軍人のプロトンポンプ阻害剤に関連する死亡率と特定の死亡率を引き起こします:コホート研究
BMJ 2019 ; 365 doi:https ://doi.org/10.1136/bmj.l1580 (2019年5月30日公開)

結果
PPIを服用している1000人の患者あたり45.20の過剰死亡(95%信頼区間28.20から61.40)がありました。循環系疾患(PPIを服用している1000人の患者あたりの原因となる死亡数17.47、95%信頼区間5.47〜28.80)、新生物(12.94、1.24〜24.28)、感染性および寄生虫性疾患(4.20、1.57〜7.02)、および泌尿生殖器系疾患( 6.25、3.22から9.24)はPPIの服用に関連していた。
死亡の原因の分析は、PPIの服用が心血管疾患(15.48、5.02から25.19)および慢性腎臓病(4.19、1.56から6.58)による過剰死亡率と関連していることを示唆しました。
結論
PPIを服用すると、心血管疾患、慢性腎臓病、上部消化器癌による死亡など、原因別の死亡率がわずかに過剰になります。負担は、PPI使用の適応がない患者でも観察されました。PPIの使用に対する警戒を強化する必要があるかもしれません。

断定はしていませんが、十分可能性があるということです。

もう一度上記の筆者の記事をお読みください。

どうしても必要なので主治医の先生が処方されているものと思いますが、ご自身の処方薬に入っていたら、注意していただけると幸いです。