ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

日本における高血圧治療とCOVID-19有病率の逆相関

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新型コロナウイルス感染症において、どなたでもご存じのように高血圧症は、感染や重症化などのリスクになります。

年齢や肥満症などともに自らにあてはめ、戦々恐々としておられた方も少なからずおられるかと思います。

そういう方に少し勇気の出る論文が発表されました。

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以上は降圧薬の一覧表ですが、このうちACE阻害薬とAT受容体拮抗薬が、SARS-CoV-2感染の局所的な広がりに対して保護的な役割を果たす可能性があるということです。

 

International Journal of Infectious Diseases
日本における高血圧治療とCOVID-19有病率の逆相関
オープンアクセス公開日:2021年6月2日DOI https://doi.org/10.1016/j.ijid.2021.05.071

 

『 材料および方法
厚生労働省の公式通知記録から、各都道府県の日本人居住者におけるCOVID-19、SARS-CoV-2-PCR +の患者数、およびCOVID-19による死亡者数を抽出した(厚生労働省、2020年)。
本研究では、人口あたりの既存の高血圧およびその他の病状の治療を受けた地元の患者の比率と、日本の都道府県におけるSARS-CoV-2感染の有病率との関連を分析しました。

 結果 

循環器系の疾患、特に治療された高血圧が、他のさまざまな疾患と比較して、日本におけるSARS-CoV-2感染の局所的な広がりと最も強い逆相関を示したことを最初に示しました。さらに、年齢の影響を調整した後も、相関は統計的に有意なままでした。COVID-19の発生率と重症度の重要な危険因子として高血圧を示す以前の報告を考えると、この予期しない逆の関係のもっともらしい説明は、降圧薬の潜在的な保護効果です。

 

また、横浜市立大学などの研究グループが、高血圧症患者を対象に解析を行った結果、降圧薬であるレニン-アンジオテンシン系阻害薬(ACE阻害薬、ARB)をCOVID-19の罹患前から服用している患者では、服用していなかった患者よりも、主要評価項目の複合、院内死亡、人工呼吸器使用、ICU入室の頻度が少ない傾向が示され、またCOVID-19に関連した意識障害が少ないことも示されました。

 結果として、レニン-アンジオテンシン系阻害薬がCOVID-19重症化を予防する可能性が示唆されました。

 

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