ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

小児へのコロナワクチン接種

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昨日賛否両論のある中、オリンピックの開会式が行われました。すでに実質的に始まっていましたが、正式に開催となる中、ニュースはオリンピック一色となっています。

一方、市中のコロナ感染者数は急拡大の一途をたどっていますが、政府は現状の判断を何も発表してはいません。

drhirochinn.work

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今回はもう一度、子供のCOVID-19ワクチンの関して考えてみたいと思います。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021072200746&g=soc

小児へのコロナワクチン接種 保護者の正確な理解不可欠(NPO法人医療ガバナンス研究所理事長・上昌広)

上記の記事の中で、上先生は、「 6月28日、東京都は新規感染者を317人と発表したが、感染経路が判明している121人中、75人が家庭内感染だった。職場内27人、会食19人を大きく上回っている。家庭が感染拡大の中心になるなら、家族から子ども、子どもから家族にうつすこともあるだろう。家庭内の感染対策は、子どもも含めた検討が必要になる。つまり、子どもへのワクチン接種を検討しなければならない。」と言っています。

ここに一つ研究があります。

子供および青年からのSARS-CoV-2の家庭内感染
2021年7月21日
DOI:10.1056 / NEJMc2031915

「 分子または抗原の臨床検査に基づいて、7〜19歳でSARS-CoV-2感染の証拠があった224人の初発患者の526人の世帯の接触者のうち、377人(72%)がSARS-CoV-2について検査され、検査された人の46人(12%)が陽性の結果を示しました。
学齢期の子供と青年から家族へのSARS-CoV-2の効率的な伝播が、Covid-19の二次症例を有する成人の入院につながることを示しました。感染が発生した世帯では、世帯の連絡先の半分が感染しました。」

上記の上先生は、

「 結論から言うと、私は基本的には接種を勧めている。それは、ワクチンを打つことで感染が予防でき、子どもたちの活動の制約が解除されるとともに、家族も安心できるからだ。」

と言われています。

今現在日本では、接種の対象は、接種の日に満12歳以上の方です。このため、12歳に満たない方は、新型コロナワクチンの接種の対象にはなりません。
ファイザー社のワクチンについては12歳以上、武田/モデルナ社のワクチンについては18歳以上が接種対象となっていますので、18歳に満たない方は武田/モデルナ社のワクチンを接種することはできません。

筆者も様々なデータより小児への接種は積極的に行うべきと考えますが、12歳未満のデータがほとんどありません。

生後6ヶ月~11歳を対象とした臨床試験も海外で実施されていますが、接種の可否を判断できるデータはまだありません。

 

ここに一つの論文があります。

2021年4月 23日
子供のサイレントCOVID-19感染のシミュレートされた識別とワクチン接種による推定される将来の感染率
JAMAネットワークオープン。2021; 4(4):e217097。doi:10.1001 / jamanetworkopen.2021.7097

 

「 米国の合成集団を対象としたこのシミュレーションモデリング研究では、子供がワクチンを利用できない場合、この年齢層のサイレントCOVID-19感染を迅速に特定するための的を絞ったアプローチにより、疾病負荷が大幅に軽減されると推定されました。これらの発見は、サイレント感染による感染連鎖を遮断する手段がなければ、成人へのワクチン接種が短期的に発生を封じ込める可能性は低いことを示唆しています。

子供たちの間のサイレント感染の特定が重要な戦略であることが示されました。

 

成人のワクチン接種が進んでいる今日、実際に12歳未満の小児に対してのデータがそろうまで、或いは実際に子供が広く接種されるまで数か月かかるであろうことを考えると、この年齢に対しての感染の判定検査が非常に重要であると上記の研究は示しています。政府には、是非この点も考慮していただきたいと思います。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。 

 

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