ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

帯状疱疹とコロナワクチン

外来で患者さんを拝見していて最近思うのは、帯状疱疹がもしかしたら増えているのではないかということです。気にしているからなのかもしれませんが、帯状疱疹の発生とコロナワクチンやコロナ感染との関係を少し調べてみました。

JAMA Network
2022 年11 月 16 日
COVID-19 ワクチン接種者における帯状疱疹リスクの評価
JAMAネットオープン。2022;5(11):e2242240. doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.42240

調査結果 
米国の医療請求データベースに含まれる COVID-19 ワクチンを受けた 2,039,854 人のこのコホート研究では、自己管理リスク間隔分析により、COVID-19 ワクチン接種後の帯状疱疹の発生率比が 0.91 であることが明らかになりました。補足コホート分析では、パンデミック前およびパンデミック初期のインフルエンザワクチン接種と比較して、COVID-19ワクチン接種後に帯状疱疹のリスクが増加しないことがわかりました。
結論と関連性  
この研究では、COVID-19 ワクチン接種と帯状疱疹感染のリスク増加との間に関連性は見られませんでした。これは、患者と臨床医の間での COVID-19 ワクチンの安全性プロファイルに関する懸念に対処するのに役立つ可能性があります。

テイラーとフランシスのオンライン
メタ分析
COVID-19 ワクチン接種と帯状疱疹の関連:系統的レビューとメタ分析
https://doi.org/10.1080/14760584.2022.2036128

COVID-19 ワクチン接種と帯状疱疹の関連性は、 COVID-19 ワクチン接種から得られた現実世界の証拠は、水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化と一致しているというデータもありますが、大規模調査上、今のところ関連性はないというのが常識のようです。

それではCOVID-19そのものと帯状疱疹との関連性はどうなのでしょう?


SARS-CoV-2 感染に関連した帯状疱疹患者の臨床的特徴と転帰。症例報告とシステマティックレビュー
出典: Qatar Medical Journal、 2022 巻、第 3 号、2022 年 9 月、
DOI: https://doi.org/10.5339/qmj.2022.41

結論
合計 79 人の患者 (症例報告、シリーズ、後ろ向き研究から) が分析に含まれました。
SARS-CoV-2 は、HZ 再活性化の発生率を高めました。ほとんどの患者は、SARS-CoV-2 感染の同時または数日後に高齢者と一緒に見られましたが、SARS-CoV-2 の無症候性前駆期に少数の症例が報告されました。

 

International journal of Dermatology
レビュー
COVID-19 患者における帯状ヘルペス感染症の特徴: システマティック スコーピング レビュー
 https://doi.org/10.1111/ijd.16221

結果
3 つの観察研究と 16 の症例報告またはシリーズを含む合計 19 の記事が含まれていました。
患者の 48% が播種性 VZV 感染症でした。呼吸器症状の発症後の VZV 関連の発疹の期間の中央値は 7.0 日でした (四分位範囲: 0 ~ 18.8)。
私たちの結果は、特定の傾向がなくても、COVID-19 に関連して HSV の再活性化がさまざまな時期に発生することを強調しています。興味深いことに、患者の 42.4% に播種性疾患があることもわかりました。

COVID-19そのものと帯状疱疹との関連性は確かにあるようです。

論文上発生率は不明ですが、筆者が臨床上明らかに感じられるほどの増加ではなさそうです。


帯状疱疹は、60歳以降が好発年齢といわれており、強い痛みと残存する神経痛が患者のQOLに大きな影響を及ぼします。水痘として感染したウイルスによりますが、一度感染してしまったウイルスを排除する術は今のところなく、ワクチンで予防することが高齢での発症・重症化を防ぐ唯一の手段となります。
わが国では年間約60万人が帯状疱疹を発症すると推定されており、そのうち50歳以上が約7割を占めます。80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を経験するという報告もあり、近年、50歳以上の発症率は増加傾向にあります。
帯状疱疹患者の半数以上が、発症時(初診時)から中等度以上の強い痛みを自覚しています。皮膚症状は、抗ウイルス薬の投与によって2週間程度で軽減し、4週間程度で消失に至りますが、疼痛残存率は21日後で50%、90日後で12.4%、1年後で4.0%という報告があります。皮膚症状が重篤であるほど、また高齢であるほど痛みが遷延する可能性が高くなります。

海外の臨床試験では、水痘・帯状疱疹ワクチンにより、プラセボと比較して帯状疱疹の発症が51.3%、PHN(帯状疱疹後神経痛)の発症が66.5%減少したという報告があります。

主治医にご相談ください。