ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

コロナ・インフルワクチン同時接種 2

新型コロナウイルスのオミクロン株は、デルタ株と比較して重症化リスクが低下したとされ、季節性インフルエンザとの臨床経過を比較することへの関心が高まっています。奈良県立医科大学は、8月4日のプレスリリースで、同大学の野田 龍也氏らによる、日本における季節性インフルエンザとオミクロン株流行期の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による人口1,000万人当たりの年間死亡者数について、複数の公開データベースを用いて年齢別に比較した研究を発表しました。

報 道 資 料
2022 年 8 月4日
公立大学法人奈良県立医科大学

新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの年齢別年間死亡者数について
https://www.naramed-u.ac.jp/university/kenkyu-sangakukan/oshirase/r4nendo/documents/pressrelease20220804.pdf

 研究方法
2022 年 1 月 5 日から 2022 年 7 月 5 日までの 26 週間における COVID-19 関連の年齢別死亡者数を、厚生労働省の公開データベースから特定しました。この期間は、オミクロン株が主流になったという観点から設定しました。また、高齢者へのワクチン接種割合が80%を超えた 2022 年 3 月 30 日から 2022 年 7 月 5 日までの 14 週間における COVID-19 関連の年齢別死亡者数を特定しました。

2017 年 9 月 1 日から 2019 年 8 月 31 日までの間におけるインフルエンザ関連の年齢別死亡者数を、厚生労働省が構築しているレセプト情報・特定健診等情報データベースから特定しました。

結果
インフルエンザと比べた COVID-19 の年間死亡者数は 69歳以下では大きいものではありませんでした。つまり、69 歳以下においては、オミクロン株流行期の COVID-19 の年間死亡者数が、COVID-19 流行前のインフルエンザの年間死亡者数と比べて多かったとは想定し難いと考えられます。この結果は、高齢者に優先づけた感染対策が重要となることを示唆します。

少なくとも70歳以上はコロナもインフルも格段に死亡率が増加しています。

インフルエンザ並みならいいではなくて、両方とも可能な限り予防すべきです。

10月後半からインフルワクチンもどんどん打てるようになると思われますので、コロナの2価ワクチンとの同時接種を考慮した方がよいと思います。しかもこの時インフルワクチンも筋注での施行がよいと思われます。

drhirochinn.work

環境感染誌 Vol. 36 no. 1, 2021― 44 ―
〈原 著〉
インフルエンザワクチンにおける皮下注射・筋肉注射の差異
―発症率・接種時疼痛・副反応の前向きコホート観察研究―
馬嶋健一郎 1,2)・古谷 直子 3)・細川 直登 3,

要 旨
季節性インフルエンザワクチンの接種法は本邦では皮下注射(皮下注)であるが,海外では局所副反応が軽度で抗体価上昇が良好なため筋肉注射(筋注)が推奨されている。しかし,皮下注・筋注での発症予防効果の差までは明らかではなく,接種時の疼痛の差異は今まで検討されていない。
当院は病院職員と看護学生への接種が皮下注・筋注の希望選択となっており,発症率,接種時疼痛,接種後副反応の接種法による違いを前向きコホート観察研究で調査を行った。病院への発症者報告は皮下注 11.3%(65/574),筋8.2%(258/3147)で,有意に筋注で少なく(P=0.02),性別,年齢,15 歳以下と同居,感染予防のタイプを調整したロジスティック回帰でも有意に筋注で少なかった(odds 比 0.73,P 値=0.04)。接種時痛や接種後副反応は看護学生 320 名(皮下注 77,筋注 243 名)
で調査し,接種時の痛みスコア(0 痛くない~10 非常に痛い)中央値は皮下注 4,筋注 2 であり,筋注群で有意に痛みが少なく(P<0.001),注射への恐怖心等で調整した多重回帰でも筋注の方が1.26 有意に少なかった。接種後の痛みや腫脹についても,筋注群の方が軽度であった。筋注は皮下注に比べて,インフルエンザ発症の報告数が少なく,接種時疼痛,接種後疼痛腫脹も少なかった。筋注は優れた投与方法と考えられ,本法の用法として認められることが望まれる。

サンプルサイズは小さいですが、筋注のほうが発症率,接種時疼痛,接種後副反応のすべてにおいて皮下注射より勝っていたということです。

同時接種ですから、両方とも同じ筋肉注射であれば間違いも少なくなると思われます。(コロナを皮下注射で打ってしまうということは起こらないでしょう。)