ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

BA.4,BA.5対応ワクチンとアナフィラキシー

 

今日も朝散歩に行ってきました。何日か前の天気予報では、今日は雨だったのですが、運よく晴れになり朝8時頃から近くの川の土手に散歩に行ってきました。

いつも歩くコースの折り返し地点にちょうど施設があります。トイレや自販機があり時間によっては軽食も取れます。しかし自治体で運営していますので残念ながら9時からしか利用できません。住民サービスをもっと心がけていただくとありがたいのですが・・・。

 

筆者のところでは、コロナワクチンがやっとBA.1対応ワクチンからBA.4,BA5対応ワクチンに切り替わります。

「4回目の追加接種にBA.5対応ワクチンを接種した56歳以上の人では、接種から1カ月後、BA.4とBA.5系統に対する中和抗体の値が接種前と比べ、13・2倍に高まった。これに対し、従来型ワクチンを接種した人の同様の抗体価の増え方は、2・9倍にとどまった。
18~55歳の人でBA.5対応ワクチンを接種した人では、同様の中和抗体の値は9・5倍に増えていた。
安全性については、従来型ワクチンととくに違いはみられなかったという。」

「感染防ぐ抗体価、従来型の4倍」 ファイザー製のBA.5ワクチン
11/8(火) 20:40配信  朝日新聞デジタル

このBA.4,BA5ワクチンは効果がいいようです。

しかし最近の報道で気になるのは、アナフィラキシーショックで亡くなった事例があるということです。

2022 年 8 月 31 日から 10 月 23 日の間に、12 歳以上の約 1,440 万人が 2 価の Pfizer-BioNTech ブースター投与を受け、18 歳以上の 820 万人の成人が 2 価のモデルナ ブースター投与を受けました。
v-safe の 2 価ブースター投与を受けたと報告した 12 歳以上の 211,959 人の登録者のうち、注射部位と全身反応は、ワクチン接種後の 1 週間に頻繁に報告されました (それぞれ 60.8% と 54.8%)。v-safe 登録者のうち、医療を受けていると報告したのは 1% 未満でした。VAERS は、12 歳以上の人における二価ブースターワクチン接種後の有害事象について 5,542 件の報告を受けました。報告の 95.5% は重大でないもので、4.5% は重大なイベントでした。医療提供者と患者は、二価ブースター投与後に報告された有害事象が一価投与後に報告されたものと一致していることを安心させることができます. COVID-19 ワクチン接種後の健康への影響は、COVID-19 疾患に関連するものよりも頻度が低く、深刻度も低くなります。

CDC
12 歳以上の人における二価 COVID-19 mRNA ワクチン追加接種の安全性モニタリング — 米国、2022 年 8 月 31 日~10 月 23 日
毎週/ 2022 年 11 月 4 日 / 71(44);1401–1406

しかし米国でのこのワクチンの安全性には、従来のワクチンと比べ大きな問題はなさそうです。今までのワクチンの使用経験から言って日本と米国で大きな相違もありませんでした。

特に日本での発症頻度が高いとは思えません。そうすると対応に問題があるのかもしれません。現場を見ていないのにいい加減なことは言えませんが。

ところで、アナフィラキシーガイドラインが8年ぶりに改訂され、主に「1.定義と診断基準」が変更になりました。
改訂となった診断基準では世界アレルギー機構(WAO)が提唱する項目として3つから2つへ集約されました。アナフィラキシーの定義は『重篤な全身性の過敏反応であり、通常は急速に発現し、死に至ることもある。重症のアナフィラキシーは、致死的になり得る気道・呼吸・循環器症状により特徴づけられるが、典型的な皮膚症状や循環性ショックを伴わない場合もある』としています。
基準はまず皮膚症状の有無で区分されており皮膚症状がなくても、アナフィラキシーを疑う場面では血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状のいずれかを発症していれば診断可能となります。

『 以下の2つの基準のいずれかを満たす場合、アナフィラキシーである可能性が非常に高い。

1.皮膚、粘膜、またはその両方の症状(全身性の蕁麻疹、掻痒または紅潮、口唇・下・口蓋垂の腫脹など)が急速に(数分~数時間で)発症した場合。
さらに、A~Cのうち少なくとも1つを伴う。
  A. 気道/呼吸:呼吸不全(呼吸困難、呼気性喘鳴・気管支攣縮、吸気性喘鳴、PEF低下、低酸素血症など)
  B. 循環器:血圧低下または臓器不全に伴う症状(筋緊張低下[虚脱]、失神、失禁など)
  C. その他:重度の消化器症状(重度の痙攣性腹痛、反復性嘔吐など[特に食物以外のアレルゲンへの曝露後])

2.典型的な皮膚症状を伴わなくても、当該患者にとって既知のアレルゲンまたはアレルゲンの可能性がきわめて高いものに曝露された後、血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状が急速に(数分~数時間で)発症した場合。』

臨床医にとって少し診断が簡易になるのかもしれません。

drhirochinn.work

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アナフィラキシーの診断でむつかしい場合があるかもしれませんが、迷ったらアドレナリン投与です。

アドレナリン投与に絶対的禁忌はありません。

2015年10月1日~2017年9月30日の2年間に医療事故調査・支援センターに報告された院内調査結果報告書476件のうち、アナフィラキシーが死因となる事例が12件もあったとのこと。これらの誘因はすべて注射剤で、造影剤、抗生物質、筋弛緩剤などでした。

アナフィラキシーを生じやすい造影剤や静脈注射、輸血の場合、症状出現までの時間はおよそ5~10分で時間的猶予はありません。

アドレナリン筋注による治療を迅速に行っていれば死亡を防げた可能性が高いにもかかわらず、このような事例が未だに存在するようです。

筆者ももう一度肝に銘じておこうと思います。