ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

ワクチンブースター3

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この記事の中で「追加免疫の必要性または追加免疫のタイミングに関する決定は、適切に管理された臨床データまたは疫学データ、あるいはその両方の注意深い分析に基づいて行う必要があります。」と書きましたが、この答えになるようなデータが2件発表されました。

 

原著
BNT162b2Covid-19ワクチンに対する免疫液性応答の6か月間の衰退
2021年10月6日 DOI:10.1056 / NEJMoa2114583

結果
この研究には4868人の参加者が含まれ、3808人が線形混合モデル分析に含まれていました。IgG抗体のレベルは一定の割合で減少しましたが、中和抗体のレベルは最初の3か月間は急速に減少し、その後は比較的ゆっくりと減少しました。IgG抗体レベルは中和抗体価と高い相関がありましたが(スピアマンの順位相関は0.68〜0.75)、IgGと中和抗体レベルの回帰関係は2回目のワクチン投与を受けてからの時間に依存していました。2回目の投与を受けてから6か月後、中和抗体価は女性よりも男性の方が大幅に低かった(平均比0.64、95%信頼区間[CI] 0.55〜0.75)。
結論
BNT162b2ワクチンの2回目の接種を受けてから6か月後、体液性応答は、特に男性、65歳以上の人、および免疫抑制のある人の間で大幅に減少しました。

はしか、おたふく風邪、風疹に対するワクチンなど、多くのワクチンに関する発表された研究では、中和抗体レベルが毎年5〜10%のわずかな減少を示します。一方コロナワクチン接種後数ヶ月以内に、BNT162b2ワクチンに対する体液性応答の有意かつ急速な低下が観察されたことがわかりました。

 

BNT162b2ワクチンの2回目の接種を受けてから6か月後、体液性応答は、特に男性、65歳以上の人、および免疫抑制のある人の間で大幅に減少したとのことです。

 

原著
カタールでのSARS-CoV-2感染に対するBNT162b2ワクチン保護の衰退
2021年10月6日 DOI:10.1056 / NEJMoa2114114

結果
2020年12月21日から2021年9月5日までの間に、合計947,035人がBNT162b2を少なくとも1回投与され、907,7​​63人が2回投与レジメンを完了しました。

SARS-CoV-2感染に対する推定BNT162b2の有効性は、初回投与後の最初の2週間はごくわずかでした。最初の投与後3週間で36.8%(95%信頼区間[CI]、33.2〜40.2)に増加し、2回目の投与後の最初の月で77.5%(95%CI、76.4〜78.6)でピークに達しました。その後、有効性は徐々に低下し、4か月後に低下が加速し、2回目の投与後5〜7か月で約20%に達しました。症候性感染に対する有効性は、無症候性感染に対する有効性よりも高かったが、同様に弱まった。バリアント固有の有効性は同じパターンで低下しました。Covid-19の重症、重大、または致命的な症例に対する有効性は、66.1%(95%CI、56.8から73)に急速に増加しました。最初の投与後3週目までに、2回目の投与後の最初の2か月で96%以上に達した。有効性は、ほぼこのレベルで6か月間持続しました。
結論
BNT162b2によるSARS-COV-2感染に対する防御は、2回目の投与後のピークに続いて急速に衰えたように見えましたが、入院と死亡に対する防御は2回目の投与後6か月間強力なレベルで持続しました。

 

感染予防効果は、2回目投与後5~7か月で約20%に低下。発症予防効果もほぼ同様に低下したが、重症化予防や死亡予防効果は高いまま6か月間維持されたとのことです。

 

この2つのデータは少し意味合いが異なりますが、いずれも約6か月後にファイザー社製ワクチンの中和抗体価や感染・発症予防効果が大幅に低下するということを示しています。

重症化があまりないとしても、発症して入院しその後の入院ひっ迫を考えると、欧米各国がすでに開始しているように、接種後6か月を過ぎた3回目のブースター接種が是非とも必要であると考えられます。

 

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