ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

SARS-CoV-2 ワクチンの安全性  2

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1月16日の記事にて、Pfizer/BioNTech 社製のmRNAワクチンとModerna社/NIAID製のmRNAワクチンの臨床試験の結果をお伝えしましたが、その後実際に接種が始まり上記の論文の時点で約190万人に接種した後のデータが出ました。

Pfizer/BioNTech 社製のmRNAワクチンの初回投与後の重篤な有害事象の報告です。

できるだけ忠実に論文をご紹介します。

「 ワクチン接種後の重度のアレルギー反応とアナフィラキシーの疑いの通知と報告は、予防接種後の有害事象の全国的な受動的監視(自発的報告)システムであるワクチン有害事象報告システム(VAERS)に記録されました。米国疾病予防管理センター(CDC)の医師がこれらのレポートを評価し、ブライトンコラボレーションの症例定義基準を適用しました。症例報告をアナフィラキシーまたはアナフィラキシーではないものとして分類します。主に血管迷走神経性または不安神経症に関連する非アレルギー性の有害事象は、分析から除外されました。ワクチン接種後の発症が遅れたアレルギー反応を明確に特定することが困難であるため、ワクチン接種の翌日以降に発症した症状を伴うアナフィラキシーおよび非アナフィラキシーアレルギー反応の症例も除外されました。Moderna COVID-19ワクチンは、2020年12月21日以降にのみ入手可能であったため、この記事ではPfizer-BioNTechCOVID-19ワクチンに焦点を当てます。」

血管迷走神経性とは、神経の反射で(単に注射の痛みにより)気を失ったり、血圧が低下したりするものです。実際外来では時々起こりますが、臥床だけで軽快します。

見えにくくて申し訳ありませんが、下記がブライトン分類基準です。

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「 2020年12月14日から23日までの間に、報告された1893 360のファイザー-BioNTechCOVID-19ワクチンの初回投与後(女性で1 177 527、男性で648 327、レシピエントの性別が報告されていない67 506)、CDCは、VAERSに提出されたアナフィラキシーのブライトンコラボレーションケース定義基準を満たす21のケースレポートを特定しました。これは、投与された100万回の投与あたり11.1ケースの推定率に相当します。4人の患者(19%)が入院し(集中治療室の3人を含む)、17人(81%)が救急科で治療されました。20人(95%)は、VAERSへの報告の時点で、自宅に退院したか、回復したことがわかっています。アナフィラキシーによる死亡は報告されていません。 」

「 ワクチン接種からアナフィラキシー症状発現までの間隔の中央値は13分(範囲、2〜150分)でした。15人の患者(71%)が15分以内に発症しました。18人(86%)が30分以内に発症しました。最も一般的な症状と徴候は、蕁麻疹、血管浮腫、発疹、および喉の閉鎖感でした。アナフィラキシーの21人の患者のうち17人(81%)は、薬物や医療製品、食品、虫刺されなどのアレルギーまたはアレルギー反応の記録された病歴を持っていました。7人(33%)は、過去に狂犬病ワクチンの接種後とインフルエンザA(H1N1)ワクチンの接種後を含むアナフィラキシーのエピソードを経験していました。同じ期間に、VAERSはファイザー-BioNTechCOVID-19ワクチン接種後に83例の非アナフィラキシーアレルギー反応を特定しました。 非アナフィラキシーアレルギー反応で一般的に報告されている症状には、掻痒、発疹、喉のかゆみや引っかき傷、軽度の呼吸器症状などがあります。 」

アナフィラキシー症状発現の中央値は13分ですが、最も遅い出現は150分だったようです。以前の記事でもお伝えしたように遅発性の反応もありますので、もっと長いスパンで経過観察した方が安全と思います。

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又、論文中には記述はありませんが(論文中の表に載っています)、21人のうち4人は過去に全くアレルギー反応の既往はありませんでした。つまり過去にアレルギー反応の経験がなくてもアナフィラキシーは起こりえますので、接種後十分注意する必要があります。

「 高リスクの集団におけるCOVID-19による死亡率はかなり高く、治療の選択肢は限られています。非常に効果的なワクチンによるCOVID-19に対する広範なワクチン接種は、パンデミックを制御するための取り組みにおける重要なツールです。mRNAのCOVID-19ワクチンの使用上のCDCガイダンスとアナフィラキシーの管理が可能です。具体的には、ワクチン接種場所は、(1)アナフィラキシーを管理するために必要な供給品、特にプレフィルドシリンジまたは自動注射器内の十分な量のエピネフリンが利用可能であることを確認する必要があります。(2)潜在的なワクチン接種者をスクリーニングして、禁忌および予防措置のある人を特定します。(3)各患者のアレルギー反応の以前の病歴に応じて15分または30分の推奨されるワクチン接種後の観察期間を実施する。(4)医師や他の医療専門家がアナフィラキシーの兆候や症状を早期に認識できるようにする。(5)疑わしいアナフィラキシーを筋肉内エピネフリンで直ちに治療する(アナフィラキシーの急性で生命を脅かす性質のため、エピネフリン投与に対する禁忌はありません)。 」

プレフィルドシリンジとは、薬剤があらかじめ充填された注射器であり、臨床使用上、さまざまな有用性を持っています。

また接種後15分または30分と書かれていますが、1月23日の記事でも書きましたように丸一日は気を付けるべきと思います。

「 アナフィラキシーを経験している患者は、適切な医療を受けるために施設に移送されるべきです。観察期間が終了し、予防接種の場所を離れた後にアレルギー反応の兆候または症状が現れた場合は、すべての患者に直ちに医療を求めるように指示する必要があります。臨床医は、有害事象を認識してVAERSに報告することに注意を払うことにより、ワクチンの安全性の監視において重要な役割を果たします。 」

接種会場を離れた後のアレルギー反応の確認と対応に関しては、具体的にどうするかは日本でもう一度考える必要があると思います。

予防接種後の有害事象の全国的な受動的監視(自発的報告)システムである、ワクチン有害事象報告システム(VAERS)のような仕組みを、日本でも計画していると1昨日のニュースが確か伝えていました。ここは徹底的に米国のシステムを見習った方がいいでしょう。

最速ワクチン接種国であるイスラエルの論文がしっかり見れていませんが、どうやらワクチンが発症だけでなく感染自体も予防する可能性があるようです。早くデータを世界に公開してほしいと思います。

確かに中・長期的有害事象がまだはっきりしませんが、このPfizer/BioNTech 社製のmRNAワクチンは、今のところ優れたワクチンのようです。

今後も論文が出しだい、皆さんにお伝えさせていただくつもりです。

最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました。

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