ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

足湯

筆者が無類のお風呂好きであることは、以前の記事で書かせていただきました。

drhirochinn.work

しかし全身浴である「お風呂」以外に、部分浴である「足湯(足浴)」の効能などについて筆者なりに考えてみました。

「足湯は、銭湯や温泉文化が発達した日本人にとっては、古くから知られているフットケア入浴法の一つです。私たちがいつから足湯を楽しむようになったのかについては、これといった記録が残っていませんが、紀元前の温泉を楽しんでいた時期から、足湯は冷えを取り除く入浴法として、楽しまれていたのではないかと言われています。
ちなみに、江戸時代、江戸の街でのお風呂といえば、バスタブに入浴するのではなく、今でいうスチームサウナの中に入り、足湯につかるという入浴スタイルだったのだそうですが、これは当時、人口が100万人とも言われていた大都会の江戸ならではの悩みで、薪や水などが十分供給できなかったことも背景にあるようです。とはいえ、地方の温泉が湧き出している農村などでは、農作業で疲れた足の疲労回復や浮腫み、怪我の治療などにも積極的に使われていたそうで、昔から足湯には秘められた効能があることは知られていたそうです。」

大源製薬
冷えやむくみの改善策
https://www.e-daigen.co.jp/html/page3.html#:~:text=%E8%B6%B3%E6%B9%AF%E3%81%AF%E3%80%81%E9%8A%AD%E6%B9%AF%E3%82%84%E6%B8%A9%E6%B3%89,%E3%81%8B%E3%81%A8%E8%A8%80%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

江戸時代の江戸などでは日常的に足湯が行われていたようです。

足浴のリラクセーション効果に関する文献レビュー
京府医大看護紀要,28:55-60,2018
https://mail.google.com/mail/u/0/#inbox/FMfcgzGrcPLndGVwwHQrccjJWhPqRBSG?projector=1&messagePartId=0.1

結論
2002 年から 2017 年の期間に発表された 10 文献を取り上げ、リラクセーション効果が得られ臨床で実践できる足浴方法・評価について検証し以下の点を明らかにした。

1)多くの研究で香りやマッサージなどの併用により、リラクセーション効果が高まる可能性が示唆されていたが、臨床の場では技術的、物理的に困難ではないかと考えられた。
2)リラクセーション効果の評価は、足浴を受けた人の感じ方、気持ちの変化を主観的に評価し、気分・不安尺度などによる目的に応じた尺度評価を行うことが重要である。
3)温浴のみの足浴でもリラクセーション効果は得られる。リラクセーション効果が得られる臨床での実践方法として、湯温 38 ~ 41°C、水深 15cm程度、浸漬時間 10 ~ 20 分と推測された。

足湯(足浴)に関しては、優れた健康上の利点があります。

奨学会研究発表
特定高齢者対象の転倒予防教室における 運動前の足浴の転倒予防効果の検討 
https://mail.google.com/mail/u/0/#inbox/FMfcgzGrcPLndJmKMxTjFNwNtzrDvWQZ?projector=1&messagePartId=0.1

足部機能指標と体力測定の結果より, 足浴群の方が教室終了時に、柔軟性 (足関節背屈角度 長座位体前屈)と歩行時 の前進力(足底荷重値), バランス能力 (開眼片足時間), 筋力 (握力) および複合動作能力 (TUG) が向上していたと 考えられる。 先行研究によると, ストレッチと温熱療法を併用すると足関節可動域が拡大維持されるとの報告やり 温熱 負荷下で運動を実施したところ上腕二等筋横断面積の有意な増大があったとする報告がある 2)。 つまり足浴の温熱効果に よって、足浴群の運動能力の維持, 改善に繋がったと考えられる。 3か月後の電話調査より、両群の転倒した人数は同じ であったが, 要介護状態や杖歩行になった被験者は対照群にのみ見られた。

整形外科的運動療法と足湯(足浴)を組み合わせると、運動能力の維持, 改善に繋がる可能性が大いにあります。

Jケアリングサイエンス
足湯が高齢者の睡眠の質に与える影響:無作為盲検臨床試験
2013 年 11 月 30 日;2(4):305-11。ドイ: 10.5681/jcs.2013.036. eCollection 2013 12月
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4134151/

この研究結果は、足湯が高齢者の睡眠の質に効果的であり、睡眠潜時を短縮し、効率的な睡眠時間を増加させることを示しています. 高齢者では睡眠障害の割合が高いため、この問題を管理するための非薬理学的で簡単かつ安全な方法として足湯を使用できます.

さらに高齢者の睡眠にも好影響を与えます。

次に足湯のお湯の安全性はどうでしょう?

The Society of Heating, Air-Conditioning Sanitary Engineers of Japan
足湯 施 設 に 関 す る 基 礎 的 研 究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2012.1/0/2012.1_29/_pdf/-char/ja

採水結果
1)過 マ ン ガ ン 酸 カ リウム (基準値 : 25mg/L 以 下)4 検体が基準値を超 えて い た:過 マ ン ガン 酸 カ リウ ム は 水に 含ま れ る有機 物の 量 を示 して い る。
検 出施 設の 特徴 と して は、 浴槽に滞留 が見 られ るこ とや 、利 用者 が多 い こ と、地表 とレ ベ ル 差が な く屋 根 がかか って い ない 施設 で あ る こ とが認 め られ た 。
2)大腸 菌群 (基 準値 : 1ml 中につ き 1 個以 下)5 検体が 基準値 を超 えて い た: 検 出施設の 特徴 と して は ・子供連れ な ど も含め 利用者が 多い こ と。
3)レ ジオネラ属菌 (基 準値 : 10CFU/10(lml未満)6 検体が基準値を超 えて い た;検 出施設 の 割合を比 べ る と、件数 は掛 け流 し施設 よ り循環式施設 の 方が2 倍 多い 。 検出施 設 の 特徴 と して は循 環装 置停 IE、バ イ オ フ ィ ル ム 、湯 口 にコ ケ と白カ ビが付着 して い た。

本研 究 に よ り、い くつ か の 施設 か ら多量 の レ ジオ ネ ラ属菌、大腸 菌が検出され た。 これ らの 共 通 点と して は循環装置の 停 止、湯船 の 滞留、バ イ オ フ ィ ル ム の 発生 お よび 、清掃や消毒の 不 徹底 な どが 認 め られ た。

頻回の清掃と循環の監視で対応できそうです。

なお白癬菌(水虫)に関しては研究で分析項目でしたが、有意な結果ではなかったようです。しかもカビの生育可能温度の領域は0~40℃ですので、湯温をそれ以上に設定すれば理論上は白癬菌は生育できないことになります。

 

都会の中に足湯を取り入れたヒーリング空間があれば、このストレスフルな現代社会を生き抜いているかたがたに、少しでも癒しの時間が提供できることと思います。