ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

もう一つのワクチン AZD1222

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AZD1222は、オックスフォード大学とそのスピンアウト企業Vaccitechによって共同で発明され、英国アストラゼネカ社が販売のワクチンです。このワクチンは、複製できないように処理をした弱毒化されたチンパンジー由来の風邪のアデノウイルスに、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質の遺伝物質を含んだものです。ワクチン接種後、表面スパイクタンパク質が産生され、免疫系を刺激して、後で体が感染した場合にSARS-CoV-2ウイルスを攻撃します。

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アストラゼネカ社ーオックスフォード大(英)ウイルスベクターワクチン: 2020年5月から英で第Ⅱ/Ⅲ相試験の実施。2020年6月からブラジルで第Ⅲ相試験(1万人規模)を実施。 2020年8月から米で第Ⅲ相試験(4万人規模)を実施。英で接種開始。全世界に20億人分を計画、米に3億人分、英に1億人分、欧州に4億人分、新興国に10億人分を供給予定としている。ワクチン開発に成功した場合、日本に1.2億回分、うち3,000万回分は2021年3月までに供給を受けることについて契約を締結。海外からの原薬供給のほか、国内での原薬製造をJCRファーマと提携。充填等を国内4社と提携。厚生労働省が国内での原薬製造及び製剤化等の体制整備に162.3億円を補助(生産体制等緊急整備事業)。国内治験を2020年8月下旬から実施。

と厚労省のホームページに掲載されています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000724037.pdf

ウイルスベクターワクチンとは、アデノウイルスなど感染力のあるウイルスに特定の遺伝子を組み込み人体に投与するものです。すでに先天性の代謝疾患や癌の治療に応用されており、感染症の領域でもエボラ出血熱のワクチンとして海外で実用化されています。mRNA ワクチンと同様に、ヒトの細胞内で遺伝子からタンパク質が合成され、免疫応答が起こります 。 ベクター(運び屋)としてのウイルス自体には病原性はありませんが、人体内で複製されて増殖するものと、複製されず人体内で増殖できないものがあります。アストラゼネカのウイルスベクターワクチンはチンパンジーアデノウイルスを用いたもので、人体内で複製できません 。ベクターに SARS-CoV-2 のスパイクタンパク質の遺伝子を組み込んであり、スパイクタンパク質に対する免疫が誘導されます。

英アストラゼネカは11月23日、新型コロナウイルスワクチン候補「AZD1222」について、中間解析の結果、コロナ予防に関する主要評価項目を達成したと発表しました。解析は、2つの異なる接種計画の試験を複数あわせて解析しており(combined analysis)、平均した予防効果は70%でした。最初に半量を接種し、1か月後に全量のワクチン候補を接種した群では90%の予防効果を示しました。なお、AZD1222を投与された群では新型コロナの重症例や入院患者は認められなかったとしています。

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)32623-4/fulltext#back-bib3

THE LANCET に12月8日に掲載された論文(Oxford–AstraZeneca COVID-19 vaccine efficacy)によりますと、

重篤な有害事象は、12174のChAdOx1nCoV-19接種群と11879の対照群で評価されました。ChAdOx1 nCoV-19接種群では、治療に関連した重篤な有害事象や死亡は発生しませんでした。175件の重篤な有害事象(ChAdOx1 nCoV-19グループで84件、対照グループで91件)があり、そのうち3件は介入に関連している可能性があります:ChAdOx1 nCoV-19ブースターワクチン接種の14日後に発生した横断性脊髄炎、溶血性貧血は、対照のレシピエントであり、ChAdOx1 nCoV-19の初回投与から10日後の1例は、既存の多発性硬化症によるものであり、もう1例はワクチン接種の68日後に発生した対照群でした。よってこの規模数の接種群では重篤な副反応は見られなかったという結果でした。

ファイザー/ビオンテックのワクチンは、マイナス70度前後で管理する必要があり、保存期限は超低温の冷凍庫で最長6カ月間、一般的な冷蔵庫(2~8度)で5日間。 モデルナのワクチンは、マイナス20度で最大6カ月間保存でき、一般的な冷蔵庫でも30日間保存することが可能です。

一方、アストラゼネカのワクチンは普通の冷蔵庫で少なくとも6カ月間保存が可能。他の2ワクチンは、超低温での輸送・管理に特別な設備が必要で、特に貧困国に供給する上でネックになる可能性がありますが、グローバルなアクセスを考えるとアストラゼネカのワクチンが有利です。

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これで今後日本で使用されるであろう、3つのワクチンのご紹介が終わりました。ワクチンは、個人としては感染予防につながりますし、地域社会にとっては大切な集団免疫に貢献します。まだわからない部分もありますが、できるだけ接種した方が良いと考えます。私も順番が来たら受けるつもりです。

いつも最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

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