ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

在宅?施設?

おはようございます。

つい最近知り合いの先生が癌に罹患され入院されました。かなりの進行がんのようです。職場復帰はむつかしいとのことです。

一般的にがんの終末期を自宅か病院どちらで過ごすのか大きな選択になります。自宅で家族と過ごすのか、緩和ケア病棟で過ごすのか選ばなければなりません。

実際に末期がんで緩和ケアを受けている患者さんの、最終的な緩和ケアの場所に関する研究があります。

BMC Palliat Care. 2021; 20: 164.
Published online 2021 Oct 18. doi: 10.1186/s12904-021-00865-5
総合的な在宅緩和ケアを受けている進行がん患者の最終治療場所の予測因子:後ろ向きコホート研究

結論
より高い機能状態⦅機能性 (歩行および活動レベルの点で) が良好で注意力が高い患者は、病院の介入を通じてその状態を維持しようと努力する可能性がある⦆ 、より強い痛み、および自宅以外での死の好みは、ケアの最終的な場所としての施設化を予測しました。さらに、高齢の家族介護者がいる独身または離婚した患者は、入院ホスピスでターミナルケアを受ける可能性が高く、男性は入院する可能性が高かった. 

自分の好きな場所でケアを受けて死ぬことは、質の高い死と死に不可欠な要素です。全人口の半数以上が自宅でケアを受け、自宅で死ぬことを望んでおり、実際、死と死の質は病院よりも自宅の方が優れています。これまでの研究では、疼痛強度が高く、自宅以外での死を好むことが病院での死亡を予測し、日本の遺族の 68% は患者が自宅で死ぬことを望んでいたことが示されています。

それでは在宅と病院での生存期間に差はあるのでしょうか。


PLoS One. 2023; 18(4): e0284147.
Published online 2023 Apr 13. doi: 10.1371/journal.pone.0284147
在宅と病院で緩和ケアを受けた進行がん患者の生存期間の比較

材料および方法
日本で在宅緩和ケア (Come Home study) または病院ベースの緩和ケア (EASED study) を受けている進行がん患者の 2 つの多施設前向きコホート研究を実施し、生存期間の差を比較しました。

合計 2,998 人の患者が両方の研究に登録され、2,878 人の患者が分析されました。988 人の患者が自宅ベースの在宅緩和ケアを受け取り、1,890 人の患者が病院ベースの在宅緩和ケアを受け取りました。

結論
予後が数週間または数ヶ月の進行がん患者のこのコホートでは、症状と治療を調整した後、自宅で在宅緩和ケアを使用した患者は、病院で在宅緩和ケアを使用した患者よりも長く生存しました。

これは日本での研究ですが、生活の質が伴っているからこそ生存期間も長いのであると思います。家族には多大な迷惑をかけますが、筆者ももしその場面になったら恐らく在宅を選ぶと思います。皆さんはいかがですか?