ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

整形外科領域において M R I を汎用すべき 8つの理由

M R I とは Magnetic Resonance Image の略で、強い磁石と電波を用い生体を構成している水素原子から信号を取り出し、それを画像化する検査です。
体の中に金属(ペースメーカー、脳動脈瘤クリップ、人工関節、人工内耳等)が入っている方、妊娠中の方、などはM R I を受けれない場合があります。

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M R I を汎用すべき理由

1)全身の幅広い部位、特に頭部、脊椎、四肢の関節など比較的動きが少ない部位、整形外科では脊髄、脊椎、四肢の骨関節、靭帯などほぼすべての臓器、組織が検査対象となります。

2)上記した金属の入っている方や妊娠している方以外は、全く体に無害無侵襲に検査できますので、聞き分けがよければ小さいお子さんにも安心しておすすめできます。

3)子供の外傷でレントゲン検査ではわかりにくい若木骨折疲労骨折の検出に有効ですし、スポーツ外傷のシンスプリント(骨膜筋膜の炎症)と疲労骨折の鑑別にも威力を発揮します。
又、腰椎分離症の診断において超早期の診断は M R I にしかできません。
子供のスポーツ外傷の場合、ご家族やご本人からいつもきまって聞かれるのは、近日中にある大会や試合に出れるかどうかというものです。この質問にしっかり答えるためにも、できるだけ当日中に骨折があるかないかの厳密な判断が必要になります。

4)中高年の脊椎の新しい圧迫骨折は、レントゲン検査ではわからないことも多々ありますが、 M R I なら確実に診断できます。当たり前ですが、あるとなしでは治療方針がかなり変わってきます。

5)炎症の”場”がわかる: M R I 画像では通常 、T1強調画像とT2強調画像のセットで撮像しますが,T2画像では水や液性成分や脂肪が白く見え、脂肪抑制画像を撮ると液体部分のみがわかります。炎症があると水っぽくなり、本来液体が多くない所であって浮腫でなければ、そこに炎症があるということになります。
例えば足首を腫らして患者さんが来られたとします。この場合関節炎で腫れているのか、皮下が腫れているのかわかりにくいときがありますが 、M R I を撮れば一発でわかります。

6)昨今、スポーツ愛好家が増えており筋挫傷(肉離れ)も多くなっていますが、範囲が広範に及ぶ場合は超音波検査ではわからず M R I でなければ描出できません。また、この M R I 画像では筋挫傷の型分類が決まっており、それによって大まかな治療方針や予後がわかります。

7)整形外科では、軟部腫瘍の診断も大変重要で、画像診断としてはレントゲン検査と M R I が基本ですが、とりわけ M R I はその診断において C T より優れ、大きさ、増殖パターン、辺縁、均一性などを無侵襲に評価できます。

8)R A (関節リウマチ)の診断に関して、身体関節症状と血液検査でスコアリングして診断しますが、実際の外来診療場面では迷う場面も多々あります。この時、造影M R I(関節炎、骨びらん、骨髄内浮腫などを検出)は、有力な補助診断になります。



M R I は、外傷性疾患、変性疾患、腫瘍性病変など、あらゆる疾患においてその診断能が非常に高い検査装置です。
確かに医療経済も大切ですが、医療医学の基本は診断と治療。その診断において整形外科では、 M R I という画像診断がとりわけ重要であり、できるだけ M R I を使って精度の高い診断をすべきであると思います。
的確な診断がないと治療日数が伸びたり、遷延化、重症化してその治療にかえって医療費がかさむ可能性があります。

以上 M R I を汎用すべき 8 つの理由を書いてきました。
実際にけがや病気になって医療機関を受診する際に、少しでも参考になれば大変うれしく思います。


テレワークやスポーツの秋で膝の痛み出ていませんか?

整形外科外来にて
画像検査をします
手術治療


自宅でのテレワーク中、床の上であぐら姿勢をとって膝の痛みが出たり、テレワークの運動不足を解消しようとしていきなりジョギングしたり、スポーツジムに通ってトレーニングを始めたりして膝が痛み始めていませんか?。
50歳以上の日本人の中で、X線所見上で変形性膝関節症と診断されるのは2400万人、うち痛みがあるのは820万人(男性210万人、女性610万人)と推計されています。

ひざ痛がおよそ1週間以上続くようなら、お近くの整形外科を受診してください。40歳以上の男女のひざ痛で、外傷以外のほとんどの原因は変形性膝関節症です。
それでは実際に整形外科医院に行かれてからの流れについて、お話したいと思います。

整形外科外来にて

我々は患者さんを呼び入れます。まず病歴を聞きます。いつからどういう時に痛むか。何かきっかけとして思い当たることはないか。以前にいたんだことはあるか、など詳しく聞きます。

次に診察台に寝ていただいて”生の膝”の所見を取ります。
関節内に液体貯留はあるか。局所に熱感はあるか。膝蓋骨と大腿骨の間に痛みの原因はあるか。タナ(関節内の滑膜ひだ)を押してみて圧痛はないか。
内外側の関節裂隙に圧痛はないか。下腿を左右にストレスをかけて内外側の側副靭帯に緩み、痛みはないか。今度は膝を少し曲げて下腿を前方や後方にストレスをかけて前十字靭帯、後十字靭帯が効いているか見たり、いろいろ所見を取ります。

画像検査をします


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その次にレントゲン検査をします。膝のXpを見て関節裂隙は狭くないか。骨棘はどこにどの程度あるか。大腿骨と脛骨の配列はどうか。骨硬化像はないか、などチェックします。レントゲン検査は基本的な検査ですので妊娠中か、患者さんが同意しない場合以外は実施します。

次にMRIをとります。当院ではおおむね当日にとれます。MRIでは半月板の摩耗の程度、断裂の有無、前十字、後十字靭帯の損傷の有無など確認します。また大腿骨、脛骨内に骨髄内病変はないか(あると変形性関節症の程度が上がる)。関節液は増えているか、滑膜の増生はあるかなど、MRIでは膝関節のすべての構成要素が描出されるので非常に詳しく評価できます。

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関節液の性状を確認することも膝痛を来す疾患の鑑別に有用です。しかし針を刺すことに抵抗がある患者さんには実施しません。

変形性膝関節症と診断されれば、内服薬、外用薬を処方し、リハビリテーション(運動器リハビリテーション)の指示をPT宛てに出し患者さんにはリハビリ室に回っていただきます。何回か通って頂いて痛みが軽減しないようなら、ヒアルロン酸の関節内注射を併用します。(週1回、5回まで)
基本的にはリハビリが一番重要であり、膝は体重を支え、場合によっては体重の4倍以上の重量を支えますのでとりわけ大腿部の筋力と膝周りの靭帯のバランスが重要です。そのためのリハビリということになります。
ホームエクササイズ(自主トレ)も大変重要です。PTが直接指導したり、我々もパンフレットをお渡ししてご説明したりします。

手術治療

外来での保存的な治療でよくならない場合は、厳密な適応基準はまだありませんが、手術治療を考える必要があります。
 高位脛骨骨切り術(H T O )
 人工膝関節手術(T K A )
などです。
両方とも以前、病院勤務の時やらせていただきましたが、難しい手術ではありませんが、T K A は特に血栓症や感染に注意が必要です。
私自身もそうですが、手術はできるだけ受けたくないと考えますので、外来での治療を頑張ります。多くの方が手術に至らないでよくなっていかれます。
外来治療の目標は疼痛軽減による A D L (日常生活上の動作)の改善とフレイル(ロコモティブシンドローム)の予防、介護予防です。
統計上変形性膝関節症の患者さんの7割は病院にかからないというデータがあります。
病院での流れを概ね知っていただければ、その壁も少し低くなるのかと考え、具体的に患者さんの受ける内容と、医師側はどんなことを考えどんな診察や検査を実施するのかなどを、読むのが面倒なくらいに書かせて頂きました。
これはあくまで当院でのことですが、”生の膝”もさわらず検査だけする医師は信頼性に欠けますのでご注意ください。

次稿では膝の診断に大変重要な検査機器である M R I について少しお話ししたいと思います。



テレワークによって増えた肩こり

テレワークにより女性も男性も肩こり、腰痛、精神的ストレスが増えているようです。

整形外科に行ってください

肩こりの種類

肩こりの治療







テレワークにより女性も男性も肩こり、腰痛、精神的ストレスが増えているそうです。


 恐らく、自宅では食卓テーブルなどに向かったり、床に座って PC を操作するためだと思われます。
 この中の肩こり(頸部痛、肩痛、項部痛、)は、整形外科の外来に来られる女性の第一位、男性の第二位の訴えになります。
ですからきちんとした理解が必要になります。
まず患者さんとしては、軽微なものはそのまま様子を見るか、薬局で湿布などを購入し使用してみることと思います。
しかしそれなりに日常生活上の支障が出るようなら、整形外科か、もしかして整骨院鍼灸院などに行かれるかもしれません。


整形外科に行ってください


肩こりの原因疾患の中に red flag と言って直ちに対処しなければいけない疾患が含まれる為、整形外科に行かれるべきと考えます。
Red flag としては,脊髄腫瘍、転移性脊椎腫瘍、化膿性脊椎炎などがあり、安静時痛(体動時痛と対比され、静かにしていても痛みが出現する)
を特徴とします。このような症状がある場合は、すぐ整形外科に行って下さい。


肩こりの種類


近年のスマートフォンの普及、コンピューター業務によるうつむき姿勢時間の増加などで、首への負担が多くなり発症するものと思われます。
見上げる姿勢や上肢を挙上している時間が長い場合も発症しやすいです。
肩こりの原因となる疾患はたくさんあります。これは2つに分けられ
1)機能的障害
いわゆる肩こりです。肩周辺の筋肉、僧帽筋、菱形筋、肩甲挙筋、頸部筋群が緊張し肩甲上角部(肩甲骨の頭側部)に痛みやだるさが出現するものです。
この原因は、①不良姿勢 ②同一姿勢の継続 ③運動不足 ④眼精疲労 ⑤ストレス などです。



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2)器質的疾患
整形外科では、頸椎疾患、肩関節疾患が多いです。その他肺疾患、心疾患、脳、耳鼻科、眼科、歯科などからの肩こりもあります。
この原因としては、変形性頚椎症や椎間板症などの頸椎疾患や肩関節周囲炎や腱板断裂などの肩関節疾患が多くを占めます。


肩こりの治療


いわゆる肩こりに対しては、パソコン業務やテレビゲーム時に背中を丸めた姿勢を極力取らず、定期的にゆっくりと背伸びをしたり、肩関節を回したりの体操をまめにしたり、血流を促したりリラックスの目的で風呂に入ったり、頭部や顔のマッサージをしたり、運動不足の人は軽いジョギングやウオーキングをするなどして自分なりの改善方法を見つけることが大切だと思います。
器質的疾患に対しては、整形外科に行ってレントゲンや MRI , CT などの検査を受け疾患別に適切な、薬物、リハビリ、ブロック注射などを
受けてください。


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肩こり体操は、検索されるとすぐ出てきますので、是非ご自身にあったものを見つけて、実践してみてください。
繰り返しますが、困ったときはお近くの整形外科を受診して下さい。いい先生ならかかりつけ医にして下さい。




参考文献
1)松浦恒明:肩こりの治療、今日の整形外科治療指針:395-397、医学書院、2016.
2)安部洋一郎:頚肩腕症候群(肩こりを含む)、今日の治療指針:1095、医学書院、2019.

骨粗鬆症2

 

 医療機関とは

 治療の開始基準

 治療薬

 

医療機関とは  

 

常日頃、私が強く思っていることは、医療機関とは良質な医療サービスを提供する所であるということです。

別の言葉で言うと、客観的に妥当性のある医学的診療と、患者さん側に一定の満足感がなければ、良質とはいえないであろうと考えます。

その為には、医師の豊富な医学上の知識経験と、他の職員たちの患者ファーストの気持ちが、強く求められるんだと考えます。

 

今まで高齢者と整形外科診療について書いてきましたが、今回は宿題の骨粗鬆症の治療に関して書かせて頂きたいと思います。

要介護、寝たきりの3大原因の一つが、骨折転倒、関節疾患。

さらにその原因は、おおむね骨粗鬆症であります。

日本国内の骨粗鬆症患者の推計は約1280万人、うち女性が980万人、男性が300万人程度と言われています。

女性は閉経、男性は過剰な飲酒、喫煙、糖尿病、腎不全などの内科疾患によるものが多いようです。

高齢者の骨折は、とにかくご本人も、ご家族も大変な状況になり、予後も大変悪いですから、無症状のうちか最初の骨折を発症してからでも、確実に薬物治療を始めるべきです。

55歳以上の女性、65歳以上の男性は、骨密度検査であるDEXA法を受け 、BMD (Bone Mineral Density) が YAM (Young Adult Mean) の70%以下なら、骨粗鬆症として治療開始すべきです。

 

治療の開始基準

 

原発性(他に原因となる病気がないもの)と、続発性(他に原因となる病気があるもの)で、少し違います。

 

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 上記の表は、原発骨粗鬆症フローチャートですが、大腿骨近位部骨折か椎体骨折があれば、即薬物治療。

その他の脆弱性骨折があり、BMDがYAMの80%以下なら治療。脆弱性骨折がなくても、70%以下なら治療開始です。

 続発性骨粗鬆症の開始基準は少々複雑ですが、ステロイド骨粗鬆症以外は、明確な基準はまだありません。少なくとも原発性に準じてよいものと思います。

 

治療薬

 

治療薬を下の表に示しました。

 

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骨密度上昇作用や骨折予防効果から見て、よく使われるのは、アレンドロン酸、リセドロン酸、デスノマブであります。前2者は、内服薬であり後者も6か月に1回の注射剤です。ただ3剤とも顎骨壊死や非定型骨折(大腿骨の転子下が骨折を起こしやすくなるという副作用)の問題があります。

副甲状腺ホルモン薬は骨密度上昇効果は一番強いのですが、高価で特有の副作用があったり、非椎体骨折や大腿骨近位部骨折への予防効果が不透明であったりして、第一選択にはしにくいところがあります。

医師は、上記の薬からその人に合った薬を(可能なら採決データを見てから)選択します。その後定期的に概ね4~6か月おきに骨密度検査、採血などを実施し経過を見ていきます。もちろん目標は骨折予防です。ですから、食事や運動なども非常に大切です。

 

20歳前後に人々は、最大骨量に達します。故に若い頃からのカルシウム分の多い食事、継続的な運動、喫煙せず飲酒もほどほどにの、生活習慣が非常に大切であると思います。

 

皆さんも一度、骨密度検査を受けてみて下さい。

 

 

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気象病

 天気痛

 治療は?

 私をいじめないで

  

 

遅い梅雨明けの後の酷暑。そして彼岸前の急激な気温低下。秋雨前線の活動が原因しているのか、整形外科外来に来られる患者さんで、体の不調を訴える方が非常に多くなった気がします。

整形外来の患者さんは、私の経験上、元々季節や天気の変化に伴って、体の不調を訴える方が、非常に多い印象があります。

しかし、今年は特別です。コロナの影響もあり、体調管理が大変難しくなっているのかもしれません。

 

天気痛

 

この天候によって体の変調を来す病気を、気象病、今は天気痛とも言われるようです。

腰痛、肩こり、神経痛、関節痛、リウマチの症状などの整形外科的な症状以外に、メニエル病、喘息、めまい症、うつ病、頭痛、蕁麻疹なども出現や悪化したりする原因になる疾患、症状群です。

どうも症状群のようで、様々な疾患を含んでいる病名のように思え、単一のメカニズム、病態を追求するのはなかなか難しそうに思えます。

しかし、天気痛の第一人者である、愛知医科大学の佐藤先生方が、 内耳の前庭気圧のセンサーがあることを、世界で初めて見つけられました。

台風が発生すると気管支喘息の発作が起こる。

春先になると精神疾患の患者が増える。

天気が崩れる前に体の節々が痛くなるなど、昔から経験的に、気象と体の深い関係には気付いていましたが、やっと研究の緒に着いたものと思われます。

 

治療は?

 

慢性腰痛でも言われるように、イメージとして、慢性的な繰り返しの気象の変化による刺激が脳を変化させ、以前の疼痛が起きていた場所に持続的な痛みを感じ続けさせたり、本来体が疼痛を抑制する仕組みである、「下行性疼痛抑制系」に影響を及ぼしたりするのでしょうか。

 

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全くの私の勝手な考えですが、自律神経のバランスの崩れで天気痛のメカニズムを説明しようともしますが、我々整形外科医にとっては、交通事故の頸椎捻挫(むち打ち症、外傷性頸部症候群)がよく似ていると思います。

頸部には、自律神経がたくさん分布しており、頸椎捻挫の中にバレリュー型という、頭痛、めまい、吐き気などの自律神経症状を呈してくる一つの型があります。

これは見逃すと交通事故の症状を悪化、遷延化させる要因の一つとなります。

もし天気痛が慢性腰痛のような病態があるのであれば、プレガバリンSNRI、三環系抗うつ薬などが効果を期待できるし、自律神経のアンバランスであれば、トフィソパム(グランダキシン)が著効するかもしれません。

 

私をいじめないで

 

整形外来に通っていただいている多くのお年寄りは、体力的に気象の変化に弱く、特に最近の地球温暖化に伴う激しい変動に際し、体調の不良を強く訴えられる方が多く、この為私の体調も少なからず悪化します。

 

昔の日本は四季がちゃんとありましたが、最近は冬と夏しかない印象です。

天候、気象に文句を言っても仕方ありませんが、研究が進み、気象病の方に、少しでもご自身の症状の原因や機序を医学的に説明して上げれれば、いくぶん気が安らぐでありましょうし、薬物治療の余地も少しでも広がっていくことでしょう。

 

我々一線の医師の素直な疑問を、研究テーマにしていただくのは大変ありがたいことですし、今後の研究に大いに期待したいと思います。

 

 

 

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骨折と骨粗鬆症

 子供の骨折

 高齢者の骨折

 

 

今回でブログを始めて6記事目になりますが、一線の整形外科医から見た医療機関内の実際を、できるだけ皆さんにそのままお伝えする目的で、書いております。

一人の医者が何を考え、どういう仕事を実際にしていたのか、その一端でもお伝えできればうれしく思います。

整形外科医になって、約30年になりますが、その間幾つかの種類の医療機関で仕事をしました。まず大学病院。より高度の医療及び研究、教育施設であります。次に中規模の総合病院。地方の基幹病院であり一次救急(とにかく整形外科の患者さんが、まず最初にかかる病院)からより高度な医療を担う二次、三次まで行うことも普通の病院でした。この類の病院は外傷病院と呼ばれます。この外傷病院に私は15,6年勤務しました。

夜間の救急外来や昼間の整形外科外来を経由して入院される患者さんの多くは、骨折の患者さんでした。必然的に骨折の手術は、たくさんありました。

3人の開放骨折(骨折と外界が交通しており、感染しやすい骨折)の患者さんが、別々に救急車で搬送され、一晩で3回手術室で手術したこともありました。この時はさすがにヘロヘロになりましたが、我々外科系の医者は体力勝負なので疲れた顔はできるだけ見せず頑張った覚えがあります。

 

子供の骨折

 

やんちゃな子供が遊具や木から落ちたり、中学生や高校生がスポーツ中に鎖骨や手首、足首を骨折して来院する。

ちなみに、中学、高校生は部活中に半分以上の子が骨折し、種目はバスケットボール、サッカーが多く、小学生は休憩時間が多いようです。

乳幼児の骨折は、上腕骨の顆上骨折や外果、内上顆の骨折が多く、多くの場合入院して手術が必要になります。

手術前の肘周辺の骨折や、大腿骨骨折などは介達けん引(ゴムラバーを患肢に巻き付けて、重錘で引っ張る)がしばらくの期間必要になります。

誰でもそうであると思いますが、子供が泣いたり苦しんだりしているのを見るのは、医者である私もつらい思いになりますし、多くの場合母親も一緒に付き添って頂いて(子供の場合、お願いすることになる)入院生活を送るようになりますので、一家全員が大変な状況になります。

乳幼児の入院、手術に際しては、小児科の協力があると大変ありがたく、小児科がない病院ではなかなか子供の入院手術は難しくなります。もちろん子供の手術は全身麻酔ですので、麻酔科の常勤も必要になります。まさに医療は多科目間、多職種間の共同作業であります。

一つの科目や一人の医者の努力で完結するものでは決してありません。

骨折の痛みは、なった者にしかわからないとよく言いますが、激烈な痛みであることが通常で自分もそうですが家族には決して味合わせたくない類の痛みです。

 

高齢者の骨折

  

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今後高齢化に伴い、統計的に予想すると整形外科の手術は40%増えるそうですが、私が勤務していた当時から病院の整形外科としてよく遭遇したのは大腿骨近位部骨折です。

大腿骨の骨頭から少し遠位にあり骨幹部との間の部位で物理的に弱く、よく骨折をおこします。今は少し違うかもしれませんが入院後スピードトラックといって介達けん引を腓骨神経麻痺に注意しながらしたり、膝下に鋼線を刺入してこれを手掛かりにけん引(直達けん引と言います)したりします。

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要は、けん引しないと痛みが軽減しないからです。それと手術がしやすいように行われます。

 

もう一つご家族も我々も困るのは、入院された当日の夜から患者さんが不穏状態になり昼夜逆転状態になります。骨折の痛みや、動けなくなったり、環境が変わったりの原因からと思われます。

この対策としては、できるだけ早く手術をして早期離床を計るしかありません。

軽くしりもちをついただけでも、お年寄りは骨折します。それを防ぐにはフレイル或いは介護予防のためのリハビリと骨粗鬆症の薬物治療が必要になります。

 

要介護になる3大疾患の一つが、骨折転倒、関節疾患(他は認知症脳卒中)。

要介護になるだけではなく、お年寄りが骨折して入院し安静を余儀なくされると、余病がたくさん出てきて高率に致命的になります。

 

骨粗鬆症の治療というのは、目標が骨折予防であり特に困った症状が今現在あるわけではありませんが、寝たきり原因の多くを占めたり、骨折を起こした時の大きな苦痛や悪い予後を考えれば、様々な薬が備わってきている今日、是非薬物治療を始めたほうが良いと切に思います。

 

 骨粗鬆症の治療に関しては次稿に譲ることとします。

 

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リハビリテーション

 リハビリテーションとは?

 医学的リハビリテーション

 診療所でのリハビリテーションの流れ

 運動器リハビリテーション

 維持期リハビリテーション

 ホームエクササイズ

 まとめ

 

 リハビリテーション(rehabilitation)

ラテン語re(再び) habilis(適した)再び適した状態になること。

本来あるべき状態への回復。

1981年W H Oによる定義では、障害者の社会的統合を促し環境や社会に手を加えることを目的とする、あらゆる手段。

さらには、本人の障害と社会制度や慣習、偏見によって失われた人権を本来のあるべき姿に回復させるのがリハビリテーションである。

とされています。非常に広い概念であります。

 リハビリテーションには、5つの分野があります。

 医学的、職業、社会、教育、工学(リハビリテーション工学)

 

医学的リハビリテーション

 

病気や外傷が原因である障害の機能回復として主に病院や診療所、介護保険事業所などで行われます。

私が深く関与する、医学的リハビリテーションについて、お話したいと思います。

病院、診療所などで実施されますが  PT(理学療法士)、 OT(作業療法士), ST( 言語聴覚士)、柔道整復師、あんまマッサージ師などが直接担当します。

病院で急性期、回復期のリハビリテーションを終えた患者さんも同じですが、診療所に患者さんが来られての実際の流れとしては、

 

診療所でのリハビリテーションの流れ

 

まず診療所で外来医(整形外科か内科)が患者さんを診療し、リハビリが必要であればリハビリ室にいる PT や マッサージ スタッフに向けて指示箋(リハビリ内容を記入した指示書)を書きます。

そして患者さんは、リハビリ室に移動し、 PT などから病歴や身体所見をとられ、体の「評価」を受け生活改善や機能回復に向けて具体的なプランを立てられ、実施されます。再診の時には又、「評価」をしてプランを立て直され、実施されます。つまり、この繰り返しです。

 

運動器リハビリテーション

 

当院の PT の主な仕事は、私が整形外科医なので診療報酬上でいう運動器リハビリテーションになります。

これは、施設基準によりⅠ~Ⅲまであり各々点数が決まっています。

ただ、この運動器リハビリテーションは適応疾患が厳密に決まっており、該当しない場合は、物療(消炎鎮痛)のみで対応せざるをえません。

これに関して、実際に運動器リハビリテーション対象なのにできない場合も多々あり我々に裁量権を認めてもらうと、より充実して意味のあるリハビリが実施できると思います。

なぜなら、外来に多く通われる高齢者のリハビリで一番重要なのは、四肢脊柱の筋力強化と関節の可動域練習などの、運動器リハビリテーションだからです。

 

維持期リハビリテーション

 

運動器リハビリテーションで当初の5か月が終わりまだ必要な場合は維持期リハビリテーションに移行します。これはひと月に13単位までと決まっています。

1単位は20分で通常それ以外に物療の時間が加わります。

リハビリのための再来であっても必ずこの時、医師の診察を受けなければなりません。医師法第20条で「無診察治療」を禁止されているからです。薬の処方も同様です。

 

ホームエクササイズ

 

何十年も整形外科のリハビリを担当していて思うのは、外来に通ってやっていただくリハビリも大切ですが同じくらい大切なのは、ご家庭でご自身でやっていただくホームエクササイズ(自主トレーニング)です。

よくやっていただくのは、開眼片脚起立とスクワットです。

 

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その為には患者さんご自身のモチベーションが何より大切ですし、この意味で認知症の方は、リハビリが全くうまくいきません。

運よく同居するご家族がいて、生活支援や声掛けなど、家庭でのリハビリ環境が良い患者さんほど、効果が上がるようです。 PT を訪問リハビリもかねて家庭の視察に行かせることもあります。

我々が訪問診療もできれば、より良いとわかっていますが、実際は難しいのが現状です。

 

まとめ

 

書き出すとリハビリテーションは非常に多岐にわたりその範囲も広いもので1回のブログではとてもおさまりません。

先ほど述べた維持期リハビリテーションも行政より認められなかった時期があり、当時大変苦労しました。行政側にはもう少し高齢者の外来でのリハビリの重要性を認めてもらい診療報酬上のバックアップをお願いできればと思います。

 

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痛み

 Total painって?

 整形外科での痛みの分類

 痛みの原因は?

 痛みを和らげる体の仕組み

 多様な”痛み”

 

我々人間が、最も避けたいもの、嫌いなものの中の一つでしょう。

私は整形外科医ですので、仕事上も一番患者さんのご相談を受ける症状であります。今回は、様々な”痛み”の概念がある中、整形外科と”痛み”について一緒に勉強してみたいと思います。

 

Total painって?

 

痛みの概念を理解する上ですごく役立つと思われる total pain

という 言葉があります。

これは、がんなどの緩和医療から出てきた言葉ですが、

1)身体的な痛み

2)精神的な痛み

3)社会的な痛み

4)Spiritual pain

によって構成されます。

1)は、まさに整形外科に来られる理由となる症状ですが、外来に来られる患者さんの訴えの順番は多い順に男性 ①腰痛 ②肩こり  女性 ①肩こり ②腰痛 ③手足の関節痛 です。

2)は、不安、いらだち、孤独感、恐れなどからくるものを指します。

3)は、仕事上の問題、経済上の問題、家庭内の問題、人間関係からくるもの。

4)は、宗教的、哲学的な悩みからくるもの。

  

つまり、痛みとは、人間の感覚(痛覚)以外に精神的な強いストレス、社会的な様々な問題、宗教的哲学的苦悩など様々な原因で自覚する不快な感覚的かつ情動的体験ということになります。

つまり、人間の体に起こるすべてには、感覚と情動(精神)が関係しており、これらが原因となって”痛み”が生まれるということだと思います。

 

整形外科での痛みの分類

 

整形外科では痛みを3つの種類に分けます。

 

1)侵害受容性疼痛

切り傷、骨折などの外傷や関節リウマチ、変形性関節症などの炎症が原因で末梢神経が痛みを感知します。

2)神経障害性疼痛

坐骨神経痛などのように神経自体が障害されて起こります。

3)心因性疼痛

持続する疼痛で脳などが感作されて生じます。

 

これらが混じりあった症状を訴えて患者さんは外来に来られます。

 

 痛みの原因は?

 

実際の外来での治療において、患者さんが初めて来られて、どこそこに痛みがあると言われた時、それが整形外科的な痛みなのか内臓などの痛みなのか判断するのに大切な事は、それが自発痛なのか運動痛(体動時痛)なのかという事です。

例えば、胸痛です。もし体を動かすときや深呼吸時に主に痛むのであれば、肋骨や筋肉など胸郭の症状ですが、もしそうではなく安静時に主に痛むのであれば、心臓や肺など内臓の症状と考えるべきであります。

 

それから、強い背部痛や腰部痛は大動脈瘤も考えるべきであり、じっとしていられないような、腰部、側腹部痛は尿路結石も考えるべきであります。

動脈瘤心筋梗塞は決して見落としてはいけません。(red flag といいます)

 

痛みを和らげる体の仕組み

 

痛みに関しては、人間の体にもともと和らげる仕組みが備わっています。(下行性疼痛抑制系)。

実際には、うつ病に使っていた薬にこの抑制系を賦活する作用があり、これらの薬を第一選択にすることもあります。

この下行性疼痛抑制系以外にも、自らの痛みを抑制する仕組みが人間の体には備わっています。

 

多様な”痛み”

 

英語では、pain , hurt , ache , sore , いろいろな言葉があります。

日本語でも、痛み、疼痛、苦痛、傷み、悲哀、いろいろな表現がありますように、”痛み”と一言で言っても様々な意味があります。

整形外科の外来に来られる患者さんは、体の一定の部位の痛みを訴えてこられますが、その背景には total pain の項で述べさせていただいたように様々な原因が合わさった症状であるということを、我々はいつも忘れないでいたいと思います。

 

「病気を見ないで、人を診ろ」と昔から言われますが、すべての症状には、感覚と情動(精神)が関係しているということを決して忘れないように、今後も患者さんを拝見していくつもりです。

 

 

 

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私と介護保険

我々ほぼ全員が直面することです

介護サービスの必要性

ケアマネージャー

要介護認定を勧める

介護保険導入後20年、導入前後で変わったこと

今後の課題

 

研究職や管理職で一線から遠ざかっていた医師と違い、叩き上げの臨床医として介護保険とかかわってきた者として少しお話したいと思います。

 

我々全員が直面することです

 

日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳、健康寿命は男性72歳、女性74歳。ということは、各々9年、13年の介護を要する期間が誰にでも発生してくるということです。

この期間を居宅で過ごすのか、施設で過ごすのか、人によって考えは様々かもしれません。

 

介護サービスの必要性

 

 在宅医療の従事や介護施設での勤務の経験はあまりないので、直接的な介護保険とのかかわりは少ないですが、外来の患者さんが年齢とともに介護の必要性が高まっていくにつれ、介護保険がその顔を見せるようになっていくのを実感します。

 実際70~80歳位の患者さんで、変形性膝関節症や腰部脊柱管狭窄症などを患い外来に通って内服薬、注射、リハビリ治療などをつつ”けておられる方の中に、徐々に身体のフレイル化(私のブログ参照)に伴い、歩行機能や日常生活上の行動範囲(ADLといいます)が低下していって、通院が次第にむつかしくなっていかれる方が出てきます。実は、残念ながら我々が治療させて頂いていても、こういう例は少なくなく、途中からデイサービスなどの通所介護サービスなどの導入がどうしても必要になってきてしまいます。

つまり、家庭内に引きこもらず、定期的に施設に通所すること自体がリハビリ(生活リハビリ)であるという考えにもとつ”いています。

 

ケアマネージャー

 

私の記憶では正式に介護保険が始動したのは、2000年4月だったと思いますが、この時の行政よりのアナウンスとしては、

1)家庭内での大変な介護の苦労をなくして入所、通所などの介護サービスで家族介護の肩代わりをします。

2)民間の介護サービス事業を大規模に創生し一大産業を興します。

だったと思います。

利用者(患者)さんの介護プランを立てるのがケアマネージャーですが、この介護保険開始が原因で、私が当時勤務していた病院から業務命令の形で、ケアマネージャーの資格取得を指示されました。

当時私は、地方の基幹病院である総合病院に勤務しており、忙しい診療の合間をぬって受験勉強するはめになりました。

まともに勉強などできずに試験に臨みましたが、運よく合格。

同僚の先生の中には何人も不合格になる方々がいて、肩身の狭い思いをされていたことが、つい昨日のことのように思い出されます。

実際の仕事上でケアマネージャーの資格を使ったことは一度もありませんが、この時の知識は、大いに役立っていると思います。

 

要介護認定を勧める

 

実際の外来でフレイルから要介護状態になっていくと思われる患者さんには、こちらからご本人やご家族に要介護認定の申請を、早めにおすすめします。そうしておおよその今後の流れをご説明します。

行政側も積極的に医療保険でのリハビリから介護保険を使ってのリハビリへ転換するよう診療報酬上も強く誘導しています。

例えば、要介護認定を受けている患者さんが医療保険での外来リハを利用すると5か月間以降は診療報酬上の点数が半分近くに減らされます。

又、この際3か月に一度管理料を算定する際、面倒な書類作成やカルテ記入を課せられます。

 

介護保険導入後20年、導入前後で変わったこと

 

高齢化の進展に伴い、要介護高齢者の増加、介護期間の長期化などで介護ニーズは増大。

核家族化の進行、介護する家族の高齢化など、多くの理由で介護保険制度が導入されたものと理解していますが、その後はどうなっているのでしょう。

例えば多くの疾患を抱え、医療の介入が必要な要介護度の高い患者さんは、現在介護の選択肢がかなり少ない状況ではないでしょうか。

専ら入所の選択肢となる、特別養護老人ホームなどはいつも満員状態であるし、サービス付き高齢者住宅は、費用や入居後のトラブルなど考えられるし、介護療養型病床群は廃止予定で、介護医療院は数が少ない。老健は基本的に中間施設であります。それに地方に住んでいるとよけいに選択枝が少なくなります。

 

じつは今現在、私の外来にこういう患者さんの奥さんが通院中であり、この方も要介護状態であります。

いつもsilver carで通ってこられ、この奥さんも既にかなり前から介護サービスを受けるべき国民の一人であります。

地方は、多世代同居が多いのですが、このような老老介護も珍しくはありません。

果たしてこれで40歳から介護保険料を払って利用時には1割~3割の自己負担料を払って不本意な介護サービスを利用しつつ”ける意味があるのでしょうか?

行政側は別として、国民一人一人から見たら20年たって本当に介護保険を導入してよかったと思えるでしょうか。

 

今後の課題

 

高齢者人口の増加や家族構成、家族関係の変化に伴い地域(特に地方)において、施設在宅での要介護者への支援がより不足してきているように思われます。

「自立支援」や「介護予防」とうたっても、在宅で支えきれずに「老老介護」「認認介護」「孤独死」の問題が出てくるものと思われます。

 

行政は、地域包括ケアシステムの拡充を目指しているようですが、人口減少とその逆の高齢化率の上昇を認める地方の地域で果たして、地域包括ケアシステムがちゃんと機能するでしょうか。

医療行政に関しては素人の私ですが、外来に通ってこられる患者さんに毎日接してみて、現状の介護保険は矛盾が多いように見えます。

 

若い時必死に働いて、当時の日本を支えてこられた高齢者をお金がかかるだけの厄介者としてみたり、逆に若ければどんな人間にも言いたいことも言わずチヤホヤするような風潮は、全く許せません。

高齢者に優しい社会であってこそ、すべての人にとって住みやすいと感じる社会になると強く信じています。

 

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個別指導2

 

 学習塾ではありません

 指導の種類は

 高点数?

 どうして指導日直前なの?

 指導会場での実際

 自主返還とは?

 個別指導の実施は控えてください

 個別指導後に自殺した医師が多数います

 個別指導の在り方

 

学習塾ではありません  

 

 一般の皆さんは、個別指導と言うと学習塾を思い浮かべるでしょうが、我々医師にとってはかなり特別な意味を持つ言葉であります。

また、医師でも病院勤務の医師はあまり経験することはないでしょう。

保険診療は、「公法上の契約」に基ずく契約診療ですから、医師法、医療法、健康保険法、療養担当規則及び診療報酬点数表等を遵守しなければなりません。そのため、保険制度が円滑に運用されるように行政機関によって行われる行政指導のことを、保険医療機関への「指導」と言います。

 

実際我々が、患者さんを診療して得られる診療報酬は、「レセプト」として、社保、国保などに請求されます。それらの一部には国民の税金が充てられるわけであり公権として個々の医療機関を調べるのは当たり前といえるかもしれません。

 

指導の種類は?

 

我々が経験する指導は主に2つ、 集団指導と個別指導です。

集団指導とは年1回、ホテルの大ホールや講堂に医師会員としての開業医が集まり厚生局と医師会が共同で講習会形式で90分~120分行われます。我々は診療終了時間を繰り上げて、会場に駆けつけます。ここでは保険診療を行う上での法令やカルテの書き方、レセプトの請求方法などが講義されます。

 

高点数?

 

個別指導は全然違うものです。対象となるのは、

1)患者や支払機関より情報提供があった医療機関

2)再指導となったもの

3)高点数の医療機関

です。実際には3)が多いようです。

つまり1件当たりのレセプトの平均点数の1.2倍、上位8%が選ばれます。(と、言われています)

ただ、知り合いの開業医が言っていましたが、

1)院長とは別の診療科目の専門医が外来を持っていたりすると、専門医として検査や院内処方薬が増える。また

2)院内処方であれば、薬の点数の分上積みになる。

3)診断精度の確保のため高額な検査機器を導入していれば、その分高くなる。

など、全く合理性のない基準であります。

 

どうして指導日直前なの?

 

個別指導日は、1か月前に突然厚生局より通知が来て、勝手に期日を指定されます。又、この時は診療録を持参するわけですが、個別指導日の1週間前に20冊、前日に10冊、先方より指定されます。(なぜ直近に通知されるのであろうか。)

 

個別指導は指定された会場に我々が出向いて行われます。酷暑の中、車で2時間かけて県庁所在地に行き、会場近くの駐車場から台車で山ほどある資料の入った段ボールをたくさん、会場まで頑張って運びました。

 

個別指導は、控室の隣のあまり広くない部屋で行われました。構成は一定ではありませんが、我々保険医、事務長、と先方は、指導医療官(医師)2名、事務官2名、立会人(地区、都道府県医師会の担当理事など)1~2名などで行われます。

 

指導会場で実際行われること

 

まず事務官が、健康法第73条、国保法第41条、高齢者医療確保法第66条、などに基ずき実施される個別指導である旨宣言し開始されます。

その次、各参加者が自己紹介し、その後事務官が事務的な事柄を質問した後、いよいよ指導医療官によるレセプトとカルテを突き合わせながらの質問、指摘等の指導が行われます。詳細は専門的になりますので省きますが、指導医療官は専門と思われる分野に関して直接的に辛辣に詰問してきます。

反論があれば、こちらもあまり遠慮せずに反論し、なければ指導内容を神妙に拝聴します。ひとしきり終わったら一旦休憩に入りその後、行政側からその日の講評内容をまとめて、口頭で伝えられ、後日文書を正式に送付されます。

 

自主返還とは?

 

自主返還金を強制される場合もあります。

統計によりますと指導、監査によるものは年間100億円近くに達します。

「診療報酬請求の契約の当事者は保険者と医療機関であり、厚労大臣には当事者性がない。また、診療報酬の審査も保険者の権限であり厚労大臣の関与する事項ではない。」

「 このような法律上の原則があるために、自主返還として診療報酬の返還は、保険医療機関が任意に行う形式がとられている。」

と主張する団体もあります。

つまり、個別指導も自主返還も厚労省に権限はないと主張しているのです。

 

 個別指導の実施は控えて下さい

 

私の知人が話していましたが、COVID-19がまだ蔓延している状況での開催に際して、もし開業医が感染したら確実に休院か閉院に陥るであろうことを考えれば、行政側の危機意識がCOVID-19への感染対策と同様に全く感じられないと憤慨していました。

某保険医協会は実際に厚生局に対し個別指導の本年内の実施はしないよう強く要請しています。

 

個別指導後に自殺した医師が多数います

 

この個別指導の後に自殺した医師が過去に多数存在しますし実際の個別指導時にも指導医療官より人権人格を無視した言葉を投げつけられる場合も多々あります。他方この指導医療官による刑法事案も多数存在するということも忘れてはいけないと思います。

 

個別指導の在り方

 

そもそも、保険診療契約は、我々保険医が患者たる被保険者に療養を給付し、被保険者は保険者(社保、国保など、)に保険料を支払い、保険者は保険医に診療報酬を支払うという三面契約であり、そのために各種法律や規則があり、2年ごとに改定される診療報酬点数表によって細かく定められています。

このような制度が適正かつ円滑に運用されるためには、保険診療及び診療報酬請求のルールが周知徹底されることが必要であり、そのためにこそ指導という制度の存在意義があると思います。

にもかかわらず、指導が監督官庁の示威行為や返還金目的或いは、高点数抑制などの為に実施されるなら、その存在意義は全く失われるものと思われます。

厚生局担当者と我々保険医が相互理解に基ずき、建設的前向きな意見を双方向にかわし、かつ中立公平な第3者の立会いの下、オープンな形で(録画録音も自由に)開催されるよう、少しずつ改善していくべきであると思います。

 

とは言いましても、酷暑の中或いはCOVID-19感染リスクのある中集まられた、立会人の先生方や指導医療官、事務官の方々に対し厚く御礼申し上げます。

 

 

 

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