ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

高尿酸血症

日頃外来で患者さんを拝見していると、高尿酸血症の患者さんを多く見かけます。

この中で高尿酸血症による痛み発作を起こしたことのある人が、痛風患者さんということになります。

痛風というとすぐ食事の偏りと思いがちですが、実は食事より遺伝的な寄与が大きいということがわかっています。

Research
血清尿酸値に対する食事全体の寄与の評価:集団ベースのコホートのメタ分析
BMJ 2018 ; 363 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.k3951 (2018 年 10 月 10 日公開)

米国からの横断的データの設計メタ分析
データソース5 つのコホート研究
レビュー方法 米国出身のヨーロッパ系 16,760 人 (男性 8,414 人、女性 8,346 人) が分析に含まれました。対象者は 18 歳以上で、腎疾患や痛風がなく、尿酸値を下げる薬や利尿薬を服用していません。

結果 7 つの食品 (ビール、酒、ワイン、ジャガイモ、鶏肉、清涼飲料、および肉 (牛肉、豚肉、または子羊)) が血清尿酸値の上昇と関連し、8 つの食品 (卵、ピーナッツ、男性、女性、または完全なコホートで、冷たいシリアル、スキムミルク、チーズ、黒パン、マーガリン、および柑橘類以外の果物)が、血清尿酸値低下と関連していました。健康的な食事のガイドラインに基づいて作成された 3 つの食事スコア(DASH、Mediterranean、Healthy Eating)は、血清尿酸値と逆相関し、4 つ目のデータ主導の食事パターンは血清尿酸値の上昇と正の相関がありましたが、それぞれ血清尿酸値の分散の 0.3% 以下を説明していました。対照的に、血清尿酸値の変動の 23.9% は、一般的なゲノム全体の単一ヌクレオチド変動によって説明されました。

一方発がん性がわかっているにもかかわらず、アルコール愛好家もたくさんおられます。アルコール特にビールの尿酸上昇作用は以前よりいわれていますが、アルコールの種類と尿酸上昇作用の程度はどうなのでしょうか。

JAMA Netw Open. 2023年3月; 6(3): e233398.
オンライン公開 2023 年 3 月 17 日。 doi:  10.1001/jamanetworkopen.2023.3398
PMCID: PMC10024203
PMID: 36930152
標準化されたエタノール含有量を使用した、アルコール飲料の種類と血清尿酸値との関連の違い

聖路加国際病院の福井 翔氏らが、日本人7万8,153人の健康診断データを用いて横断研究を実施した結果、飲酒量をエタノール含有量で統一した場合、ビールでの血清尿酸値上昇は大きく、ワインや焼酎では中程度の上昇、日本酒での上昇はわずかで有意ではなかったことが示されました。

高尿酸血症がある人がどうしてもお酒を飲むのであれば、参考にしていただきたいと思います。

尿酸値が7.0mg/dLを超える高尿酸血症患者のうち、痛風発作を起こすのは約1割。残り9割は無症候性ですが、痛風以上に心配すべきは合併症で、高尿酸値は心血管代謝疾患発症のリスク因子となります。高尿酸値と各疾患の関連は数多く報告されていますが、合併症のない日本人の無症候性高尿酸血症患者を対象とした5年間のコホート研究では、男女問わず高血圧、脂質異常症、CKDの発症リスクと関連したほか、男性の肥満、女性の糖尿病の発症リスクと関連したことが明らかになっています。

尿酸が血中に溶けることができる限界濃度は7.0mg/dLで、それ以上に尿酸値が高まると関節だけでなく、全身の細胞内に取り込まれて臓器障害を引き起こします。

 

遺伝的寄与が大きいとはいえ、高尿酸血症・痛風の方は食事もアルコールも十分気を付けるべきでしょう。