ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

経口抗ウイルス薬「モルヌピラビル」

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案の定オミクロン株が激増して新たな不安材料になっています。我々は少し前の感染者数の激減に根拠のない自信を持ってしまい、対策がおろそかになっていたかもしれません。筆者が何度もお書きしているように、政権と官僚の不作為でワクチン3回目接種がかなり遅れています。そうすると治療薬特に経口内服薬に期待せざるを得ません。そんな中、新型コロナウイルス感染症の患者を対象とした経口抗ウイルス薬「モルヌピラビル」(販売名:ラゲブリオ®カプセル200mg。以下「ラゲブリオ」という。)について、令和3年12月24日に新型コロナウイルス感染症の治療薬として特例承認されました。

今回はこの経口抗ウイルス薬「モルヌピラビル」について少し書かせていただきます。

 

事 務 連 絡
令和3年 12 月 24 日
都 道 府 県
各 保 健 所 設 置 市 衛生主管部(局) 御中
特 別 区
厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部
医薬・生活衛生局総務課

新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬の医療機関及び薬局への配分について

1 ラゲブリオ(以下「本剤」という。)は、現状、安定的な供給が難しいことから、
一般流通は行わず、厚生労働省が所有した上で、対象となる患者が発生した又は発生
が見込まれる医療機関及び対応薬局(令和3年 11 月9日付け事務連絡「薬局におけ
る新型コロナウイルス感染症の経口治療薬の配分に係る医薬品提供体制の整備につい
て」に基づき都道府県から提出されたリストに掲載された薬局をいう。以下「11 月
9日事務連絡」という。)(以下総称して「対象機関」という。)からの依頼に基づ
き、無償で譲渡することとしたものです。

2 本剤の効能・効果は「SARS-CoV-2 による感染症」であり、添付文書において「臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2 による感染症の重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。また、本剤の投与対象については最新のガイドラインも参考にすること。」などとされています。
さらに禁忌として「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」などには投与しない
こととされていますので、十分に注意してください(以下参照)。
<参考:本剤の添付文書(抜粋)>
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 妊婦又は妊娠している可能性のある女性

4.効能又は効果
SARS-CoV-2 による感染症
5.効能又は効果に関連する注意

5.1 臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2 による感染症の重症化リス
ク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。また、本剤の
投与対象については最新のガイドラインも参考にすること。
5.2 重症度の高い SARS-CoV-2 による感染症患者に対する有効性は確立していない。

6.用法及び用量
通常、18 歳以上の患者には、モルヌピラビルとして 1 回 800mg を1日2回、5日間経口投与する。
7.用法及び用量に関連する注意
SARS-CoV-2 による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始すること。臨床試験において、症状発現から 6 日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。

添付文書に記載の「重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられ
る患者」の考え方としては、
①日本感染症学会の「COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 11 報」(2021 年 12 月24 日)の以下の記載
・61 歳以上
・活動性の癌(免疫抑制又は高い死亡率を伴わない癌は除く)
・慢性腎臓病
・慢性閉塞性肺疾患
・肥満(BMI 30kg/m2 以上)
・重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患又は心筋症)
・糖尿病
・ダウン症
・脳神経疾患(多発性硬化症、ハンチントン病、重症筋無力症等)
・コントロール不良の HIV 感染症及び AIDS#
・肝硬変等の重度の肝臓疾患
・臓器移植、骨髄移植、幹細胞移植後
# ここでのAIDSは免疫抑制された病態(CD4リンパ球数が200/mm
3以下、HIV RNA量が100,000copies/mm3以上等)を指す。

 

なお日本感染症学会のサイトには以下のように続けられています。

1) 重症度の高い SARS-CoV-2 による感染症患者に対する有効性は確立していない。なお、重症度が高いとは、概ね中等症Ⅱ以上が該当すると考えられる。
2) SARS-CoV-2 による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始すること。臨床試験において、症状発現から 6 日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。
3) 新型コロナウイルスワクチンの被接種者は臨床試験で除外されているため、ブレイクスルー感染での重症化予防等の有効性を裏付けるデータは得られていない。
4) 動物での非臨床毒性試験において、胎児の体重減少、流産、奇形等の影響が報告されている。妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。また、授乳婦については、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。尚、臨床試験では参加者に対して、服用中及び服用後 4 日間の避妊を行い授乳を避けることが指示されていた。

 

COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 11 版
(2021年12月24日)
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_211224.pdf

 

有効性にやや心配がありますが、武器は多い方がいいと思います。