おはようございます。
オミクロン株が予想通り急拡大している今日この頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
今回も面白い研究をご紹介します。
SCIENCE ADVANCES
母体の化学信号は、乳児と成人の脳と脳の同期を強化します
10 Dec 2021 • Vol 7, Issue 50 • DOI: 10.1126/sciadv.abg6867概要
母体臭は重要な安全促進および社会的認識信号として機能しますが、人間の脳の成熟におけるそれらの役割はほとんど知られていません。生態学的パラダイムと二重脳波記録を利用して、母親の体臭の有無にかかわらず、乳児と母親および乳児と見知らぬ人の相互作用中の脳と脳の同期に対する母親の化学信号の影響を調べました。
乳児は、母親の化学信号状態において、より社会的な注意、積極的な覚醒、および安全/接近行動を示しました。これは幼児と見知らぬ人の神経同期を増強しました。人間の母親は、脳間メカニズムを使用して乳児の社会的脳を調整し、化学信号は、乳児の社会性の母子の絆から社会的集団内の生活への移行を維持する可能性があります。方法
A)実験開始前の準備として、参加者の母親に、コットン100%のTシャツを実験開始日の前々夜および前夜に着用してもらい、瓶の中に保管した上で実験日当日に持参してもらった。
B)37組の母子の頭にそれぞれ17本の電極を付け、背中合わせに60秒以上座らせた状態と、対面で自由にやりとりを行う状態の2パターンで脳波を測定した。
C)51人の乳児と見知らぬ女性を対面で座らせて脳波を測定した。この見知らぬ女性は、研究に参加した母親たちと年齢が近く、また、研究に参加した乳児の年齢範囲と同じ月齢の子どもを持っていた。乳児のそばには、未使用のTシャツと、乳児の母親のにおいが染み込んだTシャツを順に置いた。
結果・考察
脳活動の同期率は、対面でのやりとりのときの方が背中合わせで座っているときよりも高いことが判明した。乳児と女性の脳活動の同期率は、未使用のTシャツをそばに置いた場合は低かったが、母親のにおいの染み込んだTシャツをそばに置いた場合には、母親と対面しているときと同程度に高まることが明らかになった。
この研究結果は、国を問わず、さまざまな形で影響を与える可能性がある。例えば、母親のにおいがついたアイテムがそばにあることで、子どもは母親がそばにいなくても他人とうまく同調できるかもしれない。
乳児は母親のにおいが近くにあると、見知らぬ人とも安心してやりとりができた。
この結果は、乳児にとっては母親のにおいが何よりの安心材料であることを意味しているのではないかと思う。通常、乳児は母親と過ごす時間が最も長く、母親のにおいは、乳児にとっては顔や声と同じくらい馴染み深いと考えられる。
この研究で選んだ生後7か月の乳児は、このころから対面での社会的交流をし始めるといわれており、乳児の最初の社会性である母子の絆から、社会的集団内の生活への移行へ発展する可能性があります。
こういう結果から見ても、我々父親は子供の発達にはあまり役に立っておらず、母親と子供の関係に、ほんの僅か協力するだけなのだと改めて思い知らされました。
視覚や聴覚に加え嗅覚も子供の発達に大きな影響を与えるという興味深い研究でした。
今回も最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。