幼児と定期的に読むことは、最適な脳の発達と対人関係に貢献し、それによって生涯続くさまざまな認知的および社会的スキルを促進します。(1)
本の読み聞かせは、幼児の認知的、感情的、社会的発達を促進するために根本的に重要です。(2)
広範な文献は、共有された読書体験が社会的機能の発達に積極的に貢献することを示唆しており、後の子供時代の読書への関心に大きく貢献していることを示しています。(3)
様々な研究結果から、米国小児科学会は、出生後できるだけ早い共有読書を推奨しています。(1)
この「本の読み聞かせ」に関して、最近の日本の研究をご紹介します。
童話を読んでいるときの子供の脳ネットワークに対する親しみやすさの影響:脳磁図研究
NeuroImage
241巻、2021年11月1日、118389
https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2021.118389
新たに開発された子ども用の脳磁計を用いて脳活動を計測しました。
研究の対象は、4~10歳の発達障害のない子ども15人(平均月齢89.60±19.82月、女児が4人)。自分の母親に本を読み聞かせてもらう時(母親条件)と、見知らぬ女性に読み聞かせてもらう時(他人条件)の2つの条件で、脳活動を計測しました。
また、行動面の反応を評価するために、ビデオカメラで子どもの表情を撮影しました。
その結果、母親条件では他人条件に比べて、アルファ帯域の脳内ネットワークの強度が脳全域で有意に強くなることが明らかになりました。また母親条件では、効率的な脳内ネットワークが形成された状態を表す「スモールワールド性」が向上することも示されました。
行動面の反応については、母親条件では他人条件に比べて、子どもの集中度が高く、ポジティブな表情(例えば笑顔)を見せる頻度が高いことも分かりました。また、それら行動面の評価結果は母親条件でのみ、脳磁計で把握された脳内ネットワーク強度、およびスモールワールド性と有意に相関していました。
子どもの主な介護者である母親が読み聞かせをすることによって、子どもが快適でリラックスできる状況を作り、脳内ネットワーク強度を高め、スモールワールド性を作り出すことができると結論しています。
そうであれば、最適な脳の発達と対人関係に貢献し、それによって生涯続くさまざまな認知的および社会的スキルの促進を、母親が読み聞かせることで達成できることでしょう。
でもこの時父親はどうなのか、是非とも知りたいと思います。
参考文献
1)リテラシーの促進:プライマリケア小児科診療の不可欠な要素 幼児期の評議会
小児科2014年8月、 134 (2)404-409; DOI:https://doi.org/10.1542/peds.2014-1384
2)言語発達の予測因子としての母親のコミュニケーション行動と相互作用の質:話すのが遅い幼児のコミュニティベースの研究からの発見
初版: 2017年12月7日 https://doi.org/10.1111/1460-6984.12352
3)絵本を読む際の母親の認知状態動詞の使用と子供の心の理解の発達:縦断的研究
初版: 2007年7月19日 https://doi.org/10.1111/j.1467-8624.2007.01052.x