ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

薬剤誘発性高血圧

f:id:hiro_chinn:20211230092755p:plain

 

厚生労働省が3年ごとに実施している「患者調査」の平成29年(2017)調査によると、高血圧性疾患の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は993万7,000人。

性別にみると、男性431万3,000人、女性564万3,000人で、前回調査に比べて男性が13万7,000人、女性が3万3,000人の減少となりました。
推計患者数(この調査を行った日に全国の医療機関で治療を受けたと推測される患者数)をみると、外来が64万6,900人に対して入院は5,600人という結果でした。

しかし、平成29年度(2017)の国民医療費は43兆710億円で、前年度の42兆1,381億円に比べ9,329億円、2.2%の増加という結果になりました。
このうち、高血圧性疾患の医療費は1兆7,907億円でした。
高血圧性疾患(高血圧性心疾患および心腎疾患、その他の高血圧性疾患)による死亡数は9,567人で、高血圧症が関連する脳血管疾患による死亡総数は、1億9,880人でした。

 

このように高血圧症は、重大疾病の一つです。

 

2021年11月 22日
米国における高血圧症の成人の血圧を上昇させる可能性のある薬の有病率
JAMA Intern Med. Published online November 22, 2021. doi:10.1001/jamainternmed.2021.6819
 https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2786014

 

高血圧患者の5人に1人近くが、血圧をさらに上げてしまうことのある薬剤を、意図せずに服用している可能性のあることが報告されました。米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのTimothy Anderson氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に11月22日掲載されました。

血圧上昇の副作用のある薬が、チェックされないまま長年使い続けられていることが少なくないとのことです。

この研究は、2009~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを解析するという手法で行われました。その結果、高血圧の成人の18.5%が、血圧上昇作用のある薬を服用していることが明らかになりました。そのような薬剤の中で使用頻度の高いものとして、例えば“痛み止め”として知られる非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が挙げられ、そのほかにもステロイド製剤、抗うつ薬、充血除去薬、抗肥満薬などが高血圧患者に長期間使われていました。

 

薬剤誘発性高血圧
奥山由紀  梅村 敏
横浜市立大学医学部病態制御内科学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/46/3/46_312/_pdf/-char/ja

f:id:hiro_chinn:20211230091855p:plain

 

NSAID、ステロイド、抗うつ薬などは、整形外科領域で非常に多く使われます。

実際ステロイドはわかっていてどうしても使わざるを得ないことも多く、この副作用は我々医療者側も患者さんも、十分に注意していく必要があると強く思いました。