ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

認知症リスク

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「認知症」とは,「いったん正常に発達した知能(脳)に何らかの原因で記憶・判断力などの障害が起き,日常生活がうまく行えなくなるような病的状態」を言います。
原因としては「アルツハイマー病」や「脳血管障害」によるものが多く,高齢者の方に多く見られますが,単なるもの忘れとは違って,れっきとした脳の病気です。

認知症の理解
茨城県 ホームページ
https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/chiiki/ninchi/ninchishou.html

認知症の主な初期症状
同じことを何度も言ったり,聞いたりするようになった
置き忘れやしまい忘れが目立つようになった
蛇口の閉め忘れやガスの消し忘れが目立つようになった
これまでの日課をしなくなった
以前はあった興味や関心がなくなった
時間や場所の感覚が不確かになった
物の名前が出てこなくなった
だらしなくなった
ささいなことで怒りっぽくなった
財布やお金,物などを「盗まれた」と言うようになった

 

認知症の症状には,脳障害そのものが引き起こす「中核症状」と,環境変化や身体状況,介護者の関わり方などが関与して引き起こる「周辺症状」があります。

 

【中核症状】
記憶障害:最近の記憶や出来事,行動を忘れる
見当識障害:現在の日付,時間,場所,人物などが分からなくなる
失認:品物などが何か分からなくなる
失語:物や人の名前が出てこなくなる
失行:服の着方や道具の使い方が分からなくなる
実行機能障害:段取りや計画がたてられなくなる

 

【周辺症状】
妄想:財布や物が盗まれたなどと言う「もの盗られ妄想」など
幻覚:現実には無いものを見たり聞いたりする(幻視が多い)
不安・依存:いらいらして落ち着かなくなる,一人になると落ち着かない,一人ではいられない
徘徊:道順を覚えられないことから道に迷う,目的もなく歩き回る(アルツハイマー病に多い)
暴言・暴力:納得がいかないことなどがあると大声を上げたり暴力をふるう
抑うつ:意欲の低下,何もしたくなくなる,気分が沈んで晴れ晴れしない
介護拒否:入浴や着替えなどを嫌がる
異食:食べられないものでも口にする
不眠:夜眠れなくなる,反動で日中うたた寝をするようになる

 

 

筆者の日常診療で、コロナの影響があるのか、最近特に認知症の発症を疑う患者さんが増えてきた印象があります。

筆者は整形外科医ですので、上記の知識をもとに非常に疑う場合は専門医をご紹介して診断していただく手はずになります。

しかしその前により高い精度を持って判断できれば、紹介に際して患者さんやご家族への説得も効果的になります。

今回プライマリケア環境で、利用可能な予測因子を使用して、認知症のリスク予測モデルが開発されました。

 

研究論文
オープンアクセス
プライマリケアのための認知症予測モデルの開発:久山研究
初版: 2021年7月28日 https://doi.org/10.1002/dad2.12221
https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/dad2.12221

 

多変量解析の結果、認知症発症の有意な予測因子として、年齢、性別(女性)、教育歴9年以下、BMI18.5未満、高血圧、糖尿病、脳卒中の既往、現喫煙者、および座位行動の多さが抽出された。

以下のように認知症リスクを予測する。まず年齢により65~69歳を0点、70~74歳2点、75~79歳3点、80~84歳5点、85歳以上7点とする。これに、女性、教育歴9年以下、BMI18.5未満、高血圧、現喫煙者は各1点加算し、糖尿病、脳卒中の既往、座位行動の多さは各2点加算。これらの合計点数に応じて10年以内の認知症発症リスクが分かるという仕組み。例えば合計0点では4%、3点では10%、6点では22%、9点では46%であり、13点以上では80%以上と判定される。

結論として、プライマリヘルスケアの設定で使用するための認知症のリスク予測モデルと簡略化されたスコアを開発しました。開発された予測ツールは、個人が蓄積されたリスクとそのライフスタイルとの関係をよりよく理解するのに役立ち、コミュニティで認知症のリスクが高い高齢者の早期発見を強化する可能性があります。

 

皆さんも少しでも心配な方はやってみてください。

 

物忘れが激しい時の注意事項は、加齢による物忘れ(生理的健忘)では、自分が忘れている自覚があり、記憶以外の機能低下や意識変容は伴わないため、日常生活に支障は出にくいといわれています。日常生活に支障が出るような認知機能の低下や精神症状が現れる場合は精神科や心療内科受診が必要です。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

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