ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

なぜ8か月

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ワクチン接種に関して、筆者がずっと理解できなかったことがあります。

それは医学的には、少なくとも2回目接種から6か月での接種が、推奨されているにもかかわらず、実際には8か月以降となってしまっているということです。世界中どこを見ても、8か月まで待って(かなり早く1,2回目の接種を実施したごく一部の国以外)、ブースター接種を実施しているところはありません。

厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の議事録を見てみました。しばらく非公開となっていましたが、やっと見ることができるようになりました。

非常に長い議事録ですので抜粋させていただきます。

 

第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の開催(2021年9月17日(令和3年9月17日))

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21540.html

 

鈴木委員( 国立感染症研究所 感染症疫学センター長)
最近、国内でもブレークスルー感染が増えてきているということは私たちも把握しています。ただ、それが本当にワクチンの効果の減弱によるものなのかどうかについては、慎重に判断をしておく必要があります。
集団内で大半がワクチンを打っていたとしてもクラスターは発生します。なので、それが本当にワクチンの効果が減弱したからなのか、それとも接種者が増えて流行が拡大しているからなのかということは、きちんと区別をしておく必要があります。
イスラエルからの論文ですが、対象は60歳以上となっていると思います。それより下の世代については含まれていません。ですから、少なくともあの論文だけをもって、若い医療従事者にブースターを打つべきだといった議論にはならないかと思います。
ただ一方で、この論文は、また別の重要な知見があって、感染も重症も、ブースターを接種したほうが、2回接種よりも10倍以上リスクが下がるという結果になっていると思います。これは、感染については経時的に下がることは指摘されていますが、実は重症化のリスクも経時的に下がるのではないかといったことを示唆するような知見とも読み取れます。
『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に先日掲載された論文では、ワクチン・トライアルで、その後6か月間フォローアップしたところ、ワクチン・エフィカシーは少しは下がっているけれども、あまり下がってはいないといった結果も出てはいます。

脇田分科会長( 国立感染症研究所長)
鈴木先生の言われる意見もっともだと思うのですね。今、事務局案のように追加接種の必要があるということが直ちに断定できるのかということは、今の現状のエビデンスで本当に言えるのかというところは、私も少し留保したいなと思っていますが、ただ、実際にブースターをやるとなれば、今、準備を始めないとオペレーション的にはなかなか難しくなるということもあるので、そこの案文は、例えば追加接種の準備を進める必要があるとか、そういったことのほうがいいのかなというふうにも思うところでもあります。

川俣委員( 那須烏山市長)
1回目・2回目がまだ終わってない方もいる中で、3回目の準備をしろと言われるのは、準備をする段階を早めていただいたということはありがたいと思っていますが、気が焦っている方はいつから3回目と聞かれてしまうことが、私たちにはちょっとちゅうちょされているところがあります。

坂元委員(川崎市健康福祉局医務監)
追加接種をしなければ、データ的に見て、危機的な状態に落ちるというほど多分ワクチンの効果は落ちないだろうというふうには私も思います。

鶴田予防接種室長
事務局案ということで提示させていただいておりますので、今、御指摘いただいた2番目のところに、「おおむね8か月以上後とする」のその後に、文言は、また、分科会長と御相談させていただければと思いますが、科学的知見をさらに収集して、その期間も幅を持ったほうがいいのだろうとも思いますので、そういったことも含めて、この分科会でさらに御議論していただけるように、また、文言については、分科会長に御相談させていただければと思っております。

 

第25回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の開催(2021年10月28日(令和3年10月28日))

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22596.html


脇田分科会長
坂元委員からは、実務上の話として、やはり8か月でも厳しいところ、それ以上短くするのはかなり厳しいのではないかという御意見だったと思います。
学術的にはというところで、半年たつと抗体価のウェイニング等が報告されているということも事実ですので、それはそれとしてあるところですけれども、制度をどういうふうに設定するかというところは今後されていくというところで、我々のこの分科会の意見としては、科学的な知見と、それから、ここには自治体の代表の方とか、あるいは自治体で医療系のお仕事をされている方もいらっしゃるわけで、そういった意見もここでは議論したということであります。

坂元 昇( 川崎市健康福祉局医務監 )
1つの提案です。やはり2回接種した方で希望者全員というのがかなり現実的で、このように医療従事者、高齢者、重症化しやすい人などと区切っていくのは、今回はあまり現実的な方法ではない。多分ほかの市町村の方もそう思われると思いますが、そういう形で、私はこの提案にある2回完了者全ての希望者に対して3回目接種をやるということを、我々市町村としては強くお願いしたいと思っております。

脇田分科会長
坂元先生から、今回は対象者の優先順位をつけるというわけではなくて、2回接種をした方全てに対して機会を提供するということでどうかというお話だったと思います。ただ、一方で、1回目2回目が優先順位をつけて接種をされましたので、例えば期間を8か月ということにすれば、自動的に同じ順番になろうかと思いますが、それは接種券を全員に送付して、その上で8か月なりの期間が空いた人から順番に打っていくというような御提案だと理解いたします。

坂元委員
 ワクチンの効果からではなくて、実際のオペレーションの問題なのですが、例えばモデルナの場合だと、職域もしくは本当に限られた自治体での大規模接種でしか行われていない。そうすると、それは継続的に行われないで、市町村でモデルナも準備してくれと言われると、現実論、かなり厳しいところがある。
 接種間隔なのですが、これは8か月以降でよろしいのですね。なぜかというと、半年というのは、学術的には半年がいいのかもしれないけれども、自治体のオペレーションとして、先ほど川俣委員からもあったように、今頃、初期の頃の予診票が送られてきたりして、予防接種台帳の遅れが、市町村によって様々だと思うのですが、半年以上入力が遅れているということがざらにあるので、半年として区切られてしまうと、半年以降となると、恐らく送る方と送らない方というのが出てきたときに、行政は不公平というのが一番避けなければいけないので、半年というのは、仮に半年くらいが学術的によいということであっても、オペレーションとしてはきわめて難しい。川俣先生も御存じだと思うのですけれども、実際は8か月でもかなり厳しいと市町村は思っていますので、その辺をしっかり考えていただきたいということです。

脇田分科会長 
今、坂元委員からは、実務上の話として、やはり8か月でも厳しいところ、それ以上短くするのはかなり厳しいのではないかという御意見だったと思います。ただ、坂元委員自ら言われたように、学術的にはというところで、半年たつと抗体価のウェイニング等が報告されているということも事実ですので、それはそれとしてあるところですけれども、制度をどういうふうに設定するかというところは今後されていくというところで、我々のこの分科会の意見としては、科学的な知見と、それから、ここには自治体の代表の方とか、あるいは自治体で医療系のお仕事をされている方もいらっしゃるわけで、そういった意見もここでは議論したということであります。

 

どうやら10月28日の分科会で決まったようです。(形だけ)

すでに9月の段階でお役人の間ではある程度自治体のオペレーションに配慮して決まっていたと思わせるやり取りがあります。

自治体出身の(声の大きい)役人の委員が押し切っているように見えます。

ファイザー社製ワクチンが乏しい現状で、国の役人側にとっても都合がよかったのだと思います。

早めに決定して国が地方に指示すれば、6か月で実施できる自治体もたくさんあったはずです。

皆さんもお時間があれば一度議事録を見てみてください。

何事にも国民優先ではなく、役人の仕事を優先する体質が、残念ながらここでも現れています。

オミクロン株の感染拡大が一気に進んで、大変な事態にならなければよいがと心配するばかりです。

 

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