コロナ感染者の急減に関して、明確な理由を指摘できる専門家は一人もいません。
非常に好ましい状況にはありますが、その理由がはっきりわからないというある意味恐ろしい状況にあります。
ワクチンサイドから考えるのにあたって一つの論文が出されました。
The Lancet Journal
記事| 398巻、10309号、P1407-1416、2021年10月16日
米国の大規模な統合医療システムにおける6か月までのmRNABNT162b2 COVID-19ワクチンの有効性:後ろ向きコホート研究
サラ・Y・タルトフ博士 ら
公開日:2021年10月4日DOI:https ://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)02183-8
メソッド
SARS-CoV-2感染に対するBNT162b2ワクチンの有効性を評価するために、医療機関Kaiser Permanente Southern California(CA、USA)のメンバーである個人(12歳以上)の電子健康記録を分析しました。
2020年12月14日から2021年8月8日までの間に、適格性について評価された4 920 549人のうち、3 436 957人(年齢中央値45歳[IQR 29–61]; 1 799 395 [52・4%]女性および1人)を含めました。
結果
感染症に対する有効性は、完全ワクチン接種後の最初の月の88%(95%CI 86–89)から5か月後の47%(43–51)に低下しました。シーケンシングされた感染症の中で、デルタ変異体の感染症に対するワクチン有効性は、完全ワクチン接種後の最初の1か月間は高かったが(93%[95%CI 85–97])、4か月後には53%[39–65]に低下した。完全ワクチン接種後の最初の月の他の(非デルタ)変異体に対する有効性も97%(95%CI 95–99)と高かった。しかし、4〜5か月で67%(45〜80)に減少しました。
すべての年齢のデルタ変異体による感染症の入院に対するワクチン有効性は、6か月まで全体的に高かった(93%[95%CI 84–96])。
研究期間全体にわたって、完全にワクチン接種された個人は、SARS-CoV-2感染に対して73%(95%CI 72-74)、COVID-19関連の入院に対して90%(89-92)の調整されたワクチン有効性を示しました。
年齢層別に分類すると、完全ワクチン接種を受けた人の感染に対するワクチン有効性は、12〜15歳の人で91%(95%CI 88〜93)、65歳以上の人で61%(57〜65)でした。
入院に対する年齢層別ワクチン有効性は、16〜44歳の患者で92%(95%CI 88〜95)、65歳以上の患者で86%(82〜88)でした。
COVID-19入院の全体的な調整済みワクチン有効性の推定値は、完全にワクチン接種されてから1か月以内に87%(95%CI 82-91)、5か月後に88%(82-92)でした。完全なワクチン接種、有意な衰退を示しませんでした。
解釈
私たちの結果は、デルタ変異体の広範な普及に直面しても、完全にワクチン接種されてから約6か月までの入院に対するBNT162b2の高い有効性をサポートしています。SARS-CoV-2感染に対するワクチンの有効性の経時的な低下は、おそらく主に、ワクチン保護を逃れるデルタ変異体ではなく、時間とともに免疫力が低下することによるものです。
ワクチン接種後6か月をたっても入院予防効果は高いまま維持されるという結果でした。
今の日本の状況を見ますと、ワクチンの高い入院予防効果のおかげで重症者・死者数が減ってきていると理解できますが、感染予防効果は低下するわけですから感染者数は相応にあってもいいと思われます。
厚生労働省 ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html (2021年10月17日閲覧)
これを見ますと全体的にPCR検査数は、ピーク時の4分の1以下に急速に減少してきており、特に民間検査会社の検査が減ってきています。
このように発表される感染者数が急速に減少してきて、ワクチンも2回接種しており、あえてPCR検査しなくてもいいと考える人は、恐らくかなりの数に上るのでしょう。
ということは、無症状感染者がかなりいても捕捉されていない可能性があります。いかに重症予防効果があるといっても感染者総数が増えれば重症者数も増えてきます。これから寒くなり室内の換気が不十分になってくるにつれ、症状のある感染者が増えていき重症者も増えていくことでしょう。
経済活動を停滞させないためにも、もっと検査件数を増やして感染者を把握し隔離していく必要があると強く思います。
最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。