ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

ノババックス製ワクチンと情報

厚生労働省は4月19日、ノババックス製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて製造販売を承認しました(国内の申請者は武田薬品工業)。一般名は組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン、販売名はヌバキソビッド筋注。国内で承認を得た4種類目のワクチンとなります。ノババックス製は、ファイザー製とモデルナ製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、アストラゼネカ製のウイルスベクターワクチンとは異なる、遺伝子組換えスパイク蛋白ナノ粒子ワクチンで、冷蔵保管(2~8℃)が可能。これまでのワクチン接種でアレルギー反応が出た人への使用を想定しています。

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25294.html 4月21日閲覧

https://www.mhlw.go.jp/content/11123000/000930649.pdf 4月21日閲覧

 

<添付文書情報>
6. 用法及び用量
初回免疫:1回0.5mLを2回、通常、3週間の間隔をおいて、筋肉内に接種する。
追加免疫:1回0.5mLを筋肉内に接種する。
7. 用法及び用量に関連する注意
7.1 接種対象者
本剤の接種は18歳以上の者に行う。
SARS-CoV-2の流行状況や個々の背景因子等を踏まえ、ベネフィットとリスクを考慮し、追加免疫の要否を判断すること。
7.2 接種回数
初回免疫:本剤は2回接種により効果が確認されていることから、原則として、他のSARS-CoV-2に対するワクチンと混同することなく2回接種するよう注意すること。
7.3 接種間隔
初回免疫:1回目の接種から3週間を超えた場合には、できる限り速やかに2回目の接種を実施すること。
追加免疫:通常、本剤2回目の接種から少なくとも6ヵ月経過した後に3回目の接種を行うことができる。

drhirochinn.work

このワクチンに関しては、昨年記事にさせていただいております。

米国、メキシコ、英国で行われた第三相試験によるとファイザー社製やモデルナ社製ワクチンと比較して接種後の副反応がやや少ないとのことです。しかしリアルワールドのデータが乏しく特にBA-1やBA-2に対する有効性のデータがなくファイザー社製ワクチンやモデルナ社製ワクチンと同等であるとの前提で、昨年の米国・Novavax社との契約通りに話を進めているようにみえます。

若年層の副反応を嫌がってのワクチン忌避に対抗する意味もあるのだと思います。筆者も外来でワクチンの3回目接種をさせていただいて思うのは、なぜか高齢者もこの副反応をよく会話に持ち出し、メリットの認識がはなはだ希薄であると感じます。

政府やマスコミからの的確な情報提供が不可欠です。

 

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html 4月21日閲覧

 

drhirochinn.work

一方、政府および対人関係の信頼と汚職が、国のワクチン接種率に影響を与えるということがわかっています。

Lancetの論文では、政府への信頼度や対人信頼度、政府の汚職が少ないことと、低い標準化感染率について、強い統計的に有意な関連が認められ、これらの因子は、COVID-19ワクチンが広く普及する中~高所得国において、高いワクチン接種率とも関連していたとのことです。

筆者の職場のある自治体では、今回の3回目接種では前回ほどの緊張感は、残念ながら感じません。

今の変異株に対する有効性が少し劣るとはいっても、高齢者や基礎疾患のある人は3回目接種を受けるべきです。

このことが国民には正しく伝わっていないのだと思います。大人がちゃんと接種していれば、5~11歳の子供への接種は急ぐ必要はありません。


厚労省は1億5,000万回分の供給を受ける契約を結んでおり、来月下旬から約10万回分を自治体に配送する予定とのことです。

正しい情報発信をしないと、このワクチンも大量の廃棄という結果になり、莫大な税金の無駄使いになるものと思います。

最近では、情報という言葉は、戦争を有利に運ぶためのプロパガンダ(全くの嘘であっても)という意味に多くの場面でとらえられるようになってしまいましたが、本来は正しいとか事実を伝えるという言葉です。

 

様々な情報があふれる現代にあって、真実を見極める力が特に個人個人に強く求めれ、正当な共通の価値観を持つ者同士が密に連帯していくことが、今ほど必要な時代はないのではないかと思います。