ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

ネアンデルタール人と現代人

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/3-1.html 4月21日閲覧

腰痛は、人が訴える症状の男性の1位、女性の2位を占めています。

そして解剖学的に横から見ると背骨は、曲線を呈しています。

そしてさらに、ネアンデルタール人と現代人(新人、ホモ・サピエンス)の背骨の形状の比較から、腰痛の原因は生活習慣にあるとする研究結果が報告されました。産業革命以前の現代人の背骨はネアンデルタール人に似ていましたが、産業革命以後に人々の生活習慣が大きく変わった影響で背骨の形状が変化し、21世紀を生きる我々に腰痛を引き起こしている可能性があるとのことです。

ネアンデルタール人および他のヒト族における腰椎過前弯症の推測 
PNAS Nexus、第1巻、第1号、2022年3月、pgab005、https: //doi.org/10.1093/pnasnexus/pgab005
公開: 2022年3月2日
https://academic.oup.com/pnasnexus/article/1/1/pgab005/6540637

この研究で著者らは、背骨を構成している椎体の形状の変化に着目しました。その解析結果から「人類の椎体の形状は長い歴史とともに徐々に変化してきた。しかし、19世紀後半に工業化が加速した後、現在暮らす人々の椎体の形状に近づく急な変化が起きたようだ。この変化が、腰痛を含む筋骨格系のトラブルの増加に関係しているのではないか」と推察しています。
ネアンデルタール人の椎体は、産業革命以降の現代人とはやや異なるものの、産業革命以前の現代人には近い形状であることが分かりました。このような傾向は、現代人の居住地域にかかわりなく認められたとのことです。

著者らは、「工業化に伴う生活習慣の変化の中でも、とりわけ身体活動レベルの低下や姿勢の悪化などによって時間の経過とともに、椎体が腰痛などを起こしやすい形状に変化したのではないか」との考察を加えています。

どうやら腰痛は、我々の宿命のようです。

 

ネアンデルタール人といえば、以前こんな記事がありました。

ネアンデルタール人由来 遺伝子が“重症化予防”
[2021/02/21 14:39]
テレ朝NEWS
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000207770.html

 

4万年前に絶滅したネアンデルタール人。
この古代人類から現代人が新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ遺伝子を受け継いでいる。
こんな研究結果をOIST・沖縄科学技術大学院大学のスバンテ・ペーボ教授の研究グループが発表し、2月17日、PNAS・米国アカデミー紀要に掲載された。
スバンテ・ペーボ教授は、スウェーデン出身で、OISTとドイツのマックス・プランク進化人類学研究所で教授を務める。

新型コロナが重症化するのを“予防する”遺伝子は別の研究グループによってすでに特定されていた。現代人の12番染色体の上にあり、新型コロナで重症化するリスクを約20%低下させる働きがあるという。

ペーボ教授らは、この遺伝子が、ネアンデルタール人に由来していて、新型コロナウイルスが感染した細胞の中で、ウイルスの遺伝情報を分解する酵素の働きを高めていることを発見したと発表した。

ペーボ教授によるとこの遺伝子は、アフリカ以外に住む、約50%の人が持っていて
日本人もおよそ30%の人が保有しているという。

“重症化を予防する”遺伝子とは反対に、“重症化させる”遺伝子も、現代人はネアンデルタール人から受け継いでいるという。この遺伝子は重症化のリスクを2倍も高めているとする解析結果が、やはりペーボ教授らによって明らかにされている。

“重症化”遺伝子はヨーロッパでは最大16%、インドやバングラデシュなどの南アジアは、なんと最大60%の人がこの遺伝子を受け継いでいるという。

逆に、日本や中国など東アジアの人々は、この遺伝子を持っていないとされる。
つまり、ヨーロッパや南アジアの人たちが“重症化”遺伝子と“予防”遺伝子の両方を持つのに対し、日本人など東アジアの人は“予防”遺伝子しか持っていないというのだ。
“重症化”遺伝子は“予防”遺伝子より5倍ほど影響力は強いとしている。

よい遺伝子も悪い遺伝子も伝わっている。

同じペーボ教授によると、「 4万年前までは、私たちはこの地球上で唯一の人類というわけではありませんでした。ヨーロッパの大草原地帯ではネアンデルタール人が歩き回り、デニソワ人はアジア中に広がっていました。インドネシアには小型の人類「ホビット」が、アフリカには他に少なくとも3種のヒト族が存在していたのです。これらの初期人類は多くの点で現代人と似ていたことがわかっています。彼らは比較的大きな脳を持ち、狩猟採集社会に住み、火を使うことができました。その後、現生人類が地球全体に広がったのと時を同じくして、他の人類種はほぼ一斉に姿を消しました。その結果、3~4万年前から現在までは、私たちが唯一の人類種として存在してきましたが、それは、歴史の中では非常に特殊な期間といえるでしょう。 」

 

人と人が殺しあう遺伝子も濃密に伝えられているようです。

一刻も早くウクライナに平和が訪れますように祈らざるを得ません。