ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

遅いブースター接種

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今回は現在のトピックである、ブースター接種に関する記事を書かせていただきます。

原著
BNT162b2ワクチンブースターとCovid-19による死亡率
2021年12月8日 DOI:10.1056 / NEJMoa2115624
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2115624

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAワクチンのBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)の、2回接種から少なくとも5ヵ月後にブースター接種を受けた人は、ブースター接種を受けていない人と比較して、COVID-19による死亡リスクが90%低下しました。

研究グループは、イスラエル国民の半数以上が加入している同国最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータを用い、ブースター接種が承認された7日後の2021年8月6日時点で50歳以上であり、少なくとも5ヵ月前にBNT162b2ワクチンの2回目の接種を受けた人を対象として、2021年9月29日までの間のブースター接種者(ブースター群)と非接種者(非ブースター群)のCOVID-19による死亡について検討しました。
84万3,208例中75万8,118例(90%)が、54日間の試験期間中にブースター接種を受けました。
この結果、ブースター接種で死亡リスクが90%低下しました

 

さらに、Pfizer(ファイザー)/BioNTech(ビオンテック)の発表に続き、Reutersが報じたイスラエルでの研究でも両社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンのBNT162b2追加接種がどうやらオミクロン(Omicron)株に有効らしいことが示されました。
BNT162b2の2回接種を済ませた人の血清のオミクロン株に対する中和効果は著しく弱く、他のSARS-CoV-2株に対する中和活性の25分の1未満ほどでしかありませんでした。

しかし3回目接種をした人のオミクロン株スパイクタンパク質に対する中和抗体活性は2回接種後に比べて25倍高く、3回接種後のオミクロン株中和活性は2回接種後の非オミクロン株中和活性に肩を並べるほどになると示唆されました。

 

今までの経過から言って、ウイルスの変異株の種類に関して、忠実に英国の後を追っている日本として、オミクロン株の流入は時間の問題でしょう。

従来のデルタ株及びオミクロン株に対する免疫原性や安全性は非常に興味のあるところです。

 

イスラエルでの2回目から5か月後のブースター接種のデータですが、死亡リスクが90%低下します。又オミクロン株に対しても非オミクロン株と同様の中和活性を持つとのことです。

 

日本では今3回目接種用のワクチンが十分にないようです。特に多くの日本人が1回目2回目に使った、ファイザー社製ワクチンが足りないようです。

 

ファイザー社製ワクチンが足りないのであれば、モデルナ社製ワクチンを使えばよいのです。

 

The Lancet Journal
記事| 398巻、10318号、P2258-2276、2021年12月18日
英国でのChAdOx1nCov-19またはBNT162b2の2回投与後の3回目の投与(ブースター)としての7つのCOVID-19ワクチンの安全性と免疫原性(COV-BOOST):盲検、多施設、無作為化、管理、第2相試験
オープンアクセス公開日:2021年12月2日DOI:https ://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)02717-3

 

英国・サウサンプトン大学病院のAlasdair P. S. Munro氏らが、2,878例を対象に行った第II相多施設共同無作為化試験。

ワクチン2回接種後、70日・84日以降に7種ワクチンを追加接種。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン、ChAdOx1(AstraZeneca製、ChAd)またはBNT162b2(Pfizer-BioNtech製、BNT)の2回接種後の追加接種として、7種のCOVID-19ワクチン接種による免疫原性を調べたところ、ChAd 2回接種群では7種すべてで、BNT 2回接種群では6種で、抗体および中和反応の増加が認められました。

7種のワクチンは以下の通りです。

NVX-CoV2373(Novavax製、NVX)
ChAd(AstraZeneca製、ChAd)
BNT(Pfizer-BioNtech製、BNT)
VLA2001(Valneva製、VLA)
Ad26.COV2.S(Janssen製、Ad26)
mRNA1273(Moderna製、m1273)
CVnCov(CureVac製、CVn)

7種のワクチンのうち、反応原性の増加が認められたのは、ChAdまたはBNTを2回接種後のm1273、BNTを2回接種後のChAdおよびAd26の3種のワクチンでした。

BNT 2回接種者では、スパイクIgG抗体の対コントロール群GMR(コントロール群に対するスパイクIgG抗体の幾何平均比)はVLA半分量群が1.3(99%CI:1.0~1.5)と最小で、m1273群が11.5(9.4~14.1)と最大でした。

最も頻度の高い局所および全身性の有害事象は倦怠感と痛みで、70歳以上よりも30~69歳で報告例が多かった。重篤な有害事象はまれであり、ワクチン群とコントロール群で同程度でした。

すべての研究ワクチンは、ChAd / ChAdの初期コース後、およびBNT / BNT後の1つを除いて、安全性の懸念なしに抗体と中和反応を増強しました。

 

ファイザー社製ワクチン2回接種後のモデルナ社製ワクチンのブースター接種は、安全性の懸念なしに抗体と中和反応を増強したとのことです。

 

河野太郎氏 3回目接種「平等よりスピードだろ」「厚労省は何をやってるんだ」と批判
12/18(土) 15:08配信 デイリースポーツ
https://news.yahoo.co.jp/articles/6cbb3f6218531bfecc381b149482ec8f008625fa

 

自民党の河野太郎前ワクチン担当相が17日夜、自身のツイッターを更新。新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を巡る厚労省の対応を批判した。
「今、市中にはコロナワクチンが1000万回弱あるのだから、用意が整った自治体からガンガン三回目接種をすべきなのに、厚労省は何をやってるんだ。」
「国内にコロナワクチンが5600万回分あり、来年の第一四半期に7800万回分来るのだから、三回目接種に関して供給の問題はない。仮に厚労省が言うように供給の問題があっても、ある分を先にうてばよいだけ。平等よりスピードだろ。」と厳しい口調でワクチン3回目接種の加速化を要求。「平等よりスピード」と強調した。

 

全くその通りです。ファイザー社製が足りないのならばモデルナ社製を使えばいいだけです。追加接種量は、1,2回目の半分量ですし単回なら若年男性への心筋炎もあまり問題にならないでしょう。

『政府は、新型コロナウイルスワクチンの3回目の追加接種を巡り、2回目から「原則8か月以上」としていた接種間隔を6か月に短縮する対象を、医療従事者らと、高齢者施設などに入所する基礎疾患を持つ高齢者に拡大する方向で調整に入った。』

と報じられていますが、とっくに医療従事者は、7か月を過ぎています。

とにかくスピードです。官僚も政権も危機感がなさすぎます。オミクロン株はすでに市中感染しています。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

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