ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

オミクロン株

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オミクロン株の市中感染が、日本でも予想通り増えてきています。

海外ではどうなっているのでしょう?

 

英仏伊加で感染最多 独でオミクロン初死者
12/24(金) 23:21配信  産経新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/88da4025b0c4095074879604d9786c6448a38194

世界各地で変異株「オミクロン株」が猛威を振るう中、英国とフランス、イタリア、カナダで23日、新型コロナウイルスの新規感染者が過去最多を更新した。ドイツではオミクロン株による死者が初めて確認された。

英政府は23日、新規感染者数が11万9789人で、2日連続で10万人を超えたと発表。オミクロン株感染も1万6817人で最多。

フランスの保健当局は23日、新規感染者が9万1608人、イタリア政府も4万4595人に上ったと発表した。

ドイツ衛生当局はオミクロン株に感染した1人が死亡したと発表。同国では今後数週間で、同株による感染が主流になる可能性がある。

と報じています。

これから日本でも、他の変異株症例が少ない中、オミクロン株の感染が急増していくものと思われます。

まだ世界各国でのオミクロン株のデータが十分ではありませんが、リアルタイムで情報を得ておく必要があります。

PubMedで検索してみました。

 

The Lancet Journal
免疫後血清によるSARS-CoV-2オミクロンB.1.1.529変異体の中和の低下
公開日:2021年12月20日DOI:https ://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)02844-0

 

英国の感染症例から得られたオミクロンの分離株を使用した中和アッセイの結果を報告します。
参加者は、オックスフォード-アストラゼネカのChAdOx1 nCoV-19(ChAd; n = 22)を2回接種するか、ファイザー-BioNTechのBNT162b2(BNT; n = 21)を2回接種し、プライミング間隔は8〜11(中央値9)週間でした。 。サンプルは、2回目の免疫化の28日後(範囲25〜32)に取得されました。

ChAdを投与された参加者からの血清の中和力価は、1人を除くすべての参加者で検出可能な閾値を下回りました。BNTを受けた参加者の血清中の中和力価の中央値は、1609(ビクトリア株)から54(オミクロン変異株)に29・8倍減少し、1人の参加者が検出閾値を下回りました。

要約すると、相同なChAdとBNTの両方のプライマリーコースのレシピエントでは中和力価が大幅に低下し、一部のレシピエントはまったく中和しなかったという証拠がありました。中和力価のこの低下は、おそらく後の時点でより顕著になるでしょう。
英国健康安全保障局からの予備データは、ChAdまたはBNTの2回投与後の症候性感染に対する有効性の低下を示しており、以前に感染した、または二回ワクチン接種を受けた個人のブレイクスルー感染の増加の結果を示唆しており、感染のさらなる波を引き起こす可能性があります。

しかしBBCニュースは、伝えています。

オミクロン株の感染の波、他の変異株より「穏やか」か イギリスと南アの研究
2021年12月23日 BBC NEWS

イギリスでは22日、1日の新規感染者数が初めて10万人を超えた。

英スコットランドの研究では、オミクロン株に感染して入院治療を必要とする人の数が、他の変異株と比べて約3分の2少ないと指摘。
ただ、研究の対象となった症例数は非常に少なく、重症化リスクのある高齢者の感染もほとんど含まれていないとした。
オミクロン株は驚くほど急速に拡大しているため、感染者が増えれば、オミクロン株の症状が軽い場合のメリットが帳消しになる可能性がある。

南アフリカの研究でも、オミクロン株と、過去の感染の波あるいは現在流行しているほかの変異株を比較したところ、病院での治療が必要になる確率が70~80%低い可能性があることが示された。
一方で、入院患者が重症化する割合は他の変異株と同程度だったという。

英インペリアル・コレッジ・ロンドンのオミクロン株分析では、過去に免疫を獲得していない人がオミクロン株への感染で救急外来を利用する可能性は、デルタ株よりも11%低いとしている。一方で、集団免疫を獲得した場合では、オミクロン株への感染で救急外来を利用する可能性は25~30%低くなる。また、1日以上の入院が必要となる確率も約40%低いという。

香港大学は、オミクロン株は上気道における感染はしやすいが、より大きなダメージを与える可能性のある肺の深部組織には侵入しにくいことを発見した。
英ケンブリッジ大学は、オミクロン株は肺の細胞を融合させるのが苦手であることを突き止めた。

入院患者が重症化する割合は他の変異株と同程度だったというデータ以外は、比較的好材料がそろっています。

プレプリントですが、こんな研究があります。

 

medRxiv
2021 Dec 14;2021.12.14.21267755. doi: 10.1101/2021.12.14.21267755. Preprint
mRNAベースのCOVID-19ワクチンブースターはSARS-CoV-2オミクロン変異体に対する中和免疫を誘導します

野生型、デルタ、およびオミクロンSARS-CoV-2偽ウイルスに対する88 mRNA-1273、111 BNT162b、および40Ad26.COV2.Sワクチンレシピエントからの血清の中和効力を測定しました。
驚くべきことに、オミクロンの中和はほとんどのワクチン接種を受けた個人では検出できませんでした。しかし、mRNAワクチンで追加免疫された個体は、野生型よりもわずか4〜6倍低いオミクロンの強力な中和を示しました

ブースターが中和抗体反応の交差反応性を高めることを示唆している。さらに、オミクロン偽ウイルスは、テストされた他のどの亜種よりも感染性が高いことがわかりました。

全体として、この研究は、高度に発散したSARS-CoV-2変異体に対する中和抗体反応を広げるためのブースターの重要性を強調しています。

我々の結果は、現在の野生型ベースのmRNAワクチンが予想以上に交差反応性体液性応答を刺激するのに十分であることを示唆しています。

この研究は、mRNAベースのワクチンの3回目の投与を受けると、SARS-CoV-2オミクロンに対する強力な交差中和反応が効果的に得られることを示しています。中和抗体の反応性。これらの発見は、高度に変異したSARS-CoV-2変異体の出現と拡散を抑制するための公衆衛生対策として、mRNAブースターの迅速かつ同期した広範な展開の必要性を裏付けています。

実験レベルですが、オミクロン株に対しても、mRNAブースターの効果が確かにあるようです。

日本ではこれからの感染拡大を、従来の感染予防方法でできるだけ防ぎながら、3回目のワクチン接種を、菅政権時と同様に、急ピッチで実施することに尽きると思います。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

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