ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

ワクチンの添加物アレルギー

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前稿でも書きましたが、日本が先行して医療従事者にファイザー社製のワクチン接種を始めている段階で、3月12日現在、接種230542人に対して37人のアナフィラキシーが発生しています。

桁違いに多くの件数が医療従事者の女性に認められており、この原因は医学的に究明されるべきです。(ワクチン接種後のアナフィラキシーは、適切に対応すれば死亡することも、後遺症を残すこともありません。)

筆者は前稿において女性のアナフィラキシー頻度がアメリカでも日本でも高い原因として化粧品中の P E G (ポリエチレングリコール)によって経皮的に感作された可能性を指摘しました。しかし特に医療従事者ではその頻度が、日本でもアメリカでも桁違いに多いようです。

この原因について改めて考えてみました。

 

医療従事者は、ほかの業種の人と比べて頻回に手指消毒(手指消毒液)と手指洗浄(ハンドソープ)を繰り返します。

これは入職してからずっと一貫して続きます。

業種によっては一般のかたも、頻回に手指洗浄するかもしれませんが、恐らく主に流水かせいぜい時々ハンドソープを使うだけでしょう。

医療者は頻回の手指消毒、手指洗浄のために両手指が皮膚炎を起こしている人も珍しくはありません。この為アレルゲンの皮膚からの侵入も増えるものと思われます。

 

P E G とは何でしょうか?

ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、略称 PEG, マクロゴールとも)は、エチレングリコールが重合した構造をもつ高分子化合物(ポリエーテル)です。

PEG を他の疎水性分子に結合すれば、非イオン性界面活性剤が得られ、化粧品の乳化剤などに用いられています。

分子量3500 - 4000 (79≦n≦91)のポリエチレングリコールは、慢性便秘の瀉下薬として用いられてもいます。(日本での製品名はモビコール®として2018年上市された)。

PEG をタンパク質性医薬品に結合すると、タンパク質の分解を抑制する効果(“ステルス化”)により、効力を延長したり副作用を軽減することが可能になります。例としては PEG化インターフェロンα(C型肝炎に有効)や PEG化G-CSF製剤があります。「マクロゴール」などの名で多くの緩下剤の基剤として用いられます。

まずファイザー社製ワクチンに添加物として含まれるこの P E G が手指消毒剤に含まれるか調べてみました。

会社名はあえて伏せますが、多くのメーカーの手指消毒剤やハンドジェル、消毒スプレー中に、或は手術前の手指消毒用のクロルヘキシジン(ヒビテン)製剤中に添加剤として含有されています。

 

ここで免疫学的に「交差反応」という言葉があります。

たとえば各種のイネ科植物の花粉においては、含まれる抗原の特徴がきわめて似ているため、1種類の花粉のみに感作されていても、同種のイネ科花粉にアレルギー反応を起こすことが知られています。こうしたことを交差反応といいます。すなわち、異なる抗原もアレルゲンになり得る。交差抗原性があるといいます。

また、そうした花粉症患者のうち、花粉ではないものに反応する患者もいます。カバノキ科花粉症患者によくみられる口腔アレルギー症候群がそれで、リンゴやモモなどバラ科の果物を食べるとかゆみやしびれなどを感じます。これら果物で症状がないうちは問題ないと思われますが、かゆみ等出てきた場合ひどくなると呼吸困難等に至りアナフィラキシーショックを起こすこともあるので注意が必要です。

業務上ゴム製品に接することの多い人にみられるラテックス(ゴム)アレルギーがありますが、これはアボカド、バナナ、クリなどの食品と交差抗原性があります。

 OzkayaEおよびKilicS ニトロフラゾンアレルギーのマーカーとしてのポリエチレングリコール:トルコでの20年の経験。接触皮膚炎。2018; 78(3):211-215。
American Academy of Allergy Asthma and Immunology
という研究の中で、 研究の主な結果ではありませんが、含まれる被験者の低い割合(42人中2人)で、PGとPEGの間の交差反応性をサポートするデータがありました。

 

P G とは何でしょうか?

プロピレングリコール(propylene glycol)とは、プロパン-1,2-ジオールのことで、グリコールに分類される有機化合物で、溶媒となります。保湿剤や乳化など様々な用途に使用され、食品や医薬品にも用いられる場合があります。工業的には酸化プロピレンの加水分解によって製造されます。
低用量では生物への毒性が低く、また無味無臭であることから、保湿剤、潤滑剤、乳化剤、不凍液、プラスチックの中間原料、溶媒などとして用いられる他、保湿性や防カビ性に富むことから医薬品や化粧品、麺やおにぎりなどの品質改善剤等、広範囲で用いられています。

医薬品としては、注射剤・内服薬・外用薬の溶解補助剤として調剤に用いられています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2009年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

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化粧品に配合される場合は、

皮表の柔軟化および水分量増加による保湿作用
グラム陰性菌の一種である大腸菌の抗菌による製品安定化剤
色素および香料の溶剤
固形石鹸の透明化
これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、洗浄製品、ヘアケア製品、染毛剤&カラー剤、洗顔料&洗顔石鹸、ネイル製品、香水など様々な製品に使用されます(文献7:1993;文献8:1999)。

文献7;西山 聖二, 他(1993)「保湿剤」色材協会誌(66)(6),371-379.
文献8;A Aono, et al(1999)「Calorimetric Study of the Antimicrobial Action of Various Polyols Used for Cosmetics and Toiletries」熱測定(26)(1),2-8.

 

それではこの P G は、日本の手指消毒剤に含まれているのでしょうか?

どこの医療機関にも置いてあって、速乾性ゆえに拭き取る必要性がなく頻回に繰り返し使用できる、主成分がベンザルコニウムの手指消毒剤があります。

この中に P G が添加物として入っています。速乾性ゆえに皮膚上に重層性に残留し高濃度になる可能性があると考えられます。

P G も先のクロルヘキシジン手指消毒剤をはじめ、各種消毒剤中に含有されています。またハンドソープ内にも高頻度で含まれています。

P E G と  P G が皮膚より侵入し、感作された状態(P G は交差反応を介して)のところに P E G 入りのワクチンが接種されてアナフィラキシーが起きたと考えられないでしょうか?

これら P E G や PG はその有用性から多くの食品、化粧品、医薬品中に含有されており、以前よりアレルゲン物質として指摘されてはいても、その頻度などにより問題にはあまりされていませんでした。

しかし今回、国民の大多数が直面する P E G 含有のワクチン接種に際して、潜在化していた P E G や P G への感作状態が一気に顕在化してきたと考えられるのではないかと思います。

原因が特定できれば今後の新しいワクチン開発の参考になるでしょうし、今進行しているワクチン接種のリスク管理、あるいは、パッチテストや D L S T (薬剤によるリンパ球刺激試験)など実施してアナフィラキシーを予見できる可能性も期待できます。

現段階では筆者の仮説にすぎませんが、今後の医学的な究明が必要であると思います。

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

 

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