今回の記事は、またユニークな論文の紹介です。政治体制と疫学の関係ともいえるもので面白い論文です。
BMJ 2020; 371 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.m4040 (Published 23 October 2020)
民主主義と健康の研究:特別論文
自動化と国民皆保険:総合的な管理研究
概要
目的:民主化(民主的特性の大幅な低下(自由で公正な選挙、市民的および政治的結社の自由、表現の自由))と国の国民健康の結果および国民皆保険(UHC)への進展との関係を評価すること。
国の政治的特性として、自由・公平な選挙制度、市民団体や政治結社の自由、表現の自由といった民主主義的特性が薄れ、そうした点への規制や統制が強い独裁主義的特性が増すと、国民の推定平均余命、効果的な医療サービスを受ける機会および医療費の自己負担は、悪化するとの研究結果が示されました。
2000~10年に独裁制への移行が認められた17ヵ国(“介入”国群)と、1989~2019年に同移行がまったく認められなかった119ヵ国(コントロール群)の2群に分類しました。
介入国群は低・中所得国で、北米と欧州西部を除く地域に属していました。(バングラデシュ、中央アフリカ、コートジボワール、エクアドル、フィジー、リベリア、マダガスカル、モルドバ、ネパール、ニカラグア、北マケドニア、パレスチナ/ヨルダン川西岸地区、フィリピン、ロシア、ソロモン諸島、スリランカ、トーゴ)
結果
独裁化への移行後10年、全アウトカムで悪影響が出ました。介入国群では、独裁化への移行開始後10年時点で3つの主要アウトカムの変数(5歳でのHIVのない平均余命、UHCの有効範囲指数、および1人当たりの健康に対する自己負担支出)はすべて、改善が認められたものもあったが、多くはパフォーマンスの低下がみられました。
介入国群に是非とも入れてもらいたかった国が2つ(我が国の隣国です)ありますが、情報統制でデータが解らなかったものと思います。
政治体制が、国民の健康にも大きく影響するのだということが、改めてわかりました。
そもそも自由にモノが言えず、びくびく生活していて、健康にいいわけありませんね。
やっぱりこの国に生まれて、よかったなあと思いました。