ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

再度マスクを

 

おはようございます。

新型コロナ感染症も4年目に入り、ついに国の感染対策も大幅に舵を切ってきた感があります。主に経済と対外的な観点からの変更と思います。

しかし高齢者のリスクは依然として高く、社会的な防疫策で守られているとはとても言えない状況です。こういう状況で5類にするなどの大きな変更は、高齢者の健康や生命を無視しているかのように見えます。

ここで筆者はもう一度マスクに着目してみたいと思います。

drhirochinn.work

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過去にも数記事書かせていただいています。

EBioMedicine Home
SARS-CoV-2 特異的鼻 IgA は、COVID-19 による入院から 9 か月後に減少し、その後のワクチン接種では誘発されない
公開日: 2022 年 12 月 19 日DOI: https://doi.org/10.1016/j.ebiom.2022.104402

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に一度感染したりワクチン接種によって免疫を獲得すると、COVID-19罹患時の重症化リスクが低下する一方で、感染リスクの抑制効果は十分でない理由の一部が明らかになった。感染後の重症化の抑止に重要な血液中の抗体価は比較的長期間、高いレベルに維持されるのに対して、感染自体を防ぐのに重要な鼻粘膜の抗体価は短期間で低下してしまうためではないかという。また、ワクチン接種によって血液中の抗体価は上昇するものの、鼻粘膜の抗体価はそれほど大きく変化しないとのことだ。

今回の研究により、鼻粘膜の抗体は血液中の抗体よりも短命であることが分かり、著者らは感染リスクそのものを抑制するワクチンの開発が必要であるとしています。

ワクチンは鼻粘膜の抗体価をより効果的に高めることのできるものであるべきで、鼻腔へのスプレーまたは吸入という投与経路を検討する必要があるとしています。

またもう一つの研究では、

JAMA Netw Open
2023 年1 月 9 日
無細胞形態のヒト唾液サンプル中の SARS-CoV-2 Omicron バリアント
JAMA Netw Open. 2023;6(1):e2250207. doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.50207

わが国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第8波の主な感染原因であるオミクロン株感染者の唾液中には、宿主細胞の内外に付随していない裸のウイルス(セルフリーウイルス)が、従来株やデルタ株よりも高比率に含まれていることを世界で初めて発見し、JAMA Network Open誌2023年1月9日号に報告した。
細胞に付随しているウイルスと比較すると、セルフリーウイルスはとても小さく軽いため、唾液に覆われた状態でも室内に長時間漂うことができる。オミクロン株では、このセルフリーウイルスの唾液への排出量がデルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加したことが、エアロゾル感染によるCOVID-19の爆発的拡大につながったものと考えられるという。

研究グループでは、新型コロナウイルスは、従来株→デルタ株→オミクロン株とウイルスが変異するのに伴い、唾液中に排出されるウイルスの量自体が多くなっていると推測。また、エアロゾル感染が成立するためには、ウイルスが飛沫に含まれて拡散する状態よりも遠くに飛散し、かつ飛沫よりも長時間室内に漂うエアロゾルに含まれて拡散する状態が必要とも考察しました。

感染拡大はこれによるものだけではありませんが、これも大きな要因の一つであろうと思われます。

mSphere 
2020年10月21日
SARS-CoV-2の空気感染の予防におけるフェイスマスクの有効性
DOI : https://doi.org/10.1128/mSphere.00637-20

マスクにはSARS-CoV-2粒子の対面する人への暴露量を減らす効果と吸い込みを抑える効果があることわかりました。N95マスクは密着して使用しないと防御効果が低減すること、また、マスクだけではウイルスの吸い込みを完全に防ぐことができないことも明らかになりました。

以上は、東京大学医科学研究所の研究ですが再度お出しします。

マスクは、飛沫感染のみならずエアロゾル感染に対しても、完全ではありませんがちゃんと効果があります。

どこかの経済学者が、全く意味がないなどといっていましたが、とんでもありません。

 

マスクをつけるつけないは本来全く個人の自由です。我々医療者はこの世界に就労して以来、常にマスクを着けていますので、まずはずすことはありません。

国は高齢者を守ってくれませんので、これからは我々が自らを守っていかなければいけない時代になりました。