ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

4回目接種2

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この以前書の記事の中で、「医療従事者の感染に対するワクチン有効性が低く、ウイルス量が比較的多いことから、感染者が感染性であることがわかりました。したがって、健康な若い医療従事者への4回目のワクチン接種は、わずかな利益しか得られない可能性があります。高齢で脆弱な集団は評価されませんでした。」

と書かせていただきました。これが最初のちゃんとした4回目ワクチン接種の論文かと思います。

にもかかわらず、厚労省は4回目接種の準備を全国の自治体に指示したということです。

NHK
2022年3月24日
4回目接種準備開始了承も効果など慎重検討を 意見相次ぐ
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/79819.html

 

新型コロナウイルスワクチンの4回目の接種について、24日厚生労働省の分科会で議論が始まり、4回目に向けた準備を始めることは了承されましたが、接種の目的や効果などを慎重に検討するべきだという意見が相次ぎました。
厚生労働省は24日、4回目の接種をすべての希望者に行うことを想定して、近く全国の自治体に接種券の配送や職員の確保などの準備を始めるよう求める考えを示しました。
分科会では準備を始めることは了承された一方、「3回目までの効果や費用を評価して、4回目が本当にすべての人に必要か議論すべきだ」とか、「対象者を重症化リスクの高い高齢者やエッセンシャルワーカーに絞るべきではないか」といった意見が出されました。
また、「4回目を公的な予防接種に位置づけるかも含めて考えないといけない」とか、「海外で推奨していない国もあり、データも少ないので有効性や安全性を十分に議論すべきだ」、「準備をしつつやめるという選択肢も持ったほうがいい」といった慎重な意見も相次ぎました。

4回目接種は、まだ医学的根拠が十分にはありません。筆者も現段階では対象者を高齢者や基礎疾患のある人に限った方がよいと思います。

なぜ国が4回目接種を急ぐのか、理由がよくわかりません。

 

忽那賢志先生も言われています。

4回目のワクチン接種の効果によって明らかになってきた、既存の新型コロナワクチンの有効性の限界
忽那賢志 感染症専門医 3/20(日) 7:00
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20220320-00287289

オミクロン株に対する中和抗体は4回接種後も不十分。
オミクロン株に対して十分な中和抗体が産生されないことは、十分に感染を防ぐことは難しいと推測されます。
4回目のワクチンの感染予防効果は11〜30%。
3回目の接種から4ヶ月後以降に4回目のワクチン接種をした高齢者では、4回目を接種していない高齢者と比較して感染者が半分、重症化した人が4分の1であった、とのことです。
これらのデータを元に、ファイザー社はアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)に65歳以上の高齢者に対する4回目の接種に関する申請を行ったとのことです。

以上のように、4回目のワクチン接種の効果や安全性に関する情報は限られていますが、3回目と4回目とでは大きな効果の差はなく、少なくとも「全員が4回目の接種をしたらコロナは終息する」ということは期待できなさそうです。

高齢者では時間経過とともに重症化を防ぐ効果も下がってきますので4回目を接種する意義はあるでしょう。
病院内でのクラスターを少しでも防ぐという意味では医療従事者も接種対象になると思われます。
しかし、すでに3回接種を完了して重症化リスクが大きく下がったそれ以外の人たちにとって、3回目からたった4ヶ月の間隔で4回目の接種を行うのは現実的ではないでしょう。

 

4回目接種に前のめりになっているのは、単なる政治的パフォーマンスか或いはワクチンが余ってしまっているということでしょうか?

筆者の職場のある地域ではまだ3回目接種の途中であり、まだまだ接種が進んでいません。

今の3回目接種に力を注ぐべきで、その集中をそぐような4回目議論はまだすべきではないと思います。

3月24日のワクチン分科会で反対意見が相次いだというのもうなずけます。

そのうちに議事録が公開されるでしょうから、どなたがどんな意見を言われているか見てみたいと思います。(3回目ワクチン接種を8か月以降と決めた分科会ですから)