ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

子供とCOVID-19ワクチン 2

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drhirochinn.work

子供におけるワクチンに関しては、過去の記事で触れたように、mRNA ワクチンの有効性と安全性は、第3相臨床試験までは、確保されています。将来的に必要性が変化してくると思われますが現時点で小児に対してのワクチン接種の考え方に関しては、日本小児科学会の判断が一般的と思われます。

www.jpeds.or.jp

この中で、

『 1)重篤な基礎疾患のある子どもへの接種
国外では、神経疾患、慢性呼吸器疾患および免疫不全症を有する子どもの新型コロナウイルス感染例において、COVID-19の重症化が報告されています。国内においても接種対象年齢となる基礎疾患のある子どもの重症化が危惧されますので、ワクチン接種がそれを防ぐことが期待されます。
子供本人の健康状況をよく把握している主治医と養育者との間で、接種後の体調管理等を事前に相談することが望ましいと考えます。

2)健康な子どもへの接種
12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種は意義があると考えています。COVID-19予防対策の影響で子どもたちの生活は様々な制限を受け、子どもたちの心身の健康に大きな影響を与え続けています。小児COVID-19患者の多くは軽症ですが、まれながら重症化することがありますし、同居する高齢者の方がいる場合には感染を広げる可能性もあります。
小児COVID-19が比較的軽症である一方で、国外での小児を対象とした接種経験等では、ワクチン接種後の発熱や接種部位の疼痛等の副反応出現頻度が比較的高いことが報告されています。‥‥ 』

 

しかし反対に積極的に小児に対してもワクチン接種した方がよいという考えもあります。

pediatrics.aappublications.org

アメリカ小児科学会
COVID-19に対する子供の強制予防接種の検討
スタンリー・A・プロトキンとオフェル・レビー
小児科2021年6月、 147 (6)e2021050531; DOI:https://doi.org/10.1542/peds.2021-050531

 

『 症候性COVID-19は小児ではあまり一般的ではありませんが、小児多系統炎症性症候群(MIS-C)と死亡の形での小児COVIDが報告されており、小児ワクチン接種の重要性が強調されています。胃腸管でのウイルス複製を含む幼児の高いウイルス量は、子供へのワクチン接種が成人の保護に役立つはずであることをさらに示唆しています。ワクチンが子供たちに非常に効果的であるならば、彼らは彼らと接触している親、教師、そして他の人々を保護します。
米国小児科学会は2020年12月に、200万を超えるCOVID-19の症例がすでに子供に発生していると指摘しました。22州に住む子供たちの有病率のレビューは、10万人あたり17.2人の入院率を明らかにし、カナダでは、子供たちが臨床疾患の確認された症例の1.9%を占め、それらの症例の約7%が集中治療をもたらしました。 COVID-19は5歳未満の子供で重症になる可能性がありますが、12〜17歳の子供では重度の感染症の割合が高いことが報告されています。加えて、川崎病のようなMIS-Cは、8年間の平均年齢で、学齢期の子供に最も頻繁に発生します。
もともと風疹ワクチンは、妊娠中の女性の感染を減らすために血清反応陰性の成人にも接種されますが、主な疫学的目的である妊婦の保護に役立つのは子供のワクチン接種です。同様に、子供に与えられたCOVID-19に対するワクチンは、子供と接触している大人を保護するのにも役立ち、若年成人への直接ワクチン接種とともに、高齢者を感染から保護するのに役立ちます。
子供のウイルス循環を減らすことにより、小児の免疫化は、COVID-19を制御し、通常の社会的、教育的、経済的活動に戻るための私たちの最善の希望かもしれません。』

 

参考

小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory Syndrome in Children) (MIS-C) または (Pediatric Inflammatory Multisystem Syndrome) (PIMS))は、小児にみられる重度炎症性疾患の一種である。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連性が指摘されている。
症状
PMISの主な症状は、重度の血管の炎症、発疹、激しい腹痛、発熱の継続、舌の腫れ、心臓障害、神経損傷などである。
発疹、腹痛、発熱の継続、舌の腫れなど川崎病との類似点がある。一方で好発年齢が年長の子どもや青年期の若者など川崎病よりも高いなどの違いもある。

 

以上などの理由により法制化して、強制的に小児にワクチン接種した方がよいという意見もあります。

 

news.yahoo.co.jp

「ワクチン接種の進んだイスラエルで、感染力が強いデルタ株(インド型)の変異ウイルスによる感染が拡大している。
新規感染者は当初ワクチン接種の対象となっていなかった15歳以下の子供が多い。政府は今後の状況次第で、15日に撤廃したマスク着用規制の復活も視野に入れている。」

と伝えられています。

まず今の日本では、成人のワクチン接種を急ピッチで進めることが重要で、ある程度進んだ時点で小児のワクチンもインフルエンザと同様開始することになるように思われます。この時は、小児科のかかりつけ医での個別接種になるものと思います。

いずれにしろ我々の子供や孫の健康や命をまず最優先に考えて、ワクチン接種の要否を判断していくべきであると思います。

 

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