ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

抗体

 

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今回は、細菌やウイルスなどの病原体から我々の体を守る働きである免疫機能の一つである抗体の話です。先の記事「免疫のしくみ」でも出てきましたが、様々な抗原と特異的に結合できる免疫グロブリン分子であり、我々の血液や体液に多量に存在しています。

 

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構造

構造は上図のごとく、2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)、計4本のポリペプチド鎖から構成されたY字型構造を取ります。
実際に抗原に結合する部位は、Y字の先端の部分で抗原結合部位と呼ばれます。一つの抗体はある特定の抗原を認識します。これを「抗体の特異性」といいます。

1種類の抗体は1種類のB細胞によって作られるため、多様な抗原に対して各々のB細胞は、それぞれ異なる抗体を産生することができます。

つまり、抗体の可変領域には抗原が、定常領域には免疫細胞が結合しますので、抗体の生物活性は、可変領域を介した抗原に対する結合力と定常領域を介した免疫細胞による異物除去活性によって決まります。

 

抗体の種類

H鎖遺伝子の定常領域の違いにより、IgM、IgD、IgG、IgA、IgEの5つの抗体クラスに分けられます。

IgM:ヒト血清免疫グロブリンの約10%を占めます。体内に侵入した異物とB細胞が遭遇した時に最初に産生される抗体です。これが結合しているとほかの免疫機能がその異物を捕食しやすくなります。そしてより捕食しやすくなるようにこの抗体の基本形は5つ円形に結合した構造になっています。

IgD:ヒト血清免疫グロブリンの1%以下です。B細胞の抗体産生の誘導に関与するといわれていますが、詳しくはまだわかっていません。

IgG:ヒト血清免疫グロブリンの70~75%を占めます。危険因子の無毒化、白血球やマクロファージによる抗原・抗体複合体の認識に重要です。この抗体はB細胞が異物を認識してから産生されるまで時間がかかる欠点はありますが、持続力が高いためいったん血液の中に放出されるとそこから長い期間、血液の中にとどまり体を守ります。

IgA:ヒト血清グロブリンの10~15%を占めます。血清、鼻汁、唾液、母乳中、腸液に多く存在します。

IgE: アレルギー反応の原因となることがある抗体です。IgEがアレルゲンと遭遇するとヒスタミンなどの化学物質を放出します。これにより様々なアレルギーが引き起こされます。

アレルゲンとは、アレルギー反応の原因となる物質のことで食物(卵、乳、小麦、そば、エビ、カニ、ピーナッツ)、ダニ、カビ、花粉、化学物質などがあります。

 

 抗体の役割

 血液中や粘膜中に分泌された抗体は、外来の異物(病原体、毒素)に直接結合してその毒性や生理活性を失わせる力(中和作用)を、持っています。抗原・抗体複合体には、補体を活性化して最近の細胞壁に穴をあけて殺傷する能力があります。さらに抗原と結合した抗体の定常領域を介して、この受容体を発現する貪食細胞によって効率的な食作用を促す(オプソニン化)働きがあります。

抗体の概要について、お話させていただきました。

 これから日本で接種されるであろう、 Pfizer/BioNTech 社製とModerna社/NIAID製の2種類のmRNAワクチンは新型コロナ感染症を引き起こすウイルス表面のスパイクたんぱく質の遺伝情報を含んでいます。そのため接種するとmRNAの情報に基づいてヒトの細胞表面にスパイクたんぱく質が形成されます。ヒトにとっては異物であるこのスパイクたんぱく質を認識した免疫系によって抗体が作られることで、本物のウイルスが侵入しようとしてもブロックされ、感染を防御するという仕組みです。

 

先日総理大臣に最後に質問していたジャーナリストの言う通り、ワクチン一つ作れない、情けない科学立国ぶり。

自分たちは勝手に飲み食いしておきながら、国民にだけ法律を作って自粛を強制する無能な政治家たち。

オリンピックの基本理念を踏みにじって放言を繰り返す、老害元首相。

この国の悲劇は政権や官僚機構の腐敗・不作為に起因するものと思われます。

せめて、ワクチン接種が国民に滞りなく安全に実施されますように、お互い協力しあって進められることを願うばかりです。

最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

  

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