面白い論文が出ました。筆者はその昔、腹部外科医をしていたのは、過去の記事でお書きした通りですが、外科医の誕生日は手術に影響するかどうか調べた興味深い論文が出ました。(こういう論文が、私は好きです。)
Patient mortality after surgery on the surgeon’s birthday: observational study BMJ 2020、 (Published 10 December 2020): BMJ 2020;371:m4381
概要
目的:外科医の誕生日に行われる手術間で、手術後の患者の死亡率が他の日の手術の死亡率と異なるかどうかを判断すること。
参加者:2011~2014年に17の一般的な緊急外科手術の一つを受けた65~99歳の100%有料のメディケア受益者。 (メディケア;アメリカ合衆国における高齢者及び障害者向け公的医療保険制度)。術後30日以内の死亡率を、測定しました。
結果:47489人の外科医によって実行された980876の手術が分析されました。手術の2064(0.2%)は、外科医の誕生日に行われました。手術の難易度は誕生日以外に行われた手術と同等でした。外科医の誕生日の30日死亡率は7.0%(145/2064)であり、他の日は5.6%(54824/978812)でした。
この結果は、手術を行う外科医の誕生日に一般的な緊急手術を受けた患者の30日死亡率は、誕生日以外の日に手術を受けた患者のそれより高かった。ということと、外科医のパフォーマンスが仕事と直接関係しない、潜在的に気を散らすライフイベントによって、影響を受ける可能性があることを示唆しています。
私としては、自分の誕生日に緊急手術をしなくてはならないという、医者の現実に同情するとともに、自らのプライベートが患者の命をも左右するという医師の責任の重大性を、改めて強く再認識しました。
今回は、ちょっとコロナを離れて、休憩を入れさせていただきました。
また次回は、コロナでお会いいたします。