ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

c o v i d -19と医療従事者の死

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どの時代においても、世界中ほぼどこにおいても人々は肉体や精神の苦痛からの解放や健康への復帰に迫られ、助けを求めて医療機関にやってきます。そこでは医師や医療従事者に体のすべての部位を見せ、触り、動かすことを許します。

人々がそうするのは、医師や医療従事者は患者の最善の利益のために行動すると信頼しているからです。

この信頼に応えるべく医師は共感(compassion)、能力(commpetence)、自律(autonomy) を持って患者の治癒(cure)、治療(care)に全力であたります。

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将来的に科学の進歩や社会・政治・経済的原因によって医療にどのような変化が起きたとしても、常に病人がいれば我々医療従事者の役割・責任は何ら変わることはありません。

一方、C O V I D -19の初療を手掛けたり、感染症病棟で勤務する医療従事者は、自らの生死にかかわる過酷な勤務を遂行するばかりでなく、誹謗中傷にさらされたり、混乱したりしている家庭環境の中にいる大切な家族をもまた、守るという責任・義務があります。

医療従事者は、自分が自分自身や自分の家族に対しても責任を負っていることを忘れやすいものです。世界各地で、医療従事者であることに対しては、自分の健康や福祉をほとんど考えずに、医療の実践に自己を捧げることが求められてきました。

しかし、残念ながら世界各地で医療従事者が、 仕事中 C O V I D -19に感染して亡くなっています。

・ 熊本市内の70代男性医師がコロナで死亡。(5月9日、産経新聞)

・ 大阪府内にある診療所の医師二人がコロナで亡くなったと報道されました。(6月24日、京都新聞)

・ 兵庫県小野市の病院長が公務中にコロナに感染し死亡。(7月28日、毎日新聞)

・ CNNは、米テキサス州のICU勤務の51歳の医師がコロナにて亡くなったと伝えました。(12月8日)

・ 同じくCNNがインドにて新型コロナにて医者200人が死亡と伝えています。(8月16日)

・ インドネシア医師協会は、院内感染で100人の医師が死亡したことを発表しました。(9月1日、ジャカルタ新聞)

・ 同じく、インドネシア医師協会によると、新型コロナウイルスに感染して死亡した医療従事者が9月13日時点で115人に達したそうです。(9月17日、ジャカルタ新聞)

・ 医療従事者の死亡がロシアで70人、ベラルーシで4人と報じられました。(5月1日、JIJI.COM)

・ ブラジルで看護師が世界最多となる137人死亡。(5月28日、静岡新聞)

・ 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは新型コロナウイルス感染で死亡した医療従事者が79か国で3000人を超えると発表しました。 最も多いのはロシアの545人、英国540人、米国507人、ブラジル351人。(7月14日、JIJI.COM)

・ フランスでは新型コロナウイルスで感染した医療従事者がおよそ2万6000人にのぼっており、このうち16人が命を落としました。(8月5日、TBSテレビ)

・ 国際看護師協会は11月5日までに新型コロナウイルスに感染し死亡した看護師が世界規模で1500人に達したと発表しました。(11月5日、CNN)

・ イギリスで出産間際まで仕事をしていた看護師さんが二人の子供とご主人を残して亡くなられたという痛ましい記事も目にしました。

www.bbc.com

以上亡くなられた方々の多くは、医療職でなければ命を落とさずに済んだであろうことと、その方々には大切なご家族がおられたであろうことを考えると、言葉がありません。

多くの国々があることを考えると、これらはごく一部の事例であると思われます。

これらの報道に触れる機会が日本では少ないため、一般の国民は医療従事者の危険性を、あまり理解していないのではないかと思います。

恐らく、このまま重症者が増えて医療崩壊が進んでいけば、医療従事者が危険な職場から安全な職場へと流れていくことと思いますが、このことを非難できる人は、誰もいないと思います。

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感染者数・重症者数・死亡者数の増加が日々更新されている今日、我々国民は、感染防御方法をより厳密に実行していく必要がありますし、感染拡大の責任を国民に押し付けている政府や地方自治体の首長らが、思いなおして感染防止に有効な施策を直ちに実施していく必要があります。

医療を社会インフラと捉えるだけでなく、一人一人の医療従事者の安全や健康に目を向けてこそ、医療体制がより強化されていくものと、私は信じています。

お忙しい中、最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

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