ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

スウェーデンのCOVID-19 について思うこと

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スウェーデンの C O V I D -19 対策が世界の注目を集めています。ほかの欧州諸国のようにロックダウンなど厳しい規制を導入しなかったためです。

そもそもスウェーデンにおける第一例目は、一月下旬武漢より帰国した20代の女性でした。その後スウェーデン国民の二月のスポーツウィーク(学校が一週間の休みになる)中の海外旅行の影響なのか、三月に入り感染が急拡大しました。

スウェーデンでは、エビデンスがないとか、憲法で「国民の移動の自由」が保障されているなどの理由で都市閉鎖(ロックダウン)は行われず、ソーシャルデイスタンスを取ることや医療機関での面会禁止、大人数でのイベント禁止、手洗いなど個人の感染防御の奨励などで対応しました。医療資源の拡大(新型コロナ感染者用病棟や I C U の増床)、介護施設への訪問禁止などにも力を入れてきたようです。

第一波が終息するまで、毎日14時から関連省庁の代表が合同記者会見を開き、感染状況について最新データを示して国民に説明し、その後時間無制限で報道の質問を受けたそうです。しかもデータは全て省庁のホームページから誰でも閲覧が可能であるようです。

又、日本と同じ国民皆保険であり、人口当たりの病床数は、 O E C D 諸国の中でも少ない方ですが、大病院はほとんど国立であり、中央主導で感染症病床を上限なく増やすことができました。

一方、 I C U 入室にあたってのトリアージは厳格にされており

① 80歳以上の患者

② 70歳代で1つ以上の臓器障害を有する患者

③ 60歳代で2つ以上の臓器障害を有する患者

は、 I C U 治療の適応外だそうです。

スウェーデンにおいて人口10万人当たりの死亡者数は、世界で13位と高く、死亡者における高齢者の割合は非常に高く、およそ90%は70歳以上の高齢者でそのうち50%は介護施設に居住していました。

介護施設の感染者の多くは病院へ搬送されることなく、治療設備のない介護施設で30%はそのまま亡くなったとのことです。

10月に入り欧州全体で第二波が襲うに伴いスウェーデンも、10月上旬には一日当たりの感染者が1000人を下回る水準でしたが10月中旬以降5000人前後になり、累計死者数は6100人超で人口10万人当たりの死者数60.5人は隣国ノルウェーの11倍、フィンランドの9倍にあたります。

結局スウェーデンの対コロナ対策の基本は、厳格なロックダウンを避け厳しい行動規制を課さないもので外から見ますとほとんど何もしないようにすら見えますが、対策はある程度されてはいるようです。

しかしうがった見方をすると、コロナ弱者である高齢者が死亡していって減少するにしたがって現在の若年者を中心とした生存者に対しては、規制強化の路線に舵を切り手厚い対策を取っていくつもりのように見えます。当局は「集団免疫」は目指していないと発表していますが、主目的ではないにしろ目標の一つではあるでしょう。

集団免疫論に関しては、9月にブラジルのサンパウロ大学などが、ブラジルのマナウス地域で新型コロナに感染した人が66%に達し、集団免疫に至り流行が下火になったとの論文を発表しました。しかしこの手の疫学上の研究データにはバイアスがたくさんかかっていることが多く、真偽のほどはよくわかりません。

実際、亡くなるべき人が亡くなっていった結果の可能性もあると思われます。

私は個人的には、スウェーデンのコロナ対策において感染者に対するトリアージ、要するに「命の選別」を国全体で推進していること自体が、到底受け入れられません。「合理性」などという言葉は、「命の尊厳」と比べたら全く次元の違う、レベルの低い言葉です。

現在日本において、医師会の要職にあるお医者さんやコロナ最前線で働く医師たちの発言は、すべて「命の尊厳」や「医の倫理」が、頭ではなく体に染みついている人たちの言葉のように、私には聞こえます。今後もご自身の信念に基づいて、政府や国民に提言・発信していって頂きたいと強く思います。

最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

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