ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

療養期間の短縮

 

皆さんおはようございます。

去る9月7日に、コロナ陽性者の療養期間が短縮されました。有症状陽性者については、入院患者さんの場合はこれまでと同じく10日間かつ症状軽快後72時間という基準ですが、入院以外の軽症者については7日間かつ症状軽快後24時間という基準となりました。

事 務 連 絡
令 和 4 年 9 月 7 日

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部
新型コロナウイルス感染症の患者に対する療養期間等の見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/content/000987035.pdf

1 有症状又は無症状患者の療養期間等について、下記のとおりとすること。
(1)有症状患者(※1)
(a)(b)以外の者
・発症日から7日間経過し、かつ、症状軽快後 24 時間経過した場合には8日目から解除を可能とする。
・ただし、10 日間が経過するまでは、感染リスクが残存することから、検温など自身による健康状態の確認や、高齢者等ハイリスク者との接触、ハイリスク施設への不要不急の訪問、感染リスクの高い場所の利用や会食等を避けること、マスクを着用すること等、自主的な感染予防行動の徹底をお願いする。
(b)現に入院している者(※2)(従来から変更無し)
・発症日から 10 日間経過し、かつ、症状軽快後 72 時間経過した場合に 11日目から解除を可能とする。
※1 人工呼吸器等による治療を行った場合を除く。
※2 高齢者施設に入所している者を含む。

筆者の診療所ではこの変更に関して悩みました。

10日間休むのと、7日間休むのでは、当然後者のほうがマンパワーに対する負担が軽くなります。
しかし、問題になるのは感染性がどのくらい残っているかです。国立感染症研究所のデータによると、オミクロン株の感染者のうち、短縮解除となる8日目の時点で全体の16%が感染性を有しているとされており、病院職員の解除を7日間とするには、なかなか勇気が要ります。もちろん、これを従来通り10日間としても、一定数の割合で感染性を持つ陽性者がいますので、ゼロリスクにすることはできません。
短縮の通知には但し書きがあって、「10日間が経過するまでは、感染リスクが残存することから、検温など自身による健康状態の確認や、高齢者等ハイリスク者との接触、ハイリスク施設への不要不急の訪問、感染リスクの高い場所の利用や会食等を避けること、マスクを着用すること等、自主的な感染予防行動の徹底をお願いする」とあります。

いつもながら役人さんのいわれることには感心させられます。

「一般企業の人たちは、経済活動を考えて7日間に短縮するが、医療機関や介護施設などでは7日間で解除したとして、もしクラスターを発生させたらあなた方の責任ですよ。」

と言ってるように筆者には聞こえます。

新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに提出された感染研のデータでも、7日目以降も感染性が残存する可能性にふれています。


発症日から最終ウイルス分離陽性日までの累積密度分布関数
データ:オミクロン株感染者を対象とした積極的疫学調査により得られたオミクロン株症例の中で鼻咽頭スワブ検体からウイルス分離が可能だった症例のうち、発症日から最終分離日までの日数が得られた合計57症例(無症状は発症日が得られないため除外
した)。一度も分離できなかった症例に関しては本分析からは除外している。
解析方法:
• 発症日~最終分離日のデータについてガンマ分布、対数正規分布、ワイブル分
布、正規分布を最尤推定法を用いてパラメータ推定
• AIC(赤池情報量規準)で最も当てはまりが良かったワイブル分布を採用
• 3000回のブートストラップを実施し、累積密度の中央値と95%CIを計算
結果:
1-累積密度が残存リスクであるとすると、発症日から数えた隔離解除日が8日目で
少なくともで16.0% (95%CI: 8.2-24.5%)、9日目で10.2% (95%CI: 4.2-
17.3%)、10日目で6.2% (95%CI: 2.0-12.0%)の残存リスクを認める。残存リス
クが10%になるのは9.0日 (7.7-10.5日)であった。

ご丁寧に以上のデータは、BA1のデータであってBA5では不明であるとことわられています。

これだけBA5が猛威を振るっていたのですから簡単にデータがとれたはずです。もっともBA5で同じようなデータであったら7日に短縮できなかったでしょうが。

 

結局筆者の診療所では、従来と同じ10日のままと致しました。