ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

サル痘2



以前サル痘に関する記事を書かせていただきました。

drhirochinn.work

今日はこの続編です。

その後海外の感染は拡大しているようです。

“サル痘”世界で拡大 ヒトへの感染で変異加速か
6/25(土) 12:29配信  テレビ朝日系(ANN)
https://news.yahoo.co.jp/articles/f2dbee57fb4d6278a64e52729658b46ef92cf375

世界で感染が広がっているサル痘について、ヒトへの感染によってウイルスの変異が加速している可能性が指摘されました。
医学誌「ネイチャー・メディシン」に24日に掲載された論文によりますと、15例のサル痘ウイルスのDNAを解析したところ、2018年から2019年に確認されたウイルスと比較して、およそ50カ所の変異が見つかりました。
サル痘を含む近縁のウイルスの推定される変異ペースの6倍から12倍だということです。
この論文は「重大な内容」だとして査読前の段階で公表されました。サル痘は、これまでに3500件以上の感染が報告されています。

お隣の韓国の国内でもサル痘の患者が確認されたとのことです。アジアではオーストラリア、シンガポール、台湾などでも確認されており、日本に入ってくるのは時間の問題かもしれません。

Medical Tribuneに岡山理科大学獣医学部微生物学教授の森川茂氏が緊急寄稿されています。

抜粋してお伝えします。

アフリカの風土病「サル痘」-今分かる知識
岡山理科大学獣医学部微生物学教授 森川茂
2022年06月24日 17:35

 

米国では、2019年に米食品医薬品局(FDA)が承認した「天然痘およびサル痘ワクチン」(MVA-BN)がある。天然痘のワクチンはサル痘にも有効だが(米国の研究では85%交差有効性があるとされる)、天然痘が根絶されて種痘(天然痘のワクチンを接種すること)が停止されたため、多くの人に免疫がない。日本では1977年に正式に中止となったが、前年の1976年には既に接種率は低くなっていた。定期接種時代に種痘を受けた人は、今でも免疫が持続していると考えられている。

下記の記事は、2006年の文献ですので、今40代後半の人以上は種痘を受けており、サル痘に対する免疫がある程度あるようです。

モダンメディア 52 巻 2 号 2006[免疫]
種痘廃止して 28 年目の痘瘡抗体保有状況
https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/MM0602-06.pdf

天然痘に対する種痘の感染防御効果
Dixon の集計が有名であり、初種痘後の年数と推定防御効果は、1 年で 99.9%, 3 年で 99.5%, 10 年で87.5%, 20 年で 50.0%, 20 年以上では推定不能とされている。
今回の調査から、過去に種痘を受けた世代の約 80%に 4 倍以上の中和抗体が認められ、約 1/4(22/83, 26.5%)に感染予防レベルの中和抗体価が保有されていることが判明した。
種痘が廃止された 1976 年近くに生まれた 28 ~ 34 歳代の層は 1 回接種の可能性があるにも拘らず抗体保有率、抗体価とも他の年齢層と差異がなかった。また、種痘廃止後世代の 27 歳以下の人達においては当然のことながら全く抗体を保有していないことが確認できた。

 

アフリカの風土病「サル痘」-今分かる知識
岡山理科大学獣医学部微生物学教授 森川茂
2022年06月24日 17:35

 

治療法およびワクチン
治療法は、天然痘がバイオテロに用いられた場合の対応策として米国で開発された抗ウイルス薬がある。tecovirimat(開発コードST-249)は2018年に、シンバイオ社のDNAウイルス全般に有効なcidofovirの経口投与薬であるbrincidofovirが昨年(2021年)にFDAに承認されている(日本未承認)。同薬以外にも幾つか有効とされる抗ウイルス薬が報告されている。
天然痘根絶時に使われたワクチンは副反応が多く、10万~20万人に1人程度の死亡者が出ている。そこで、FDAは前述の増殖欠損型ワクチニアウイルス(MVA-BN株)を承認している。
日本には、橋爪壮先生が開発したLC16m8株の細胞培養痘瘡ワクチンが承認されている。しかし、国家備蓄ワクチンとして製造されているため、一般市場には流通していない。このワクチンは副反応が非常に少なく有効である。サル痘にも有効であることが、サル痘ウイルスのサルへの感染実験で証明されている。

国内外の発生状況
サル痘ウイルスには、コンゴ盆地型と西アフリカ型があり、前者の病原性が強いとされ、致死率は1〜10%とされる。サルへの感染実験でも確認されている。
2017年からナイジェリアで流行したサル痘は、西アフリカ型によるが、従来の西アフリカ型よりも強毒と思われ、89例中6例が死亡している。
サル痘患者は増加し続けており、6月22日現在、42カ国で3,308例が報告されている。

水際での阻止は困難
潜伏期間は5〜21日(平均12日)とされており、潜伏期間中の感染者が入国するリスクは常にある。そのため、水際での摘発は困難な場合がある。また血清疫学的なサーベイランスは、先述のように種痘歴のある人は数十年たっても抗体があり、種痘による抗体とサル痘の抗体が鑑別できないことから、種痘歴のない人に限定される。
欧州や北米での感染経路は、濃厚接触者間で起きていることが明らかになってきた。今後、これ以外の経路による感染が起こるかによって、終息するのか拡大するかが決まると思われる。

患者の寝具や服は滅菌・消毒を
サル痘ウイルスを含むオルソポックスウイルスは、乾燥には極めて強く、患者のかさぶたに含まれるウイルスは長期間感染源になりうる他、液体の状態でも37℃で1カ月経過しても感染価が10分の1も落ちない(コロナウイルスなどは、37℃では短期間で感染性がなくなる)。血液中では感染した単球中に主にウイルスがいる。そのため、感染が確定診断された患者が触れた寝具や下着、服などは滅菌・消毒する必要がある。

今のところ以上がサル痘に関する最新情報のようです。