ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

サル痘

 

 

サル痘という感染症が世界で問題になっているようです。

ちょっと一回まとめてみたいと思います。

NIID国立感染症研究所

サル痘とは 
令和4年5月20日改定 国立感染症研究所

サル痘は、サル痘ウイルス感染による急性発疹性疾患である。感染症法では4類感染症に位置付けられている。主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、自然宿主はアフリカに生息するげっ歯類が疑われているが、現時点では不明である。稀に流行地外でも、流行地からの渡航者等に発生した事例がある。症状は発熱と発疹を主体とし、多くは2−4週間で自然に回復するが、小児等で重症化、死亡した症例の報告もある。

病原体
ポックスウイルス科のオルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症で大きく分けてコンゴ盆地系統群(クレード)と西アフリカ系統群(クレード)の2種類の遺伝的系統群があり、コンゴ盆地系統群は西アフリカ系統群に比較して、重症化しやすく、またヒトからヒトへの感染性が高いとされる。

感染源・感染経路
サル痘ウイルスの動物からヒトへの感染経路は、感染動物に咬まれること、あるいは感染動物の血液・体液・皮膚病変(発疹部位)との接触による感染が確認されている。自然界ではげっ歯類が宿主と考えられているが、自然界におけるサイクルは現時点では不明である。
ヒトからヒトへの感染は稀であるが、濃厚接触者の感染や、リネン類を介した医療従事者の感染の報告があり(Aaron TF. 2005, Aisling V. 2020)、患者の飛沫・体液・皮膚病変(発疹部位)を介した飛沫感染や接触感染があると考えられている。

流行地
サル痘は1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)で初めて報告されて以降、アフリカ中央部から西部にかけて主に発生してきた。
2022年4月24日現在、アフリカ大陸では中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ナイジェリアで発生が持続しており、特にコンゴ民主共和国では2022年1月以降1,152例の患者と55例の死亡例が報告されている(WHO AFRO, 2022)。
一方、アフリカ以外でも、過去に流行地域からの帰国者で散発的に発生報告が見られていた。
日本国内では感染症発生動向調査において、集計の開始された2003年以降、輸入例を含めサル痘患者の報告はない。
2022年5月、海外渡航歴のないサル痘患者が英国より報告され、また、欧州、米国でも患者の報告が相次いでおり、調査が進められている。

臨床像
サル痘の潜伏期間は5~21日(通常7~14日)とされる(WHO, 2021)。潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などが1~5日続き、その後発疹が出現する。発疹は典型的には顔面から始まり、体幹部へと広がる。初期は平坦であるが、水疱、膿疱化し痂皮化した後、発症から2~4週間で治癒する。
致命率は0~11%と報告され(Skelenovska N, 2018)、特に小児において高い傾向にある(Jezek Z, 1987)。ただし、先進国では死亡例は報告されていない。
水疱擦過物の塗沫(Tzanck smear)、水疱内容物、痂皮、血液が検査材料となりうる。電子顕微鏡によるウイルス粒子の確認、蛍光抗体法によるウイルス抗原の検出、抗ウイルス抗体の検出等が可能であるが、オルソポックスウイルス属の他のウイルスとの判別は不可能である。
そこでサル痘の特異的診断法は上記の水疱内容物や痂皮などを検体として用いた遺伝子検査やウイルス分離による。遺伝子検査はサル痘ウイルス遺伝子に特異的なPCRによる診断を行う。サル痘が疑われた場合は、最寄りの保健所を経由して国立感染症研究所での検査を実施する。

治療法
対症療法が行われる。
シドフォビルはサイトメガロウイルスの治療などに海外で使用されている抗ウイルス薬であり、動物実験でサル痘への有効性が確認されている。シドフォビルの誘導体であるBrincidofovir(CMX001)も同様に動物実験での有効性が確認されており、シドフォビルと比較し有害事象が少ないとの報告もあるが、国内では現在流通していない。
Tecovirimat(ST-246)も動物実験でオルソポックスウイルス感染症に有効であることが示され、またヒトに対しての安全性も確認されている。米国では天然痘に対する承認が得られており、サル痘に対してはInvestigational New Drug (IND)としての使用が可能である。欧州で天然痘、サル痘に対しての承認が得られている。国内ではBrincidofovir同様現在流通していない。

天然痘のワクチンである痘そうワクチンがサル痘予防にも有効であるが、日本では1976年以降、痘そうワクチンの接種は行われていない。サル痘ウイルス曝露後4日以内に痘そうワクチンを接種すると感染予防効果が、曝露後4-14日で接種した場合は重症化予防効果があるとされている(CDC. 2021)。

 

Medical Tribune
サル痘、国内外の最新状況を解説
国立感染症研究所調査の第一報  2022年05月27日 16:15

今年(2022年)5月以降、欧米を中心にサル痘罹患例が相次いで報告されており、現時点で20カ国超の200例以上の罹患例と100例以上の疑い例が確認されている。これまでにサル痘の流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(常在国)への渡航歴のない罹患例も報告されており、前例のない流行であるという。

1)常在国以外での報告としては前例のない規模
これまで、常在国以外での報告は常在国からの輸入症例が大半だったが、今回の報告は常在国外からの同一期間の一連の報告として、発生国数、症例数が前例のない規模であるという。

2)男性間の性的接触による伝播の可能性
欧州疾病対策センター(ECDC)は、今回報告された罹患例の多くは若年男性で、男性間性交渉者(men who have sex with men;MSM)が多く含まれており、一部の症例では陰部病変を有していたことから、「性的接触での伝播が示唆される」と推測している。また、セックスパートナー以外の濃厚接触があった者では継続的な伝播は報告されていないことから、性的コミュニティーの一部にサル痘が持ち込まれた可能性を指摘している。

3)日本ではこれまで報告なし
日本では5月24日時点でサル痘の報告はない。大規模な市中感染の可能性は低く、日常生活における感染リスクは低い。ただし、今後国内でも罹患者が出る可能性があることから、検査・診断を含めた体制を整備しておく必要がある。

4)致死率は天然痘20~50%、サル痘0~10%
天然痘に比べ重症化しにくく、致死率は天然痘の20~50%に対し、サル痘では0~10%。ただし、幼児では重症化リスクが高いとされる。

なお、サル痘と名付けられた由来は、1958年にデンマークの研究所で世界各国から霊長類が集められた施設にいたカニクイザルで最初に発見されたため。

まとめると以上のようです。あまり心配しなくてもよいようです。

岸田首相は26日に、訪日外国人観光客の受け入れを6月10日から再開すると表明しました。

これからウイルスが海外から輸入される可能性がありますので、一応知識として持っておくべきであると思います。