ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

抗体保有率実態調査

長年の謎でしたが、ウイルス感染はなぜ寒い時期に増えるのかという疑問に答える一つの研究が出されました。
ウイルス性気道感染症は、冬の時期に増えることが知られていますが、そのメカニズムはこれまで明らかになっていませんでした。ハーバード大学のDi Huang氏らの研究グループは、上気道感染症の原因となるウイルスを撃退する鼻の中の免疫反応を発見しました。さらに、この免疫反応は気温が低くなると抑制され、感染症が発生しやすくなることを明らかにしました。

Journal of Allergy and Clinical Immunology
寒冷暴露は細胞外小胞群を介した鼻の抗ウイルス免疫を損なう
公開日: 2022 年 12 月 6 日DOI: https://doi.org/10.1016/j.jaci.2022.09.037


著者らは、本研究の重要なポイントとして、「鼻腔上皮細胞由来EV(細胞外小胞)が、TLR3を介した抗ウイルス免疫に関与していること」「鼻腔上皮細胞由来EVが、マイクロRNAの輸送および直接的にウイルスを中和することにより、感染を抑制していること」「寒い環境では、鼻腔上皮細胞由来EVを介した抗ウイルス活性が低下すること」の3点を挙げています。

さて過日、第108回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、11月30日に開催されました。その中で鈴木 基氏(国立感染症研究所感染症疫学センター長)らのチームが、「献血時の検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有率実態調査」について結果を報告しました。

2022年11月6日~13日にかけて全国の日本赤十字社の献血ルームなどを訪れた献血者8,260人で、献血時の検査用検体の残余血液を用いて抗N抗体の有無が調べられました。

過去の新型コロナウイルス感染で獲得したとみられる抗N抗体を保有する人の割合は、全国平均で26.5%(95%信頼区間[CI]:25.6~27.5)でした。都道府県別にみると、最高は沖縄県の46.6%(95%CI:41.2~52.1)、最低は長野県の9.0%(95%CI:4.6~15.6)でした。

<抗体保有率(95%CI)の高かった都道府県(上位10都道府県)>
沖縄県:46.6%(41.2~52.1)
大阪府:40.7%(34.7~46.9)
鹿児島県:35.2%(28.8~42.0)
京都府:34.9%(28.5~41.7)
熊本県:32.9%(26.7~39.5)
長崎県:31.9%(25.4~39.1)
東京都:31.8%(26.1~37.9)
神奈川県:31.6%(25.1~38.7)
宮崎県:31.3%(25.0~38.0)
香川県:30.9%(24.1~38.3)

<抗体保有率(95%CI)の低かった都道府県(下位10都道府県)>
長野県:9.0%(4.6~15.6)
徳島県:13.1%(8.2~19.5%)
愛媛県:14.4%(9.1~21.1%)
新潟県:15.0%(9.3~22.4)
岐阜県:15.5%(10.5~21.8)
岩手県:16.5%(10.1~24.8)
広島県:17.1%(11.9~23.6)
島根県:18.5%(12.6~25.8)
秋田県:18.7%(12.2~26.7)
山形県:19.5%(12.6~28.0)

男女別の抗体保有率は、女性26.5%(95%CI:24.7~28.4)、男性26.5%(95%CI:25.4~27.7)で、年齢群別の抗体保有率は以下のとおりでした。

<年齢群別の抗体保有率(95%CI)>
16~19歳:38.0%(33.5~42.7)
20~29歳:35.7%(23.8~38.8)
30~39歳:33.6%(31.0~36.3)
40~49歳:26.8%(24.9~28.8)
50~59歳:21.3%(19.6~23.0)
60~69歳:16.5%(14.4~18.8)

男女による差はなく、年齢が高いほど抗体保有率が低い傾向がありました。

ワクチン接種率の高い高齢者は、感染から守られていたというのと、年齢によって幾分感染後免疫の形成が弱かったこともあるのでしょうか。

地域差・年代差がかなりあります。

海外のように集団免疫に近づいているとは日本はまだ到底言えません。

 

drhirochinn.work

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社会全体がウィズコロナに向けて動いている今日、感染弱者の高齢者が自らワクチン接種や感染予防行動を通して自らを守っていくしかないでしょう。

筆者が勤務する診療所でも患者さんやスタッフのコロナ感染者が最近増えています。高齢者が多く通院する医療機関は、まだまだ厳密にコロナ対策を続けていかなければなりません。

国による高齢者施設や病医院への対策が以前にもましてなおざりになっているように見えて仕方ありません。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。