ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

新型タバコにご注意を!



今回は、新型たばこに関して書かせていただきます。この新型たばこの定義がはなはだ曖昧で初めにはっきりさせておく必要があります。

一般に、加熱式タバコと電子タバコを合わせて新型タバコと呼びます。加熱式タバコと電子タバコは,日本ではタバコの葉を用いるかどうかによって法律上の分類が異なっているだけであり,タバコの葉を使っているのが加熱式タバコ,タバコの葉を使っていないのが電子タバコです。

新型タバコにご注意を!
大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部 副部長 田淵 貴大
https://jata.or.jp/rit/rj/389-28.pdf

1)加熱式たばこ(HTP)
従来のたばこよりも低い温度でたばこを加熱するたばこ製品です。これらの製品には、中毒性の高い化学物質であるニコチンが含まれています。熱は、ニコチンおよび他の化学物質を含むタバコから吸入されるエアロゾルまたは煙を生成します。 HTPには、香料化学物質など、タバコには見られない添加物も含まれている場合があります。HTPは通常、タバコを600°C(1100°F)未満の温度に加熱します。従来のタバコよりも低い温度です。
アイコス(IQOS)やグロー(glo)プルーム・テック(Ploom TECH),プルーム・エス(Ploom S)が製品としてあります。

2)電子たばこ(electronic cigarette, e-cigarette)
リキッド(液体)を、電熱線の発熱により蒸発・気化させ、エアロゾル状(霧状)にして利用者に吸引させる器具のこと。
たばこ事業法のたばこ製品や喫煙具類などに分類されず、雑貨類に分類されるので二十歳未満でも購入可能です。
用いられる液体はニコチンを含み、プロピレングリコール、グリセリン(グリセロール)、水、香料からなっており、ニコチンを追加することもできます。日本では,ニコチン入りの電子タバコは薬機法(旧薬事法)により販売が禁止されています。ただし,個人的に利用することを目的として海外から輸入することは違反にはなりません。一方,ニコチンを含まない電子タバコは消費者製品として扱われ,販売は規制されていません。そのため、電子タバコは未成年でも購入できる状況となっています。

3)日本における新型タバコ使用の実態
 2018年における男女合計における現在使用の割合は,グローで2.8%,プルーム・テックで2.1%,電子タバコで1.9%,いずれかの新型タバコ製品では9.7%であった。男性の14.5%がいずれかの新型タバコ製品を使用していた。新型タバコを使っていた人のうちの半分以上の人は紙巻タバコを併用していました。

4)新型タバコの健康影響は?

The American Journal of Medicine
Volume 132, Issue 8, August 2019, Pages 949-954.e2
過去および現在の可燃性喫煙者における電子タバコの使用と心血管疾患との関連

449,092人の参加者のうち、15,863(3.5%)の現在の電子タバコユーザー、12,908(2.9%)の電子タバコ+可燃性タバコのデュアルユーザー、および44,852(10.0%)の心血管疾患がありました。
電子タバコと可燃性タバコの二重使用者の間で、喫煙のみと比較して心血管疾患のオッズが有意に高いことを示唆しています。

American Journal of Preventive Medicine
電子タバコの使用と喫煙状態による慢性閉塞性肺疾患との関連:行動リスク要因監視システム2016および2017
Volume 58, Issue 3, March 2020, Pages 336-342

現在の電子タバコの使用は、電子タバコを使用したことがない人と比較して、慢性気管支炎、肺気腫、または慢性閉塞性肺疾患の確率が75%高いことに関連していました(OR = 1.75、95%CI = 1.25、2.45)、電子タバコの毎日のユーザーが最も高いオッズを持っています(OR = 2.64、95%CI = 1.43、4.89)。

PLOS ONE
電子タバコエアロゾルは、細胞の抗酸化防御を抑制し、重大な酸化的DNA損傷を誘発します
公開日:2017年5月18日
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0177780

ECエアロゾル抽出物への曝露は、細胞の抗酸化防御を抑制し、重大なDNA損傷を引き起こしました。これらの調査結果は、蒸気を吸う人と一般の人々のためにECエアロゾルへの曝露の潜在的な長期の癌リスクを調査する緊急の必要性を強調しています。


American Journal of Medicine Open
1〜6巻、2021、100002
臨床研究研究
米国の成人における電子タバコの使用と脆弱性骨折との関連

脆弱性骨折の有病率は、これまで電子タバコを使用したことがある個人の方が高かった。
以前および現在の電子タバコの使用者は、使用したことがない人と比較して、脆弱性骨折の有病率が高かった。
従来の唯一の喫煙者と従来の電子タバコの二重使用者の間で、脆弱性骨折の有病率が段階的に増加しました。
電子タバコの使用は、骨の健康に有害である可能性があります。

 

タバコ会社は紙巻きタバコと比較して有害成分が90%低減されていると強調して広告を展開し,病気になるリスクが90%減ると誤解させています。しかし,紙巻きタバコと同様に加熱式タバコから非常に多くの種類の有害物質が検出されています。

 

新型タバコにご注意を!
大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部
副部長 田淵 貴大

タバコ会社は紙巻きタバコと比較して有害成分が90%低減されていると強調して広告を展開し,病気になるリスクが90%減ると誤解させている。しかし,紙巻きタバコと同様に加熱式タバコから非常に多くの種類の有害物質が検出されている。

先行研究の知見を踏まえると,例え有害成分を減らせたとしても長期間タバコを使うことはリスクの増大につながり,病気になるリスクは減らないだろう。さらには,加熱式タバコ使用者では,紙巻きタバコの場合よりも使用頻度が増えることが報告さ
れており、この影響もリスクが大きくなる方へと働く。

加熱式タバコは,従来からの紙巻タバコと同様に有害物質・発がん物質が発生する明らかに有害なタバコ製品である。社会におけるルール・規制において,加熱式タバコは紙巻タバコと同等に扱うべきではないだろうか。私たちは,子どもたち,すべての人たちをタバコの害から守るために屋内全面禁煙を進めていかなければならない。全面禁煙で禁止されるタバコには新型タバコも含まれるべきである。

 

なぜか日本で多い加熱式たばこは、その健康に対する弊害という点において紙巻きたばこと全く同等に扱うべきであるというのが今現在の常識です。

 

米国食品医薬品局(FDA)は、2020年1月8日の時点で、米国でのIQOSおよびEclipse加熱式たばこ製品の販売を承認しています。その他の加熱式たばこ製品の売上は世界中で伸びています。
CDCは、2017年に米国の成人の加熱式たばこ製品の使用の追跡を開始しました。当時、現在通常の紙巻きタバコを吸っている人の2.7%を含む成人の0.7%が、加熱式たばこ製品を使用したことがあると報告しました。
報告されている加熱式たばこ製品の使用は2018年に増加し、現在通常の紙巻きタバコを吸っている人の6.7%を含む成人の2.4%が、加熱式たばこ製品を使用したことがあると報告しました。

CDC
https://www.cdc.gov/tobacco/basic_information/heated-tobacco-products/index.html#health-effects
加熱式たばこ製品

日本においては、2018年における男女合計における現在使用の割合は,グローで2.8%,プルーム・テックで2.1%,電子タバコで1.9%,いずれかの新型タバコ製品では9.7%であり、日本の新型たばこ使用率は米国より高率であり、そのほとんどがより健康被害の大きい加熱式たばこであることを考えると、日本のほうが米国より問題は深刻です。

なぜ世界において加熱式たばこが日本のみで多いのかはよくわかりませんが、国民の健康に直結する問題ですから、行政もそろそろ加熱式たばこを含む新型たばこの積極的規制に踏み込むべきであると強く思います。