ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

COVID-19ワクチンと他のワクチンの同時投与

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そろそろ年末に近づきインフルエンザのワクチンのシーズンになってきました。これに関して日本医師会よりプレスリリースがありました。

『 今シーズンの季節性インフルエンザワクチンの供給について
釜萢敏常任理事は9月1日の定例記者会見で、今シーズンの季節性インフルエンザワクチンの供給等について説明を行った。
同常任理事は、まず、同日に開催された「厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会」において公表された、2021/22シーズンにおけるインフルエンザワクチンの供給量に関する見通しについて説明。令和3年度の供給量が、多い場合で2,792万本、少ない場合で2,567万本と見込まれていることについて、「過去の実績から特段に落ちているわけではないものの、供給量及び使用量が非常に多かった昨年とは違うということはお伝えしなければならない」と述べた。』

また同時に、新型コロナウイルスワクチンとの接種間隔についても説明されました。

「 新型コロナウイルスワクチンと季節性インフルエンザワクチンの接種に関する現在の考え方も解説。
これから両ワクチンを接種する方の場合、現時点でわが国では新型コロナウイルスワクチン接種前後2週間は他のワクチンを接種しないこととされているため、定められた接種間隔に沿った対応を求めた。」

 

drhirochinn.work

話は少し変わりますが、上記の記事を書かせていただいた時点で、日本産婦人科感染症学会(JSIDOG)と日本産婦人科学会(JSOG)は、
「器官形成中(妊娠12週まで)はワクチン接種を避けるべきです。」と述べていました。

海外の最新のデータではこんなことは一言も言われていませんでしたが。

「令和3年6月 17 日 妊産婦のみなさまへ
―新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについてー」

という発表の中で「 妊娠初期を含めコロナワクチンはいつでも打てる 」という変更の声明をやっと出しました。(1)

この後にあの不幸な柏市の事件が起きました。(2)

妊産婦救急の問題もありますが、ワクチンを接種されていたらと思ってしまいます。

筆者が以前から記事中で繰り返し主張していたように新型コロナウイルス感染症において、妊婦が絶対的なリスク集団であることはとっくにわかっていたことであり、ワクチンに対する安全性もわかってきていました。学会や国はもっと早く妊婦へのワクチン接種を推奨すべきでした。

 

話をもとに戻します。

コロナワクチンとインフルエンザワクチンの投与間隔に関してはあまりデータがないので仕方がないのかもしれませんが、C D C は、以下のようにホームページに掲載しています。

『 COVID-19ワクチンと他のワクチンの同時投与
他のワクチンと同時に投与されたCOVID-19ワクチンのデータはありませんが、非COVID-19ワクチンの豊富な経験から、ワクチンを同時に投与した場合と単独で投与した場合の免疫原性と有害事象のプロファイルは一般に類似していることが示されています。COVID-19ワクチンは、他のワクチンの投与の前後に最低14日間の間隔を空けて、単独で投与することが以前は推奨されていました。これは、これらのワクチンが新しく、既知の安全性や免疫原性の懸念によるものではなかった時期には、十分な注意が払われていませんでした。しかし、現在FDAによって承認または承認されているCOVID-19ワクチンの安全性に関する実質的なデータが収集されています。
COVID-19ワクチンは、他のワクチンのタイミングに関係なく投与できるようになりました。これには、COVID-19ワクチンと他のワクチンの同時投与、および14日以内の同時投与が含まれます。COVID-19ワクチンの反応原性が、アジュバントワクチンや生ワクチンなど、より反応原性が高いことが知られている他のワクチンを含め、同時投与によって増加するかどうかは不明です。他のワクチンをCOVID-19ワクチンと同時投与するかどうかを決定する際、ワクチン提供者は、患者が推奨ワクチンに遅れをとっているのか、遅れるリスクがあるのか​​、ワクチンで予防可能な病気のリスクを考慮する必要があります(例:発生または職業被ばく)、およびワクチンの反応原性プロファイル。
1回の訪問で複数のワクチンを投与する場合は、各注射を異なる注射部位に投与します。 青年および成人の場合、三角筋は、筋肉のさまざまな部位に投与される複数の筋肉内注射に使用できます。

複数回の注射のベストプラクティスは次のとおりです。

多くの場合、同じ医師の診察中に複数のワクチンが必要であり、複数の注射が必要です。1回の訪問で複数のワクチンを投与する場合は、各注射を異なる注射部位に投与します。片方の手足に2回以上注射を受ける乳児や幼児の場合、筋肉量が多いため、太ももが好ましい部位です。年長の子供と大人の場合、三角筋は複数回の筋肉内注射に使用できます。複数回の注射のベストプラクティスは次のとおりです。

別々の注射器を使用して、各注射可能なワクチンを準備します。
ワクチンの名前と投与量(量)、ロット番号、調製者のイニシャル、および該当する場合は正確な使用期限を過ぎた時間を各シリンジにラベル付けします。
必要に応じて、混合ワクチン(DTaP-IPV-HepBまたはDTaP-IPV / Hibなど)を使用して注射回数を減らします。
「混合ワクチン」を作成するために、同じ注射器で複数のワクチンを混合しないでください。
可能であれば、注射部位を1インチ以上離してください。
最後に注射すると痛みを伴うことが知られているワクチン(MMR、HPVなど)を投与します。注射のたびに痛みが増す可能性があるため、ワクチンを注射する順序が重要になります。複数回の注射が必要なときに最も痛みを伴うワクチンを最後に注射すると、注射に伴う痛みを軽減できます。
可能であれば、異なる手足で局所反応を引き起こす可能性が高いワクチン(破傷風トキソイド含有およびPCV13など)を投与します。』(3)

などと掲載されています。

一回の受診で両方できるのであればそれに越したことはありません。

いつも思うのは、海外の発表は事実とその判断した理由も正確に述べています。日本のそれとはかなり違うように思います。

しかし我々医療者は、厚労省や学会の指導・推奨に従う必要があります。

皆さんには、海外の考え方もお話させて頂きます。何かの参考になれば幸いです。

 

参考文献

1)https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2021/06/210617.pdf
令和3年6月 17 日 妊産婦のみなさまへ
日本産科婦人科学会 木村正
日本産婦人科医会 木下勝之
日本産婦人科感染症学会 山田秀人
―新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについてー

 

2)https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4340029.htm
【深刻】赤ちゃん死亡・・・コロナ感染妊婦、受け入れ先みつからず自宅で出産

 

3)https://www.cdc.gov/vaccines/covid-19/clinical-considerations/covid-19-vaccines-us.html?CDC_AA_refVal=https%3A%2F%2Fwww.cdc.gov
米国で現在承認または認可されているCOVID-19ワクチンの使用に関する暫定的な臨床的考慮事項
COVID-19ワクチンと他のワクチンの同時投与

 

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