ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

通勤電車内感染

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オミクロン株の急激な増加に伴って、再び通勤電車内での感染の危険性について論じられています。筆者は過去に2つこれについての記事を書かせていただいています。

 

drhirochinn.work

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1)Clinical Infectious Diseases
列車の乗客における2019年のコロナウイルス感染のリスク:疫学およびモデリング研究
Clinical Infectious Diseases, Volume 72, Issue 4, 15 February 2021, Pages 604–610, https://doi.org/10.1093/cid/ciaa1057

この論文は、中国および中国の疾病管理予防センターによって実施され、2019年12月19日から2020年3月6日までの間にGトレインで中国本土を発病前または発症中の過去14日以内に旅行したと報告した合計2568件の感染の確認された症例を分析しています。

初発患者と同じ列の座席では、他の列の座席よりも感染のリスクがはるかに高くなります。
COVID-19が広がるのを防ぐために、推奨される距離は同じ列内で少なくとも2席離れており、移動時間は3時間に制限されています。

この研究は中国の高速鉄道であり、日本の通勤電車の車内の構造や混雑状況とは大部違うとは思いますが、日本の電車で座席に座っているとすると、この論文の中で感染率が高い同じ列となります。最大10%の感染率になります。

 

2) 国立国際医療研究センターの匹田 さやか氏(国際感染症センター)らの研究グループは、入院時に感染経路が不明であった事例を対象に調査を行い、その結果をGlobal Health & Medicine誌に発表しました。

この発表の中で、感染リスクの高い31人の行動歴のうち、回答数が多かった4場面の中の一つ公共交通・交通関連において、電車通勤は9人しかいませんでした。

 

3)リサーチ オープンアクセス 公開: 2018年12月4日
公共交通機関の利用と空中感染の関係の分析:ロンドン地下鉄の移動性と伝染

https://ehjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12940-018-0427-5

この論文では、ロンドン地下鉄ネットワークを研究することにより、公共交通機関の利用と感染症の伝播との関連を分析しました。
研究の結果は、公共交通機関の利用と感染症の伝染との間に相関関係があることを示しています。例えば地下鉄で駅のない地区は感染発生率が低かったとのことです。具体的には、ロンドン地下鉄の利用とインフルエンザ様疾患の蔓延との間に相関関係があることを示しました。

 

4)ニュース
スパコン富岳で電車/タクシー/航空機内などでのコロナ感染リスクを検証
~機内ではリクライニングでの咳がワーストケース 大河原 克行2020年11月27日 11:53
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1291628.html

「窓開け量に比例して、実換気量が増えている。窓閉めでは、1時間に10回換気されているが、229名乗車時には、1人あたりで換算すると新鮮空気量は少ない。窓を20cm開けると、機械式換気と同等の換気量が得られる」としています。
新たにドアの開閉による換気をシミュレーションしたところ、45秒の停車時間でのドアの開閉は、20分間隔で停車する近距離電車で、5cm窓を開けて走行しているのと同等の換気能力があることがわかりました。「山手線のように、頻繁に停車する電車であれば、ドアの開閉だけで、窓開けと同じ効果が得られる。これからは寒くなってくる時期でもある。電車がどれぐらいの頻度で止まるのかを考えて、窓開けをするべきである」としました。

 

5)混雑度は影響せず「約5分」で電車内は換気…通勤電車の“窓開け走行”をシミュレーションで検証
プライムオンライン編集部 暮らし 2020年11月2日 月曜 午後5:40

https://www.fnn.jp/articles/-/102454?display=full

公益財団法人鉄道総合技術研究所が10月28日、通勤電車が窓を開けて走行した場合、混雑の度合いにかかわらず「車両内の空気が5分前後に1回入れ替わる」とするシミュレーション結果を発表しました。
通勤電車が“6カ所の窓”を“10センチ程度開けた状態”で、“時速約70キロで走行”した場合を想定し、シミュレーションを行いました。
その結果、乗車率0%の場合、車両内の空気は5.3分(5分~6分)に1回入れ替わることが判明。また乗車率が上がると、人が増えた分だけ車内を占める空気の体積が減ることから、1回の換気に必要な時間は若干短くなったといいます。空調装置を使うと、空気が入れ替わる時間はさらに短縮されました。

 

以上より、実際の感染者をみた中国と英国の論文では、確かに電車内で感染が起こるという結果でした。

一方日本の通勤電車内の換気は、十分にされているし、日本の乗客はマスクをちゃんとして会話もしない。だから大丈夫とは必ずしも言えません。

特に空気感染に近い伝搬をするウイルスに対しては、スーパースプレッダーが一人でもいれば密集した乗り物での感染は避けられないと思います。外国で起こることが日本では起きないと言い切れるでしょうか。感染者が特定されないだけではないでしょうか。

パニックになる、あるいは誰も得をしないからデータを取らないのでしょうか。

通勤者に対して大規模な前向きコーホート試験をすぐに始めるべきです。

 

最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

 

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