新型コロナウイルス感染症が発生してきた当初より、肥満・糖尿病は重大な感染リスクであるといわれ続けてきました。筆者もいささか無縁ではありませんので、身につまされるところがあります。
『 大阪府が新型コロナウイルス感染「第５波」で確認された府内の重症者を調べたところ、肥満度の目安となる「体格指数（ＢＭＩ）」が３０以上だった割合が４０代以下で２割を超え、２０代以下は５割に上ることが８日明らかになった。』
と、吉村洋文知事が記者会見で発表しました。（１）
『 重症者に占めるＢＭＩ３０以上の患者の割合を年代別にみると、２０代以下が５０％▽３０代が２３・２％▽４０代が１９％▽５０代が９・６％▽６０代が４・０％－で、４０代以下は２２・７％に上る。』
とのことです。
【 一般国民のBMI30以上の人の割合 】
（２）
明らかに重症者に占める割合は、一般人口の割合より、かなり高くなっています。
イタリアでの2020年3月1日から4月20日までに入院した482人の連続したCOVID-19患者の後ろ向きコホート研究によりますと、482人の患者のうち、104（21.6％）は、BMI≥30キロ/ mでした。ロジスティック回帰分析では、BMIが30〜34.9 kg / m 2の場合、呼吸不全（OR：2.32; 95％CI：1.31–4.09、P = 0.004）およびICUへの入室（OR：4.96; 95）のリスクが大幅に増加しました。BMIが35kg / m 2以上の患者では、有意に高い死亡リスクが観察されました（OR：12.1; 95％CI：3.25–45.1、P <0.001）。（３）
肥満は、呼吸不全、ICUへの入院、およびCOVID-19患者の死亡の強力で独立した危険因子です。BMI≥30kg/ m 2は、重度の病気のリスクが高い患者の集団を識別しますが、BMI≥35kg/ m 2は、死亡のリスクを劇的に増加させるとのことです。（３）
糖尿病および/または肥満に冒された個人は、一般に、慢性の軽度の炎症の状態を特徴とする先天性および適応免疫応答の障害を有し、これは、高レベルのレプチン（炎症誘発性）を特徴とする突然の全身性代謝変化につながる可能性があるアディポカイン、および下部アディポネクチン（抗炎症性アディポカイン）を産生します。通常、肥満の人は、腫瘍壊死因子α（TNF-α）、単球走化性タンパク質-1（MCP-1）、インターロイキン-6（IL-6）などのいくつかの炎症性サイトカインの産生の増強によって現れる自然免疫に欠陥があります。抗原にさらされると、肥満に関連する慢性炎症はマクロファージの活性化を低下させ、炎症性サイトカインの産生を抑制します。さらに、B細胞およびT細胞の応答は、肥満患者では弱くなり、糖尿病の肥満患者ではさらに弱くなります。
（４）
一言でいうと、肥満や糖尿病は主に自然免疫系を低下させたりサイトカインストームを起こしやすくさせ、新型コロナウイルス感染症に際して感染・重症化を促進するということが言えると思います。
筆者のように肥満気味の方は、十分注意してください。
参考文献
１）https://news.yahoo.co.jp/articles/9621f517605a80f3417a04e6a229c464916a3f05
重症の４０代以下、２割超がＢＭＩ３０以上の肥満 大阪府
9/8(水) 19:46配信 産経新聞
２）https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003224180
統計で見る日本
e-Statは、日本の統計が閲覧できる政府統計ポータルサイトです
３）https://eje.bioscientifica.com/view/journals/eje/183/4/EJE-20-0541.xml
入院中のCOVID-19患者の呼吸不全、集中治療室への入院、死亡の危険因子としての肥満はどれほど重要ですか？単一のイタリアンセンターからの結果
2020European Society of Endocrinology
４）https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2020.576818/full#B12
COVID-19と診断された患者における糖尿病の影響
ミニレビュー記事
フロント。Immunol。、2020年12月1日| https://doi.org/10.3389/fimmu.2020.576818
