ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

ミュー変異株

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先日の報道によりますと、「 WHOが8月30日、感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される「注目すべき変異株(VOI)」に位置付けたことを発表した「ミュー株」について、厚生労働省は9月1日、これまでの検疫結果を改めて集計したところ、今年6月および7月に空港検疫で新型コロナウイルスの検査で陽性が確認された2例がミュー株と確認されたことを発表した。」とのことです。

ミュー変異株について少し調べてみました。

WHOによりますとミュー株は、2021年1月に南米のコロンビアで初めて確認されて以降、南米やヨーロッパで感染が確認されていて、特にコロンビアとエクアドルで増加傾向にあるということです。

新型コロナウイルスの遺伝子配列を登録するウェブサイト「GISAID」によりますと9月2日の時点で42の国や地域で報告されています。
また、変異ウイルスの情報を集約している研究機関のウェブサイトによりますとミュー株は、ウイルスの「スパイクたんぱく質」の遺伝子に「N501Y」という変異や抗体の攻撃から逃れる「E484K」という変異などが含まれていて、この2つの変異は南アフリカで確認され、WHOが「VOC=懸念される変異株」に位置づけている「ベータ株」にもみられるということです。

 

南米コロンビアの保健当局者によりますと、「コロンビアで今年4~6月に1日当たり約700人の死者を出した感染第3波の期間中、死者のうち3分の2近くが検査でミュー株の陽性反応が出た。」と伝えています。(1)

コロンビア国立保健所(INS)によりますと、「 現在のコロンビア国内感染者の53%はミュー株による。その他は23%がガンマ株、5.7%はアルファ株となっている。イオタ株、ラムダ株、デルタ株も確認されているが、全体に占める割合は小さい。コロンビアでは、直近の1日当たりの新規感染者数は2,000人程度に抑えられており、死者数も100人以下と、6月下旬に感染第3波のピークを迎えて以降、大幅に減少している。」とのことです。(2)

 

米国の公衆衛生機関はこの変異株について緊迫した危険性はないと位置づけています。
米国のファウチ大統領首席医療顧問(米国立アレルギー感染症研究所長)も2日、ミュー株によるワクチンなどの効力の弱体化について十分な臨床データがなく、手元にあるデータは大半が試験管内によるものと説明しています。
その上で、その影響を軽視しているわけではなく重大に受けとめていると指摘。ただ、この種の変異株に対するワクチンの有効性は依然強く、ミュー株を現段階で差し迫った脅威を突きつけるものとは判断していないとしています。(3)

 

今年1月にコロンビアで発見されていますが、感染の拡大状況を見ますと感染力はそれほど強くないのではないかと思います。V O I ですから、いずれにしろ注視していく必要はあると思います。

早く研究論文が出てくるとありがたいのですが。

 

参考資料

1)https://medical-tribune.co.jp/news/2021/0903538319/

「ミュー株」、コロンビアで主流に 死者の3分の2占める〔時事メディカル〕

2021年09月03日 14:41

2)https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/09/d6497afdf9ec625b.html

新型コロナ「ミュー型」変異株が5割超占めるも、感染者数は大幅減少(コロンビア)

2021年09月02日

3)https://www.cnn.co.jp/world/35176206.html

WHO、注目すべき変異株に「ミュー型」を新たに指定 2021.09.04  CNN

 

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