ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

学校再開2

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感染拡大を背景に学校再開への対応も様々のようです。

過去の記事で学校再開時の考え方に関して Nature の記事をご紹介しました。

 

drhirochinn.work

 

「 緊急事態宣言が出される中、都内では1日から23区の多くで小中学校が再開されました。
対面とオンラインを組み合わせた授業をする区や、夏休みを延長する区、短縮授業を行う区など、区によって対応が大きく分かれる、異例の学校再開となっています。」(1)

こういう状況にあって、国立感染症研究所より「新学期に向けてCOVID-19感染対策の提言」が発表されました。(2)

お子さんを持っておられる、皆さんの何かのお役に立てばと思いご紹介いたします。

提言では、教職員の感染予防法の習熟やICTの活用の推進、ワクチン接種、体調確認アプリの活用など具体的な取り組みが示されています。

はじめに代表的な所見として下記の8つを示しています。

1)10代以下の感染者数が増加傾向にある。保育所・幼稚園において、これまで保育士・教員における感染の検出が主であったが、園児の感染例が増加している。
2)特に小学生を中心とする授業の場で、教職員を発端とした、比較的規模の大きなクラスターが複数発生した。
3)小学校において、児童を端緒とした、同じクラス内等の規模の小さな感染伝播は多く見受けられたが、児童間の感染伝播が規模の大きなクラスターに至ったケースは確認出来なかった。
4)障害児通所支援事業所での感染が各地で散発しており、長期化する場合がある。
5)学習塾における比較的規模の大きなクラスターが散見される。
6)中学生以上では、部活動等・寮生活において、適切なマスク着用や身体的距離の確保等の感染予防策の不十分な生徒・学生間の長時間に渡る交流が、感染伝播に寄与していた。特に部活動等において、最近は大会や遠征時のクラスターが複数発生した。
7)感染しても無症状・軽症が多く行動範囲も広い大学生は市中で感染が拡大する要因の一部を占める。
8)特にデルタ株流行後、小児から家庭内に広がるケースが増えている。

 

次に共通する対策に関する提案として、具体的な事項が示されています。

 

1)初等中等段階ではやむを得ず学校に登校できない児童生徒等に対する学びの保障を確保することを主目的として、加えて高等学校・大学ではオンライン(オンデマンド)の促進により、理解をより高める側面を含めて、ICT等を活用した授業の取組を進める。

2)教職員(塾を含む)それぞれがCOVID-19の感染経路に基づいた適切な予防法、消毒法について習熟し、園児・児童・生徒・学生、保護者、自施設に出入りする関係者に対して正しく指導出来るようにする。

3)上記を目的とした、地域の感染管理専門家(感染管理認定看護師等)からの指導/協力を仰ぐ体制を構築する。

4)教職員、園児・児童・生徒・学生は、全員が出勤・登園・登校前の体調の確認、体調不良時のすみやかな欠席連絡および自宅待機時の行動管理をより徹底する。中学生以下の有症時には受診を原則とする。

5)各施設の健康管理責任者は、当該施設の教職員、園児・児童・生徒・学生がCOVID-19の検査対象になった場合の情報を迅速に把握する。対象者の検査結果判明まで、範囲を大きく、例えばクラス全体として、園児・児童・生徒・学生・教職員等に対して感染予防に関する注意喚起を厳重に行う。

6)対象者が陽性となった場合の施設のスクリーニング検査の実施と施設内の対策は保健所からの指示に従う。流行状況等によって、保健所による迅速な指示が困難な場合には、クラス全体等幅広な自宅待機と健康観察、有症状時の医療機関への相談を基本に対応する。体調確認アプリ(例:N-CHAT)や抗原定性検査の活用は、施設における発生時の自主的な対応として有用である。

7)教室、通学バス(移動時全般)、職員室等における良好な換気の徹底に努める。施設内では、効率的な換気を行うためのCO2センサーの活用も推奨される。

8)塾では児童・生徒・学生・講師等の体調管理を徹底した上で、密にならない工夫とともに換気の徹底(特に入れ替わり時。場合によってCO2センサーの活用)、リモート授業の活用も検討することが推奨される。

9)人の密集が過度になるリスクが高いイベント(文化祭、学園祭、体育祭等)においては延期や中止を検討し、感染リスクの低い、あるいはリスクを低減できると考えられたイベントについては事前の対策を十分に行う。

10)教職員は、健康上等の明確な理由がなければ、新型コロナワクチン接種を積極的に受ける。

11)部活動については日々の体調の把握や行動管理への注意を基本とした活動を行う一方で、やむを得ず県境をまたいだ遠征が必要な場合には、2週間前から引率者、児童・生徒における上記注意事項の遵守を強化し、出発前3日以内(出来るだけ出発当日)を目途に、抗原定量検査あるいはPCR検査を受ける。

12)大会遠征時には教職員を含む引率者や児童・生徒ともに、競技外での他校との交流は部活動の範囲に留める。

13)これまで以上に保健所との連携(報告や相談)を強化する。保健所が多忙を極める場合、特に発生時の対応については、当センターは保健所と連携を取りながら施設へ助言を行うことも可能である。

 

この中の、6)、11)で言及していますが、学生や教職員に対して、広く定期的に抗原検査やPCR検査を実施して、感染者を迅速に見つけ出し隔離することが、非常に重要であると筆者は考えます。

先の Nature の記事でも、学校での感染に関する文献の大部分は、子供たちがウイルスの蔓延を促進していないことを示唆しています。つまりできるだけ感染者の早期発見に心がけていれば、以前と同様な学校生活が送ることができると考えられます。

 

 

参考文献

1)https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20210901d.html

学校再開 東京23区の対応は?夏休み延長やオンラインなど詳細 2021年9月1日

2)https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/10601-covid19-19.html
乳幼児から大学生までの福祉施設・教育機関(学習塾等を含む)関係者の皆様への提案

 

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