筆者は、以前より非常にスポーツ観戦(テレビで視聴したり結果をネットニュースでチェックしたり)が好きで、とりわけ M L B とサッカーが大好きです。
M L B は言わずと知れた大谷翔平選手の大ファンです。しかし今週これらのスポーツにかかわる大変嫌な記事2つに遭遇しました。
一つは、M L B エンジェルス本拠地のレッドソックス戦での出来事です。
「 レッドソックスの救援右腕アダム・オッタビノ(35)が、1点リードの9回2死一、二塁のピンチでエンゼルス大谷翔平投手(26)を二ゴロに抑え、激しくガッツポーズをしながら感情を爆発させた。
この時オッタビノはこの時、大谷に向かって「Happy Birthday, bitch(誕生日おめでとう、ビッチ)」と、ビッチ(クソ野郎)の不適切ワードを交えて声を上げたという。」
あるニュースサイトでは「一線を越えた」と表現しているものもありました。黄色アジア人種である大谷の活躍を快く思わない白人も相当数いるものと筆者はかねてから心配していました。
アメリカにおいて、おりしもアジア系住民に対するヘイトスピーチや暴力が多発している時節にあって、筆者は人種差別( Racism ) の可能性を危惧せざるを得ません。
もう一つは、サッカー界において2年前スペイン一部リーグFCバルセロナの超有名な2選手、グリーズマンとデンベレ選手が引き起こしたまさに人種差別問題です。
この記事の中で、
『2019年夏にバルセロナのプレシーズンツアーで2人が来日した際に宿舎ホテルでゲームをする際に、不具合の解消を頼んだ日本人スタッフに対して容姿や言語を侮辱する発言を吐いている動画を報じた。
日本人のスタッフ3名が機器セッティングを行なっている様子を見守っていたデンベレがカメラを回し、グリエーズマンをズーム。「この醜い顔たちは、PESをプレイするためだけに、恥ずかしくないのだろうか」とコメントし、これを聞いた本人と同席していたスタッフは笑っているように見えるとしている。
さらに、デンベレは続けて日本人スタッフ2名をそれぞれズームし、彼らの会話を聴いて笑いながら、「どんな後進国の言語なんだ」「君たちは技術的に進んでいるのか、いないのか。国としては発展しているはずだよな?」と笑いながらつぶやいているとしている。』
完全に人種差別用語であり、弁解の余地は全くありません。2人は謝罪コメントを出したようですが、その内容は全く謝罪にも何にもなっていません。よほど頭が悪いのでしょう。
このFC バルセロナの主なスポンサー企業である楽天がすぐに反応しました。楽天の三木谷会長は、公開でクラブに質問状を送付しました。自らのサッカーチーム ヴィッセル神戸などの運営を通してスポーツ事業に深くかかわっており、気持ちとしては穏便に済ませたいでしょうが、日本人が直接人種差別を受けた事案に対して消極的な態度をとると、企業イメージの悪化につながり、行動を起こしたものと思われます。
しかし、倫理・道徳上の正義から日本人として毅然とした態度を是非ともとっていただきたいと思います。それとともに日本人によくある、穏便に収めようとするあいまいな言動は、この人種差別に際して間違ったメッセージを欧米人やアジア人に発することになります。徹底的に2人の選手の責任とFCバルセロナの管理責任を追及すべきであると考えます。
欧州のサッカー界では度々、主に黒人に対しての人種差別問題が起きています。
https://www.teikokushoin.co.jp/journals/geography/pdf/200904/3.pdf
『その多くは、相手チームのサポーターから標的にされるケースである。スペインで、そしてフランスで、憎き相手チームのエースに対して、サポーターが人種をあざけるためにサルの鳴きまねをしたり、バナナを投げ込むなどの行為が横行したのである。町なかで黒人に向けて同じことをしたら叩きのめされてしまうかもしれない。しかしサッカー場で、サポーターと選手という関係なら、報復されることもない。卑劣極まりない行為だ。この行為を撲滅しようと、1999年にはヨーロッパにFARE(Football Against Racism in Europe)という組織がつくられ、2001年からは国際サッカー連盟(FIFA)と、そして2002年からはヨーロッパサッカー連盟(UEFA)と協力してサッカーの場での人種差別をなくすための運動を展開している。2006年にドイツで開催されたワールドカップのひとつのテーマは、まさに人種差別との戦いだった。「Sayno to racism」と書かれた大きなバナーが試合ごとに掲げられた。』
「 Jリーグでも重大な人種差別事件が発生しました。それが2014年に起こった浦和レッズ差別横断幕事件です。この事件では、浦和レッズのサポーターがサガン鳥栖との試合において、人種差別であると窺える横断幕を掲げていました。
応援席に向かう入場ゲート付近にはJapaneze Onlyとした横断幕や日章旗と旭日旗を掲げて、浦和レッズの運営本部もそれを試合終了まで放置したことにより問題になりました。」
この事件は、筆者も覚えています。
昨年問題になった「BLM運動」は記憶に新しいところですが、実はこれは2013年の同じような事件に端を発した運動です。2020年にBLM運動は全米的なデモ・暴動へと発展しました。
また、イギリスだけでなくアメリカでも、東アジア系住民に対するヘイトクライムが多発しています。
これはアメリカの建国以来の歴史が深くかかわっているものと思います。
アメリカ先住民(インディアン)に対する差別
アメリカでの最初の人種差別は、1700年代ごろからの北東部におけるアメリカ先住民(インディアン)に対するものです。
メキシコ系住民に対する差別
アメリカ合衆国の成立前後にはまだ国境線が確定しておらず、各国植民地などの周辺諸国との紛争が絶えませんでした。
アフリカ系住民に対する差別
イギリスは1800年代頃からアフリカ大陸で居住する黒人たちを財力や暴力などによって捕らえ、奴隷としてアメリカに販売し大きな利益を上げました。また、黒人奴隷たちは商人たちによって売買されたりもしました。
アジア系住民に対する差別
南北戦争の前後頃から大陸横断鉄道の建設が始まり、清国から移住してきた中国人などアジア系住民が労働力として多用されました。アジア系住民はその風体や衣服あるいは生活習慣、宗教などが欧米系住民と違うことから偏見を生み、差別の対象となり、中国人排斥や排日運動が起こりました。
2020年のCOVID-19の大流行により、アジア系住民に対するヘイトクライムが急増し、2019年の2.5倍となりました。
アラブ系住民に対する差別
特に9.11同時多発テロ事件以降ではアラブ系住民=テロリストと差別的に見られることが多くなっており、公共の場所での執拗なセキュリティチェックが行われることもあります。またアメリカ人はアラブ系やイスラム関連施設に対し憎悪の矛先を向けており、アラブ系が嫌がらせを受けると言う事件が起きました。
やはり多民族国家は、人種差別に関する事件が多発するようです。
遥か昔より単一民族で成り立ってきた日本において、一時期アイヌなどの問題がありましたが、人種間の問題は、身近な問題ではありませんでした。グローバル化に伴って拡大してきた人種差別の頻度や深刻さに対しては、受け止め方や対処法に関して我々は、慣れているとは言えません。しかし大切なことは、今世界で起きている人種差別の問題に関して情報をできるだけ得て、自分なりの認識と解決に向けての意見をちゃんと持つこと。一部の白人から受けた差別的な行為に対しては沈黙せずにちゃんと言葉で自らの権利を主張することが重要なのだと筆者は強く思います。
欧米人に対しては、主張することでお互い分かり合える可能性があると思うからです。反論しなければ許容した、同意したとみなされます。
加害者・被害者で言えば、間違いなく大谷選手は被害者です。しかし彼はこの一件の翌日のゲームでは、リーグ一位の猛打のレッドソックス攻撃陣に対して、被安打5、2失点に抑え、7回を投げ終え見事に勝利投手となりました。加えて途中豪速球でバットをへし折った、昨日のピッチャーの同僚であるアローヨ選手に、折れたバットをわざわざ運んで手渡ししてあげ、肩をポンと叩いて健闘を称えたそうです。
もしかしたら声高に相手を非難するより、相手が反省しやすい環境を作ってあげるほうが余程大切なのかもしれません。
ますます”オオタニサン”が好きになりました。
最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。