ある整形外科医のつぶやき

外来の診察室で思うこと

野菜摂取と障害調整生存年

 

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 研究論文
オープンアクセス
公開: 2021年4月21日
日本における2017年から2040年の野菜摂取量の変化による主要な疾患の障害調整生存年の予測
田中詩織、米岡大輔、石塚彩、ピーター・ウエダ、中村圭司、宇根山久幸、林直樹、キンジ渋谷&野村周平
BMCパブリックヘルス

「 バックグラウンド
植物の摂取量が少ないことは、心血管疾患(CVD)、癌、糖尿病および腎臓病(DKD)など、さまざまな健康問題に関連することが知られている主要な食事の危険因子の1つです。
日本では、政府が10年間の国民健康増進計画「21世紀の国民健康増進運動第2期」(健康日本)において、2023年までに一人当たり平均350gの野菜の消費目標を設定しています。
しかし、日本人の成人の一人当たりの平均野菜の消費量は着実に(2006年の例外を除いて)、1947年以来、300グラム/日を下回っています。また、近年の野菜消費量の減少傾向が見られます、したがって、消費目標が達成される可能性は低いです。
3つの病気について2017年から2040年までの障害調整生命年(DALY)に対する野菜摂取量の変化の影響を予測することを目的としました。

結論
野菜の消費量が増えると、日本のCVD、ガン、DKDの負担が大幅に軽減されます。

 

厚生労働省などが推進している国民健康づくり運動「健康日本21」では、成人の1日の野菜摂取量を350g以上とする目標が掲げられていますが、この目標が達成できた場合、日本人の疾病負担を大きく減らせるという予測分析の結果が報告されました。

野菜の摂取量が少ないことは、さまざまな疾患のリスク因子の一つとして知られています。しかし日本人の野菜摂取量は年々減少していることが報告されています。
このような状況を背景として論文著者の田中氏らは、予測される日本人の野菜摂取量の変化と、その変化が心血管疾患、がん、糖尿病性腎臓病に伴う障害調整生命年(disability-adjusted life years;DALYs)にどのように影響するかを試算しました。DALYsは、疾病による障害や早期死亡のために失われた健康的な生活の損失の程度を表す指標で、数値が小さいほど疾病負担が少ないことを意味します。

 

障害調整生命年(disability-adjusted life years;DALYs)をもう少し詳しく調べてみました。

 

障害調整生命年(しょうがいちょうせいせいめいねん、英: disability-adjusted life year、DALY)とは、病的状態、障害、早死により失われた年数を意味した疾病負荷を総合的に示すものです。元来はハーバード大学により世界銀行のために1990年に開発されたものですが、後に世界保健機関(WHO)がその手法を2000年に採用しました。早死によって失われた潜在的な年数の概念を拡張して、損なわれた健康や障害のために失われた健康的な生活の年数も含めたものであるDALYは、「早死により失われた期間」と「疾病により障害を余儀なくされた期間」の、双方の期間を慢性疾患による影響として最も妥当な指標であるとみなしています。1DALYは、それゆえ、1年間の健康生活が失われたことと同等です。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%AA%BF%E6%95%B4%E7%94%9F%E5%91%BD%E5%B9%B4

 

DALY=YLL+YLD

●DALY=障害調整生存年数

●YLL=早死にすることによって失われた年数

●YLD=障害を有することによって失われた年数

「早死にすることによって失われた年数(YLL)」というのは、基本的には「死亡数(N)」と「平均余命(L)」、すなわち平均寿命に達するまでの年数の積として求められます。

 

YLL=N×L

●YLL=早死にすることによって失われた年数

●N=死亡数

●L=平均余命

「障害を有することによって失われた年数(YLD)」というのは、障害の程度や期間がどのくらい生命の損失に当たるかを定量化したものです。

 

YLD=I×DW×L

●I=障害の発生数

●DW=障害の程度によるウエイト付け

●L=状態が安定するか死亡するまでの年数

この場合の「障害の程度によるウエイト付け(DW:Disability Weight)」という要素は、病気の程度によって0(良好な健康状態)から1(死亡)まで尺度化されているものです。たとえば、1DALYというのは、健康な状態で過ごす人生を1年失った、ということを意味しています。この「障害を有することによって失われた年数(YLD)」は、「障害の程度によるウエイト付け(DW)」の影響を受けるため、病気の種類や障害の程度によってそれぞれ変わってきます。

https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n327/n327013.html

 

正直言って筆者は、DALY という概念をよく知りませんでした。今回の論文をきっかけに勉強しました。しかしこのDALY にも疫学的観点や倫理的観点から多少問題があるようで現在改良が加えられているようです。

 

論文では、4つのシナリオに分けて日本の将来の野菜摂取量とDALY の変化を予測しています。

論文の著者らは、「野菜摂取量が少ないことに起因する疾病負担を推定することにより、公衆衛生上の課題に対する的を絞った介入の設計に有用な情報を得ることが可能になる」と、研究の意義を述べています。

 

皆さん、現在日本では、確実に一人当たりの野菜消費量が減少しています。

放置すると心血管疾患(CVD)、癌、糖尿病および腎臓病(DKD)などの疾病の増加により健康寿命がどんどん短くなっていきます。障害を抱えて生きていくことも立派であると思いますが、できるだけ健康で長生きできるよう野菜をたくさん摂取しましょう。

 

 

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